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「悟空、行きまあーすっ」
そう言って悟空がジープの座席から飛び出して行った。座席の縁に一度両脚を載せ揃えてから飛び跳ねるように勢い良く。
「あーあ、お猿ちゃん張り切っちゃって」
そう言って一人になった後部座席で立ち上がった悟浄だったが。
「悟浄、行きまああす!」
先程の悟空同様訳の分からない言葉を発してから敵中に飛び込んで行った。
下僕二人の意味不明な行動に戦列に加わるタイミングの遅れた三蔵は既に敵と刃を交えている悟空と悟浄の背中を目で追った。 まさか八戒までもが、そう思ってちらと八戒の様子を見れば八戒は何も言わずに座席から降りたので安心したが、 下僕共の間でワケの判らない遊びでも流行っているのかと、その時三蔵は訝しみながらそう思った。






その街に着いた時、イヤに坊主が多いなと三蔵も思ったのだ。
過去の経験からそう言った街では法衣姿の侭歩き回ったりするとロクな事が無い、 そう判っていたのだが人混みの中ジープを進める事が出来なくなり車から降りて白竜を元の姿に変化させたのは本日の宿を決める前だった。 当然ジープから降り立った時の三蔵は着替えを済ませておらず法衣姿の侭で。
「なあ三蔵っアレ買ってくれよ!」
「却下」
ジープから降りるなり肉饅頭の屋台を発見しねだる悟空に速攻で答える。
「三蔵様はペットに厳しいねえ」
「ペットじゃねーよっ!」
「そうだったな、お前はサルだったよな」
「っんだとこのエロ河童」
「やるかこのクソチビ猿」
「あはは、止めなくて良いんですか三蔵」
・・・だから。何でお前ら一々人の名前を口にするんだ。
名前を連呼された所為か悟空と悟浄の低レベルな喧嘩の所為か片手で額を押さえていた三蔵の周りで声が上がる。
「三蔵?」
「三蔵法師様か?」
「あの出で立ち、間違いなかろう」
「そう言えば金色の髪の三蔵法師様が従者を連れて旅をなさっていると」
ぼそぼそと辺りで交わされる会話が耳に入って来るのに三蔵が顔を上げる。
「おお、あの額の御印は・・・」
前髪で半ば隠すようにしている常人には存在し得ない赤い印を目聡く発見した辺りを囲む僧侶達からどよめきが起こる。 その声に釣られるように、人だかりに何事かと覗き込む人々を少し離れた処から眺めていた者達も人垣の中心を何とか一目見てみようと人の輪に集い始める。 ジープから降り立ちものの5分も経たないうちに三蔵一行は十重二重の人々に囲まれていた。
「なー。三蔵サマ俺ら注目されてねえ?」
「・・・その名を呼ぶんじゃねえ」
場の雰囲気を読めこのクソ河童。
「でもあんた服装でバレバレでしょ?」
「てめえらが喧しく騒ぐからだろうが」
からかうように言って来る悟浄に舌打ちして三蔵は横を向いた。 既に自分の身分がバレているにしてもあまり周囲の坊主どもを刺激したく無いのだ。 下手に注目を浴びると後々面倒な事になるに決まっている。
「宿を探しましょうか」
「ああ」
遠巻きに眺めている坊主どもが良い加減鬱陶しい。小さくさざめきのように聞こえて来る声を無視し人垣を物ともせずざ、 と歩き出した時三蔵達を囲んでいた僧の一人が一行に向かい足を踏み出した。
「お待ち下さいませ」
「・・・・・・」
呼び掛けに三蔵は返答しない。無言で声を発した者をじろりと見返す。
うるせえ。うぜえ。放っとけ。
内心で発されている罵りは然し他の者と同じような墨染めの衣を纏ったその僧に届く事は無く。
「何という眼光だ。流石三蔵法師」
一層の畏敬の言葉がどよどよと沸き起こっただけだった。
(物は言いようとは、良く言ったもんだ)
旅の同行者達の内心の呟きも自分達を囲む僧侶達に届く事は無かった。
「あ、あの。三蔵法師様とお見受け致しましたがお泊まりの処がお決まりでなかったら私共の寺院にお泊まり下さい」
そう一息で言って進み出て来たのは年の頃は40前後の僧侶だった。 周りの年若い僧侶達は恐らく自分の一存で三蔵法師を誘うだけの権限を有していないのだろう。


「三蔵」
断ると即答しようと口を開くと、隣から八戒が小さい声で呼んだ。
「お世話になりましょう」
「冗談じゃねえ」
「冗談じゃありませんよ。カードの残高が少なくなって来てるんです」
にこりと笑って八戒がそう告げる。
「あの大喰らいザルが」
悟空の食費が嵩むからだろうと決めつけて溜息と共に口にした三蔵だが八戒は即笑顔で言葉を継いだ。
「三蔵もです」
「何で俺が」
「室内で銃を撃った後穴の空いた壁がどうなるか知ってますか? 修理しなければ穴が空いた侭ですよね?穴が空いた侭だと隣の部屋が覗けちゃいますよね? 僕達は男だから覗かれてもそれ程問題はありませんが女性客の方は気にしますよね? 男性客しか泊められない部屋が在ると宿屋の方も困りますから矢張り修理しないといけませんよね? その修理代って宿の方がどう工面するか知ってます? 出発する時修理費を請求されてるんですよ。それ位三蔵は当然知ってますよね?」
「・・・・・・」
俺だって好きで銃ぶっ放してるワケじゃねえ!
とか
俺を怒らせるサルと河童にだって責任はあるだろう!
とか。
小学生の言い訳のような弁解が一応頭に浮かぶには浮かんだのだが。
笑顔の八戒相手に一言も反論も出来ず三蔵が黙り込む。
「ちゃんと僕達も泊まれるよう交渉して下さいね」
畳みかけるように爽やかに言い放つ八戒のモノクルがきらりと光った。

(てめえらなんぞ馬小屋にでも寝てろ!)
八戒の妙な迫力のある笑顔に負けて反撃出来なかった自分が屈辱だ。然し苛立ちを抑え三蔵は先程声を掛けてきた男に向き直る。
「おい」
「はっ、はい!」
(この程度の事でこれだけ緊張してるようなヤツがそこそこ幅を利かせている寺と言うと大したモンじゃねえな。 大仰な寺に連れて行かれるよりはマシか)
声を掛けられ竦み上がるように背中を撥ね上がらせて返事した男を三蔵は値踏みする。
「この下僕共は食費がかかるが」
下僕じゃねえよ、言おうとした悟空と悟浄の口は八戒の手で塞がれた。
「は、それはもう。お供の方も是非ご一緒にいらして下さいませ」
「・・・世話になる」





「三蔵法師様を拙寺にお迎え出来るなど光栄です」
そう言ってしきりと頭を下げる僧侶の剃髪した頭には緊張の為であろうかてらてらと玉の汗が浮かんでいる。 山の中腹にあるのだと言うその寺を目指し僧侶の後を付いて4人は山道を歩いていた。 緑の濃い山中は初夏と言うにはまだ早いこの時期、歩いてでもいなければ少し肌寒く感じる程空気が澄んでいる。
「あんなぺこぺこしてまで連れて来る程ご大層なヤツじゃねえよな」
「まあまあ。三蔵のお陰で宿を探す手間が省けたんですから」
こそこそと背後で下僕共が声を潜めて話しているのが三蔵の耳に聞こえて来る。
(何が俺のお陰だ)
選択の余地も無く寺に厄介になる事を強制された三蔵が不機嫌に口元を歪める。
黙り込んだ侭の三蔵の様子を悪路に辟易した為だと思ったのか、或いはそう思い込もうとしたのか再度軽く腰を折りながら中年の僧侶が口を開く。
「足元が悪くて申し訳ないですなあ。なにぶん山道でして」
済まなさそうにそう言う僧侶の足許も三蔵と同じく草履履きであるのだが。
「山には慣れている」
寺と言うものは元々は山の中に建てられていた。だからこその山号だ。勿論三蔵の育った金山寺も山中に建っていた。 現在身を寄せている慶雲院のように長安の街中にでも在るようならば話は別だが。
「それは宜しゅうございました」
三蔵から返答が返って来た事で多少ほっとしたらしく安堵の表情を浮かべたその僧侶が
「あ、見えて参りました」
そう言って示した先にあった門は三蔵の予想していたより格段に立派なものだった。 仏教の盛んそうな土地であるこの地方でも有力な寺院らしい事は一目で分かった。
朱塗りの柱に囲われた、柱より一層鮮やかな赤い門扉の前に立ってさえ「逃げるなら今だ」と思いたくなるご大層な門構え。 厄介ごとが待っていると分かっていながら逃げ出さないのは今ここで逃げ出したりしたら後に八戒に何を言われるか分からないからだ。 いや、言葉だけならばまだ良い。静かに怒る八戒に何をされるか・・・きっと想像を絶する恐ろしい所業が待っているのであろう。
三蔵は小さく溜息を吐き軽く頭を振って脳内で笑顔を浮かべている八戒を追い払う。
「どうかなさいましたか?」
「いや、何でもない」
横を向いて自分を見上げ問い掛けて来る僧侶に素っ気なく答える三蔵の目の前で重たそうな扉がギギ、と音を立てて開かれて行った。





寺院の責任者達との挨拶を済ませた三蔵が僧伽藍内の宛われた部屋に戻ると悟空達が待っていた。
「三蔵サマの部屋豪華じゃん。俺ら3人で一部屋よ?」
悟浄が当面の部屋の主である三蔵でさえまだ使っていない寝台に腰を下ろし口を開く。 三蔵の為に用意された部屋は決して華美な訳では無かったが充分な広さがあり床も天井も壁も清潔に保たれている。 黒檀の机に揃いの黒檀の椅子、そして椅子の背に何やら複雑な彫り物、机の上に載っている人の殺せそうな程重厚な文鎮にも凝った彫刻。 飾り気と言えば要所要所のそう言った彫り物だけであった。
三蔵は悟浄の言葉には答えず立った侭悟浄を見下ろしじろりと睨み付けてから次に八戒をちらりと見る。
「当分出発出来ない事になった」
「当分って・・・どれ位ですか?」
膝の上のジープを撫でながら空いている椅子に腰を下ろした八戒が問う。
「さあな」
「・・・って何だよソレ」
「夏坐だ」
気色ばむ悟浄と対照的に思い当たる事があったらしい悟空は「ああ、アレかあ」と言って頷いた。
本来なら90日続くそれを、三蔵は旅の途中であるからと断った。 然しこの寺院の所蔵する未だ長安に伝わって来ていない仏典をチラつかされ短期間で出立する事を条件に参加する事となった。
お前のせいだからな、とは口に出しはしなかったが三蔵は八戒を無言で見据えた。





「で、さ。俺だけ判ってないみたいなんだけど夏坐ってナニよ」
三蔵の部屋を出て元の自分達の部屋に戻り持ち込んだ酒を飲みながら悟浄が八戒に尋ねた。
「僕も詳しくは知らないんですが」
「三蔵はいつもこの時期になると修行に入るんだ」
「修行?」
「なんか座禅だとか勉強会だとかで朝からずっと講堂で寺の奴らと一緒にいる」
「・・・ああ、夏安居ですか」
「げあんご?」
「先刻悟空が言ったように座禅修行したり勉強会を行ったりするらしいですよ。詳しい事は僕はお坊さんでないので知りませんが」
三蔵が旅の途中で寺院に寄り付かないようにしているのはいつもの事なので気にしていなかった。 この寺院に来る前自分が三蔵に言ったように最高僧である三蔵が宿泊を申し出れば余程貧しい寺院以外は宿泊費も食費も取らず三蔵をもてなしてくれるであろう。 余程運が悪くなければ自分達も。エンゲル係数の高いこの旅にとってそれは非常に有難い。 だがそれをしないのは歓待で足止めされる可能性が高いからだ。 何かと理由を付けては後一日、と宿泊を引き延ばされれば旅の日程が遅れる。 先を急ぐ三蔵にとってそれは望ましくない事態であったし、 妖怪の自我の崩壊と言う自分達と無縁とは言えない事態を目の前にし旅程を遅らせるつもりも無かったので寺院への立ち寄りを避ける三蔵に敢えて何も言った事が無かったのだが。
(この時期だったんですね・・・)
教会育ちの八戒はあまり仏教に詳しくない。夏安居と言う物も知識として知ってはいたがそれがこの時期だったと言う事は今この時まで忘れていた。
(道理で此処までの道中三蔵がソワソワしていた訳です)
だが決まってしまった事は仕方が無い。 出発までの数日は、カード残高を気にしないで済む生活を楽しむ事にしようと八戒は決意した。





「あー、ヒマヒマ」
「敵の襲撃もねえしすっげヒマー」
「修行の最中という事であちらの方々も控えてくれているのかも知れませんよ」
「そんな訳ねーって」
「線香くさいし料理は野菜ばっかだしもーサイアクっ!」
ぼすんと乱暴に寝床に悟空が身を投げる。 修行とは言っても一日それにかかりきりな訳では無く、修行の時間が過ぎれば他の僧達はそれぞれ自分達の仕事に戻っている。 然し三蔵は書庫に籠もりきりだし部屋も別なので一日のうちほんの僅かな時間しか顔を合わせる事が出来ない。 旅に出てからは毎日一緒にいるのが当たり前になっていたのでこんな風に三蔵の顔を殆ど見る事無く過ごすのは久し振りだった。
宿に泊まる時は三蔵と一緒の部屋だと煙いとか個室が一番だとか言ってみてはいるが、 悟空は本気で三蔵と一緒の部屋が厭な訳では無なかった。 旅に出てから煙草の本数が明らかに増えた三蔵と同じ部屋だと確かに煙たいのだが、 ずっと別々の場所に居て三蔵が何をしているか分からないよりは一緒の部屋の方がずっと良い。
「・・・早く終わらねーかな・・・」
大の字に寝転がり天井を見上げて悟空が呟く。
長安の寺に居た時も夏安居は毎年あったし、その時は三蔵は90日きっかり出席していた。 それでも長安に居た頃は部屋に行けば何時でも三蔵に会えた。
この寺に来てから三蔵が悟空達の部屋を訪ねて来た事は無いので毎回悟空が三蔵の部屋を訪ねて行く。 然し何度訪ねてもまだ部屋に戻っていない事の方が多い。 面倒ごとを押し付けられているのであれば三蔵はきっと仏頂面をしているだろうが、 昨日寝る前にやっと会えた三蔵に不機嫌そうな様子は無かった。 つまり自由時間を三蔵は好きなように過ごしているのだろう。自分達に会いに来るよりも優先するような何かを。
「・・・・・・」
ごろごと寝台の上で悟空は寝返りを打つが別に眠くて横になっている訳でもないので眠れもしない。
「オイ猿、街へ行くぞ」
「猿じゃねーって!・・・え?」
突然掛けられた言葉に悟空は起き上がって反論するが、「猿」以降の言葉を文句を言っている最中に頭がやっと認識して聞き返す。
「外出を禁じられてる訳じゃありませんしね。書き置きを残して行けば大丈夫でしょう」
「どーせここの坊主どもは修行に忙しくて俺らがいなくなっても気が付きもしないだろーし?街で美味いもんでも喰って来ようぜ」
「そっか。そーだよなっ」
二人の言葉が自分の為に発された言葉だと判っていても嬉しい。
「じゃあ行きましょうか」
「うんっ」
ジープを肩に乗せた八戒に促され勢い良く悟空は床に降り立った。






「『自分の力で勝ったのではないぞ!そのモビルスーツの性能のおかげだと言う事を忘れるな!』 って言ったケドさ、ランバ・ラルの乗ってるのだって新型のプロトタイプだったじゃん」
「『ザクとは違うのだよ、ザクとは!』」
明日出立すると伝えに仲間達の部屋に脚を運んだ時三蔵が見たものは何やら興奮ぎみに話し合っている下僕共の姿だった。
「・・・おい」
「あ、三蔵」
「明日出発する」
「はーい」
「げっ、じゃあビデオ今日中に見ちまわないと」
「ビデオ?」
悟浄の言葉に三蔵が問い返す。そう言えばこの部屋にはテレビだけでなくビデオもあるようだ。 賓客である三蔵の部屋にもテレビは設置されていたが特に見たい番組があるでもなし、一度も電源を入れる事さえなかった。
「三蔵待ってる間ヒマだったから街のレンタルビデオ屋で借りて来たんだ」
「どうせエロビデオだろうが」
口元を歪め三蔵が即断する。
「違うって。ちゃんと皆で見られるような健全なのを借りてました。なあ、八戒」
「そうですよ」
話を振られた八戒が笑いながら同意する。
「寝坊したヤツは置いて行くからな」
言い捨て背中を向けた三蔵の台詞に、「はーい」と返事しながら悟空達は慌ててビデオの前に集ったのであった。







「ヨシ、お前は今日からハロだ」
「キュー?」
「駄目ですよ悟空。ジープが困ってるじゃありませんか」
白竜の形を取っているジープを両手で捕まえて悟空が語り掛けるのに八戒が笑顔で釘を刺す。
「イヤなのかジープ?」
「キュキュー?」
「イヤなのかな?」
「よせよせ。それより俺ら3人でジェットストリームアタックでも開発するかあ?」
「その代わり踏み台にされるのは悟浄ですよ」
「う・・・」

わいわいと騒ぎながら野営の準備をしていると辺りの草をがさがさ踏み付ける無粋な音が聞こえて来た。
「見付けたぞ三蔵一行!」
そう叫ぶ男達の耳は長く尖り、妖怪である事を示す紋章が肌に浮き上がっている。
「なんだよこいつらメシの前にっ!」
そう言いながら右手に如意棒を召喚し、いち早く悟空は刺客達の群に突っ込んで行った。
「悟空、いっきまーす!」
「子猿ちゃんもああ言ってるし、とっとと片付けるとしますか。じゃあ悟浄も出まース」
ふざけた口調とは裏腹に臨戦態勢を整え、じゃらと錫杖の鎖をしならせて悟浄が刃を煌めかせる。
「玄奘三蔵、殺・・・」
ガウン!
「皆さん食事の材料は踏まないで下さいね」
にっこり笑みを浮かべて八戒が向かって来た刺客を気功で盛大に吹き飛ばした。
「なあっ、八戒の気功ってメガ粒子砲みたいじゃん!?」
「イヤですね、あんなに殺人的じゃありませんよ」
八戒は相変わらず満面の笑みを浮かべた侭だったが、その台詞は遠くへ駆け出して行った悟空には届かなかった。
八戒から少し離れた処に立ち、三蔵は悟空達の会話を聞くともなく聞きながら銃を構えていた。

・・・最近下僕共の言っているコトが分からん・・・。

背後から襲い掛かる刺客に振り向き様三蔵は銃口を向ける。
ガウンッ!

理解したいとも思わんがな。






「俺も飛び道具が欲しいなあ。ビームライフルみたいなさっ」
空腹時に襲撃を受け、早く切り上げ食事にしたかったのであろう悟空が張り切った所為もあり刺客の一群はあっけなく片付いた。
「でもガンダムの武器ってビームライフルにビームサーベルにバルカンでしょう。エネルギーと弾が切れたら後は素手ですよ」
刺客の為一時中断した食事の支度を再開しながら八戒が答える。
「素手って言うとガンパーンチ!とか?」
「ねえよそんなの」
「でもシャアだって『でたらめだ!貴様の戦いかたは!』なんて言ってガンダムに蹴りくれてたし」
「どっちがデタラメだっつーの」
ゲラゲラと悟浄が笑う。
「ザクの武器は斧ですから省エネで良いですねえ。次の街に着いたら買いましょうか」
「ちょっと待てよ。ダレが使うの」
「悟空です」
「えっやだよ俺」
「何を言ってるんですか。赤い彗星だって初期は赤ザクです。ザクをバカにしてはいけませんよ」
笑みを深くして悟空に斧を使えと迫る八戒の言葉からは、先程のメガ粒子砲発言を根に持っている事が伺い知れた。


三人から少し離れた処で食事の支度を一人さぼって新聞を読んでいた三蔵にもその会話は聞こえていた。 何だか分からないが悟空達が先だってのビデオにハマっている間は自分に騒動の矛先が向かないらしいと三蔵は悟り始めた。 自分に声を掛ける事も無く3人だけで盛り上がる下僕共と言うのは、騒がしいのを好まない三蔵には寧ろ有り難い位だった。

いっその事旅が終わる迄この侭でも良いかもしれんな。


「赤い彗星だったら悟浄の方がハマり役じゃん!」
「良いトシして赤い服着るだけならまだしもモビルスーツを真っ赤っかに塗るようなヤツと一緒にすんじゃねーよ!」
「でもシャア専用機って頭にツノがあるし悟浄とお揃いじゃん」
「俺様のチャームポイントとツノを一緒にすんじゃねーよチビ猿がっ!」


この侭でも・・・


「猿って言うなよこの『若さ故のあやまち』があっ!」
「ヘンな名前で呼ぶんじゃねえっ!」
「じゃあ次の街に着いたら赤い塗料を買って悟浄の錫杖を赤く塗りましょうね」
「ちょっと待てっつ!自分の乗るモビルスーツ尽く真っ赤に塗装させる派手好きと一緒にされちゃあマジで屈辱ヨ?」
「でも赤く無い機体もありましたよね。確かゲルググが」
「あれは開発途中じゃなかったっけ?」
「ゲルググって耳の横の処からヘンなツノが出てるんですよねえ」
「鹿の角みたいな」
「・・・悟浄にも生えませんかねえ」
「生えてたまるかっ!」


この侭で・・・良い訳あるかっ。


「やかましいこのバカどもがあっ!」

ガウンガウンガウンッ



三蔵一行の間でガンダムネタが禁止になるのはそれから程なくしての事だった。

斧じゃなくヒートホークって言うんですね。ガンダムと言えばRX-78。
分からない人には全然分からないネタだと思いますが書いてる本人は楽しかったです。

100題