DADA
「9日、空けといて?」
俺の誕生日だから、そう告げると映画の中でしかお目にかかれないような優雅さで片眉を上げて俺を見た後三蔵はこくりと頷いた。


誕生日と言っても自分の誕生日の為に豪華ディナーとか予約してるんじゃ寒過ぎる。 だから色気も何も無かったが池袋のラーメン激戦区でわざわざ並んでラーメンを喰った。 煮卵とメンマと厚切りチャーシューのたっぷり乗った熱々のラーメンを勢い良く啜り込む横で何が面白くないのか三蔵はちまちまと箸で丼をつつき回しては時々申し訳程度に口を付けるだけなのでラーメンは嫌いだったかと心配になった。
「来ちゃったv」
ハタチそこそこ位の女の子の二人連れがカウンター内の揃いの赤いTシャツを着ている店員に笑って話し掛ける高い声が聞こえて何とはなしに顔を上げる。
「げー、マジかよー」
そう言いながら盛大に湯気の立ち上るカウンターの中で汗を流しているひょろりと痩せているマコトくん(仮名。いや、池袋つったらマコトくんだろ) は友達らしい女の子の隣でにこにこ笑ってるロングの茶髪の子をちらちらと見遣っては視線を外す。 ははあ、と思ったが生憎マコトくん(仮名)の立っているカウンターの中からはあの子のミニスカートから伸びる若々しいぷりぷりした脚は見えなくて気の毒に思う。
「トモダチに聞いたらすげー並ぶって言われたけどホントにちょー並んだよー」
「今度はもっと空いてる時に来いよ」
照れたように乱暴に言うマコトくん(仮名)の声をもっともだ、と思いながらお冷やを飲み干すと漸く三蔵はすっかり伸びきって汁を吸い膨大な量になったラーメンを口に運び始めた。



ラーメン屋を出た後コンビニに寄って秋冬の新製品のビールと発泡酒を手当たり次第に籠に突っ込んで二人して俺のアパートに帰った。
それにしてもつまんねえな。誕生日が平日なんて。
「三蔵の誕生日っていつ?」
ラーメンの汁を全部飲んだ腹に3本目の、良い加減美味いとも思えなくなってきたビールを流し込みながら尋ねた。 この期に及んで俺はまだ三蔵をベッドに連れ込もうか何もしないで帰らせてやろうかと迷っていた。だって何と言ってもまだ週の頭だし。
「・・・29日だ」
「何月の?」
月を言わなかった辺りで気が付けば良いのに酔いで頭が回っていなかったのか、俺はそう訊ね返した。
「・・・今月」
そう言って三蔵が煙草を銜えるのを見て、漸く俺にもその言葉の意味が伝わって来た。
「え?嘘マジでっ!?」
「本当だ」
嘘、と言うのはただの勢いで吐いた言葉なのだと分かっていないらしい三蔵がむ、と眉を顰める。
「あ、ごめん。そーゆー意味じゃなくて・・・じゃあ俺とあんたって今同い年なんだ?」
へええ、と思わず息を吐く。照れくさいのか同い年なのがイヤなのか三蔵はアヒルのように唇を尖らせている。 いつもなら不機嫌さを現していると思えるその表情も同い年であると知った今だからか何だか妙に可愛く見える。
「俺と同い年じゃイヤ?」
悪戯っぽく訊ねるのに三蔵は上目遣いに俺を少し睨んだ。睨まれたって上目遣いじゃ全然迫力も何もありはしない。つうかマジ可愛いって。
マコトくん(仮名)の恋もうまく行きますように、 ついでのように考えながら沸き起こる衝動に逆らう事なく噛み付くように三蔵の唇にキスして目を閉じた。
タイトルはGUNIW TOOLS。マコトくんは池袋ウエストゲートパークです(笑)

novel−パラレル