愛・情大舞台
剥き出しの膚を触れ合わせ互いの体温を移し合い、ついでのようにカラダの一部分を合体させる、 言ってしまえばそれだけの事だ。それだけの事が三蔵はどうやらあまり好きではないらしい。 特別視はしていないけれどだからと言って俺のように「ただそれだけの事」と思う程にはカンタンな事とは思っていない。 だから三蔵から誘って来る事はないけれど、俺が誘えば断る事はない。 ソレが、軽い気持ちで発されるものではないと思っているから。
アンタを抱きたいと言うその気持ちに、一々理由を見付けないといけないアンタの精神構造は正直とても面倒くさいと思うけど。




敵の気配もない森の中で「抱かせてくれ」と言ったのは、切羽詰まってた所為もあるけどちょっとした意地の悪い気持ちも混じっていた。
戸惑ったような、困ったような表情を浮かべ、然し驚いた事に予想していたような「死ね!」 の言葉と共に贈られる弾丸の雨には見舞われる事なく、 珍しくも言葉に詰まりながら視線を逸らしている三蔵の困惑の表情が可愛らしいとも感じられたので意地悪な言葉を続ける。
「ね?何とか言ってくれなきゃ」
俺の台詞に眉間に皺を寄せた三蔵がそれでも怒っている訳ではない事は、頬に微かに走る朱で分かった。
困らせている事は分かっているけれど、もっと困らせてみたい。
拒絶の言葉を吐くべきだと思っている事は明白なのに決定的な言葉を言わないのは迷いがあるからだ。
断る事への。
迷いがあると言う事は、俺の言葉に乗っても良いかな、と思う気持ちが少しはあると言う意味だ。
そこまで分かっているのだったらこの侭手を出しても後々揉める事もないだろう、と言うのも分かってる。 行為に持ち込んでしまえば場所を忘れる程に愉しませる自信もある。 快楽を感じてしまえばそれが引け目となって三蔵も本気では怒れはしないだろう、多分。
薄く唇を開きはするが、尚も言葉を発さない三蔵が、分からない位微かに首を振る。
ダメだ、と言えない侭に。
「・・・んじゃキスだけさして」
今度は返事も待たずにとん、と軽く体を突いて背後の樹に寄り掛からせる。
面倒くさい、と思っていた筈なのだ、こんな風に一々しのごの考え込んでしまう相手は。
額に、次いで鼻先に軽く口付けると驚いたように目を見開くからその侭視線を外す事なく今度こそその唇に触れる。
驚いた表情で固まってしまってる三蔵は、 自分から目を閉じる事も出来ないし俺が再三唇をこじ開けようと自分の唇を開いてリードしようとしてるのも舌先を差し入れようとしているのにも気付いてないようでただただ、 背中を軽く樹に寄り掛からせている姿勢の侭身じろぎすらしない。
ねえ、あんたってヤツは何でそんなに面倒くさいのかな。
慣れてない、っつたってあんたとは何度もする事をした仲なのに。
慣れてないフリ、をしてる訳でもなく。
ひたすらに他人が嫌いで、他人の体温が嫌いで、他人に触れられる事が嫌いで。
幾度躯を繋いでも、未だキス一つにも慣れてなくて。
どうにもならないので諦めて先に目を閉じると、多分三蔵も遅れて瞼を閉ざしたのだろう、 漸く俺のアプローチに気付いたようでまごまごと唇が少しだけ開かれる。
抱き寄せて、体を密着させてもいつものようにハリセンが降って来る事もない。
口付けだけで熱を持ち始めている俺の下半身の体温に気付かない筈もないのに。
面倒くさい相手だと思っている筈、なのに。
力を抜いてその身を委ねきっているあんたの事が、こんなにも愛しい。


タイトルは香港の某アイドルの昔のアルバムタイル。投げ遣りで済みません。

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