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マヨネーズ
「これブロッコリーにかけて下さい」 渡されたチューブを無言で受け取ったのは三蔵だった。 八戒の手に依って固過ぎず柔らか過ぎず綺麗な緑色に茹で上げられたブロッコリーの上に卵色のラインが無造作に押し出されて行く。 最後に絞り口に残ったそれを、三蔵は指で拭い口元に運んだ。 ぺろり。 「あ」 最高僧にしては行儀の悪い子供のような仕草で指を舌先で舐めた、その光景を見ていたのは悟浄一人だった。 「それってどーよ」 「何がだ」 「マヨネーズ直食い」 「食ってねえ」 「食ってたって。大体あんたマヨかけ過ぎ」 「うるせえ。じゃあお前がやれば良かったじゃねえか」 「あんたが受け取ったんだろーが」 「渡されたから受け取っただけだろうが」 「はいはい。そこまでにして下さいね」 放っておくと何時までも終わりそうにない二人の口論に食事の皿を全てテーブルに並べ終わった八戒が割って入る。 「マヨネーズの事でよくそこまで喧嘩出来るな二人とも」 呆れたように箸を口元に運びながら悟空が言う。 「サンゾーさまマヨラーだから」 「違うっ!」 「へへーん海老カツもーらい!」 「あっこのサル!ソレは一人一つだろうがっ」 悟浄の皿に悟空が箸を出した事により食事はいつもの通りバトルモードへと突入して行った・・・。 「おやすみさんぞー!」 「ああ」 寝る前に部屋におやすみの挨拶に来た悟空がぱたりとドアを閉じ出て行った。 部屋に残ったのはベッドに腰掛けた三蔵と、同じく向かいのベッドに腰を下ろしている悟浄の二人。 「三蔵」 「何だ」 呼ばれるのに三蔵は顔も上げず新聞の紙面に没頭している。 「三蔵」 「・・・何だ」 うるせえ、と思っているのが気配で伝わる不機嫌な声色でそれでも律儀に返事をしてくる。 「さーんぞってば」 「しつけえ・・・っ!」 「やっとこっち向いてくれた」 眼の前にはにかりと笑う悟浄の姿。顔を上げた三蔵は既に片方の指先を悟浄の手に掴み獲られている。 「折角の二人部屋なのに何でさんちゃんの指はこんなもん持ってんの」 「こんなもんじゃ、ねえ」 言いながら握り締める力を強めて来る悟浄から手を振り解こうとするが力は一向に弱まらない。 「離せ」 ぐいぐいと悟浄の胸元にまで手を引き寄せられながらも三蔵は抵抗を止めない。 「イ・ヤv」 言って、悟浄は三蔵の指先に口付けてから小さく舌を這わせた。 「・・・っ」 ぴくりと三蔵の指先が震える。 「なに?感じちゃった?」 「変態はてめえだ」 「あ?」 「人のことどうこう言ってた割にてめえが舐めてるのは何だ」 フン、と鼻で笑う三蔵を見て・・・悟浄は食事時の事を思い出した。 「ちょ・・・俺はヘンタイなんて言ってないって!」 「言っただろうが」 「言ってねえよ!それに三蔵のマヨ好きと俺の三蔵への愛を一緒にすんなっつーの!」 「同じだろうが」 「あ・・・?」 今。何か聞きたくない言葉が聞こえたような。 「三蔵。俺の事好き?」 悟浄は恐る恐る口にしてみる。 「さあな」 「じゃあマヨネーズは好き?」 「さあな」 「俺の事キライ?」 「さあな」 「マヨネーズ嫌い?」 「さあな」 全部さあなって・・・それじゃ分かんないでしょ。 「あんた本当に素直じゃない」 「かもな」 やっと返って来た「さあな」以外の台詞はこんな言葉で。 本当に素直じゃない三蔵に、苦笑を浮かべながら悟浄はそっと顔を近付けて、今度は唇にキスをした。 社のマヨラーの先輩はマヨネーズをチューブごとちゅーちゅー舐めて「気が付いたら半分舐めている」そうです。 33題 |