闇の中
「・・・っくし!」自分のくしゃみで目が覚めた。まだ明け方には遠い時間。 ぼんやりと寝台の上に身を起こしてみれば傍らに眠る人を起こす事はなかったようで一安心する。
眠そうな半眼になりながら風呂に入って髪をロクに乾かす事もなく眠ってしまった三蔵の金色の髪は、 未だ乾く事なく夜の空気に晒され冷たくなっている。
気候の温暖な天竺に程近い土地に滞在してるとは言え、風邪引くんじゃねえだろうなあ、 その冷えた髪を撫でながら密かに心配する。
そして三蔵は、髪を撫でられていると言うのに一向に目の覚める様子がない。 滅茶苦茶ヤリまくったもんなあ、無理ねえよなあ、そう思いながらも行為を思い返すと散々ヤリまくった筈の下半身が再び甘く疼く。
誕生日にかこつけて、クジを引く事もなく、然し不自然にならない程度の強引さで三蔵との同室になった。 それから後は言う間でもない。お楽しみの時間だ。
何度もイカせて、何度もイッて、 ベッドで横になった侭或いは煙草を吸ったりして体力が回復した後は再び三蔵の上に覆い被さり飽きる事なく白い躯を貪った。 苦しげに頸を打ち振るのを細い顎を捕らえて舌で口内を蹂躙した。
「呼んで、俺の事」
そう言って三蔵の性器に指を絡め三蔵の躯の中に俺のモノを突き立てた。
時間を気にせずヤリまくると言うのは実に久し振りの事だった。
長安にいた頃は二股かけてた事もあるし、不倫を仕掛けられた事も何度もあった。 旦那が留守だからとの言葉を鵜呑みに家に上がったら、 妻の不貞を疑っていた当の旦那が突如帰宅して床に散らばる服を慌てて拾い集めて裸の侭窓から逃げ出すなんて事もあったっけ。 今となっては遠い昔の出来事のような気がする、と他人事のように思い出してみる。 膚を重ねながら常に周りの気配に耳を澄ませるようになったのはそんな事があってからのような気がする。 そんな経験はこの旅の間にも十二分に活かされて来た。 酒を飲んで気怠く寛いでいてもセックスの最中でも、常に神経の何処かで敵の気配を探っていた。
敵の気配に邪魔されず、思う様二人きりの夜を過ごせるようになるなんて、全く平和になったものだ。
同じように最早敵の気配を感じ取る必要はないとばかりにぐっすりと寝入っている三蔵の寝顔を眺めながら、そう思う。
「・・・ぶしっ!」
再び、些か格好の悪いクシャミを一つ。
もう一度慌てて三蔵の方を見遣るが、眉間に微かに皺を寄せただけで起き出す気配はない事にほ、と息を吐く。
肩を竦めて布団の中に潜り込み、寝間着の袷が少し乱れている三蔵に擦り寄って行き背中に腕を回すが三蔵は未だ目を覚まさない。 すうと、僅かな寝息が俺の裸の胸を温める。
きつくきつく、呼吸が苦しくなる程きつく抱き締めたい。
三蔵の眠りを妨げたくないと思うのに強く沸き起こって来る欲求。
それに、従わずに俺は静かに目を閉じる。