階段




江流0歳
「それじゃ行って来ますね江流。夕方迄には帰りますよ」
「ふ・・・ふえーん」
「あああっ!?泣かないで下さいっつ!あなたに泣かれると悲しくて出て行けなくなりますっ」
「あーんああーん」
「ああっ江流!本当は私も行きたくないんですよっ!」
ざっ!
「あっ光明様どちらへっ!?」
その日金山寺では泣きながら走り去る光明三蔵法師の姿が目撃されたと言う・・・。


江流1歳
「ほらほら。江流はもう歩けるようになったんですよ」
「きゃいー」
ぽてぽてぽて・・・
「これはアレですね、歩くと鳴る靴。アレを早速取り寄せなくては」
「お止め下さい光明様っ!!(慌)」
必死に止める僧達の声をBGMに光明三蔵は通販カタログをめくり始める。
「う〜ん・・・どっちが似合いますかねえ〜」
ぽてぽてぽて・・・


江流2歳
「お昼寝の時間ですよ?」
「やだー」
「じゃあ一緒にお昼寝しましょうか」
「・・・・・・」(←聞こえないフリ)
「ほーら江流もお布団に入らないと先に寝ちゃいますよー?」
「・・・・・・」
「すーすー」(←寝たフリ)
「・・・・・・」
「すーすー」(←寝たフリ)
「・・・・・・」
ぽてぽて。ぱふっ。
「すー・・・」
「すやすや・・・」


江流3歳
「江流の髪は綺麗な色ですね。お日様みたいですね」
「でもね、おっしょさまのほうがもっときれい」
「有り難うございます。でも江流の方がもっと綺麗ですよ」
「おっしょさまのほうがもっともっときれい」
「そんな事ないですよ。江流の方がもっともっとずうーっと綺麗ですよ」


江流4歳
「おや。これは誰を描いたんですか?」
「・・・おししょうさま」
「有り難うございます江流。なんて良い子なんでしょう。江流は本当に可愛いですね」
ぎゅむ。
「くすぐったいです」
ぎゅむぎゅむ。
「大好きですよ江流」


江流5歳
「いっぱいいますね」
「そーっと近付いて下さいね」
ばちゃっ
「あー・・・すばしっこいですねえ・・・」
「あっあそこにもいます!」
「あっ、逃げちゃいましたね・・・じゃあ今度はここでじっとして近付いて来るのを待ちましょう」
オタマジャクシを捕まえに行ったある日。


江流6歳
「・・・けほ。こほこほこほ」
「ここはもう良いですからあなたは先に休んで下さい」
「大丈夫です・・・こほこほっ」
・・・ぱたんっ
「何だか眠くなっちゃったので今日はもう休みますね。おやすみなさい江流」
「・・・お休みなさいませお師匠様」


江流7歳
「江流いらっしゃい。うさぎやのどら焼きを頂いたので一緒に食べましょう」
「ではお茶を煎れてきます」
「有難うございます。さ、いただきましょうか」
「いただきます」
「美味しいですねえ」
「はい」
「どら焼き屋さんは偉いですねえ。毎日こんなに美味しいものを皆の為に焼いてくれるんですから」
(・・・どら焼き屋・・・?)←江流心の声


江流8歳
「江流?」
「あ・・・」
「驚かせてしまいましたね。一体何を・・・?」
「・・・」
「おやこれは・・・面白いですか?」
「・・・・・・」
「先日渡した金剛経は読み終わったんですね?」
こくり。
「江流は書を読むのが好きですか?」
「・・・はい」
「じゃあこれは読み終わるまで江流に貸しておきましょう。分からない処があったら聞いて下さいね」
「有難うございます」
その日金山寺では江流が如何に賢いか蕩々と語り明かす光明三蔵法師の姿が見られた。


江流9歳
「江流いらっしゃい。若葉の鯛焼きを買って来ましたよ。一緒に食べましょう」
「ではお茶を煎れて参ります」
「有難うございます。さ、いただきましょうか」
「いただきます」
「美味しいですねえ」
「はい」
「・・・江流。私は時々思うんですよ。 お団子を売っている店はお団子屋さんで鯛焼きを売っている店は鯛焼き屋さんなのに、 どうしてどら焼きを売っている店はどら焼き屋さんと言わないんでしょうねえ・・・」
「それはどら焼き以外の和菓子も売っているからだと思います」


江流10歳
「・・・江流もあと何年かすれば反抗期というものが来るんですよねえ・・・」
ふう。
「何ですかお師匠様」
「私の事も『うるせーこのハゲ』とか怒鳴りつけて」
「俺はそんな事言いません」
「『良いトシして若造りしやがってクソジジイが』とか言って・・・ああっ江流何て酷い事を言うんです!!」
「俺は何も言ってません」


江流11歳
「今日のおやつは柿ですね。庭の柿ですか?」
「はい。朱泱に手伝って貰って取りました」
「それは朱泱にもお礼を言わなくてはいけませんね。木に登ったんですか?」
「梯子です。朱泱が支えてくれて」
「江流が登る方でしたか。怪我はしませんでしたか?」
「はい」
「お疲れさまでした。それでは有り難くいただきますね」


江流12歳
「暫く見ないうちに男前になりましたね」
「・・・お帰りなさいませ」
「痛くありませんか?」
「怒らないんですか」
「怒りませんよ。あなたが喧嘩なんて余程の事があったに違いありませんからね。で、どうでした?」
「・・・次は負けません」
「おや?負けちゃったんですか?」
「引き分けです」
「?」
「勝負が付かないうちに止められました」
「じゃあ次は勝たないといけませんね。とっておきの技を教えましょうか」
「はいっ」


江流13歳
「最近あまり書庫に脚を運んでいないようですがもしかして書庫にある本は読み尽くしちゃいましたか?」
「・・・・・・大体は」
「うーん困りましたねえ。余所のお寺に行って蔵書を見せて貰いましょうか」
「俺はただの小坊主ですからそこまでして頂く訳にはいきません」
「江流は真面目ですねえ」
「そんなんじゃありません」
「そうですか。・・・そうそう、天竺にはここには伝わっていない貴重な仏典が沢山あるそうですよ。 この地の経典を統て読み終えてしまったら律蔵を求めて旅に出るのも良いかも知れませんね」






これが何で階段なのか書いた本人にも良く分からない・・・。 成長=階段を昇る、って事なんだと思います。



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