after dark
どうして悟浄と言うヤツはいつも待ち合わせの時間に遅れてやって来るのだろう。
苛々と既に何度目になるか分からない、シャツの袖を捲り上げて時計の針を確かめると言う仕草を繰り返す。 もしかして自分の時計が進んでいるだけだろうかと、携帯を取り出しデジタルの数字を確認し、次いで駅構内の時計を確かめる。 何十秒かの誤差は勿論あるだろうが、そのいずれもが同じ時間を示している事に俺は安堵よりも苛立ちを一層深める。
いつも待たされる事に、俺が怒っていないと思ったなら大間違いだ、バカ野郎。
帰ってしまおうか、とふと思う。そして悟浄が電話を掛けてきても携帯の電源を切ったきりで出てやらない。
然し5分10分の遅れでそんな風に怒るのはあまりにも大人げない。 もし悟浄のヤツが「電車が事故で止まった」とかそういう事情でもないのに30分遅れたら、 今度こそ帰ってしまおう。そして本当は俺はいつもお前が遅れて来る事に腹を立てていたのだと知らしめてやる。 一回につき5分でも10回待ち合わせれば50分だ。そう思いながらも目の前を流れて行く大勢の人間の波を勝手に視線は追ってしまう。 目的の人物を発見する為に。
どうせヤツはまだ来やしねえよ、まだ約束の時間から3分しか経ってない。
そう思うのに。


待ち合わせスポットなこの場所で、既に何人もが目当ての人物と巡り会い「久し振りー、元気だった?」 とかはしゃいだ声を出しながら移動して行き、空いたそのスペースに新たな待ち合わせの人間が所在なげに佇んでは 「え?今どこ?・・・分かった、そっち向かうから」とか携帯で話しながら歩いて行き、 そしてその空いたスペースに新たに待ち合わせらしき人物がぼうっとした顔付きで立つ。 何故、どいつもこいつもあんなにも早く目当ての人物と引き合えるのだろう。
どうして俺は、必ず遅れて来る適当なヤツとこうして毎回待ち合わせなんてしているのだろう。
例えば、指定席でも取っていない限り人気の映画を観に行くのなら良い席が取れるよう早めに行った方が良い。
「メシでも喰いに行かねえ?」と誘われる時だって、 悟浄は別段店を予約している訳でもないので早めに行かなければ満席になってしまう事だってある。
何であいつはこうも時間に適当なんだ、と溜息を吐きながら俯く。
それなのに誘い出されればこうしてやって来てしまう自分が分からない。





「お待たせ」
そう言って登場する悟浄はいつも笑顔で、自分がよもや遅刻したなどとは思ってもいないかのように悪びれた処がない。
「待った?」
一応、口ではそんな事を訊ねるが。
「いや、少し前に来た処だ」
「遅えんだよこのクソ河童!」と、そう怒鳴りつけてやれば良いものを。
何故、そんな風に答えてしまうのかは自分では分からないが。
遅れても許せるかどうかは相手への好き度によって違います。 また遅れて来るんだろうな、と思いつつ会う約束を出来るか、もうあんな遅刻魔を待つのはイヤだと思うか。

novel−パラレル