合法ドラッグ没ネタ
ひらと、闇の中へ舞出した透ける色の羽をした蝶をそっと両腕を差し伸べ捕まえる。
ふわりと発光したこの世の物ではないその生き物は掌の中に捕らえても消える事は無かった。
「江流。こんな時間に何をやってるんだ」
「お師匠様の遣いだ」
そっちこそ『こんな時間』に何で出歩いているんだと言ってやれば良かったと思ったのは返答を口にしてしまってからで、
しまったとは思うもののどうした訳か自分はこの人物に対しては身構えた物言いをする事は少なく、
反射的と言って良い程思った事をぽろぽろと口にしていた。
「・・・光明様は何を作るおつもりなんだ?」
長い僧衣の袖でくるむように包むその物体を一目でこの世のものではないと看破し、
何かの材料であろうと言う事まで見抜いた朱泱が淡い光を放つ蝶の姿をしげしげと眺める。
「さあな」
「他にどんな材料を集めて来いって?」
「猫の髭」
「おま・・・っ!」
言って、江流の手をちらりと見た朱泱はその言葉が真実であろうと悟る。
細い引っ掻き傷が幾重にもその幼い手を彩っていた。
「あんまり可哀相な事はするなよ。猫は髭が無いと距離感が上手く掴めなくて色んなとこにごつんごつんぶつかるんだぞ?」
「さ、三本だけだ」
朱泱の言葉に普段およそ子供らしくない生意気な口の利き方をする江流が珍しく狼狽を顕わにした。