long long good bye darling
いつもは顔を合わせる事もない位早くに家を出るのだがその日は用があって家から直接出先へ向かった。 忙しく仕事に向かう人々の合間を縫うように悟浄と並んで道を歩いた。
右へ続く道と左へ続く道とで別れた処でじゃあなと言って悟浄が左手を軽く上げて立ち止まる。 さしもの長身も波のように押し寄せる人々の勢いに負け揺らぎ、人波の合間に消えてゆく。 幾人かはこんな往来で立ち止まっている悟浄をあからさまに邪魔だと言わんばかりに肩で突き飛ばしそれでも悟浄は笑みを浮かべた侭手を上げ続けていた。 たかが仕事に行くだけなのに二度と会えない別れのように立ち止まった侭の悟浄の姿を見送りたいと思った。 数多くの労働者達の姿に呑み込まれ悟浄の姿はやがて見えなくなった。 伸び上がって悟浄の姿を探したいと思ったがそうはせず俺は視界に悟浄の姿を求める事を止めて歩き出した。





所用を片付けてから寺へ向かうと、八戒からの伝言と言うものが届いていた。 急ぎ報せるような何事かが起きたのかと訝しく思いながら書面を開く。
中には、河童が怪我をして病院にいると、自分もそこへ向かうとの短い文面が記されていた。
「・・・・・・」
煙草を銜えて再度、文面を読み直す。
怪我、と言う事は病気ではないと言う事だ、当たり前だが。 第一河童が病院に行く必要のあるような病気をしているのだったら俺が先に気付くだろう。
それにしても、だ。あの河童が怪我をすると言う事自体が信じられない。否、怪我自体はまあ、河童の事だしそういう事もあるだろう。
然し、病院へ行く必要のある程の怪我・・・?
しかも八戒も病院へ出向くと言う。
それは、つまり治癒の為だろう。
それ程までに酷い怪我なのだろうか、と思った時前触れもなく突如胃が悲鳴を上げた。
と、同時に目の前に事切れたお師匠様の最期の姿が浮かぶ。
煙草を灰皿で揉み潰し自分の考えを否定する。
そんな筈ない。
あのゴキブリ並の生命力を誇る悟浄の事だ、大袈裟に騒ぎ立てているだけに違いない。
胃の奥の不快感を殺しながら指先に力を込める。
あの旅の間にだって何度も死ぬような目に遭って、それでも医者など滅多にかかる事もなかったのだ。 落ち着け、と力を込めた指を自分の身を抱き締める形で身体に回す。
確かめに行けば良いだけの事だ、そう思う。
然し、と考えた側から思い直す。あの河童が掠り傷に大仰に騒いでいる処へ駆け付けたりしたらそれこそマヌケも良い処だ。 そう、思いながらも今朝別れ際に笑顔で手を上げた悟浄が脳裏を過ぎる。
イヤだ。
確かめに行くのが怖い。
行きたくない。
そんなバカな。この俺が何を怖がる事がある。
躊躇する気持ちを置き去りに、身体は勝手にふらりと立ち上がる。
寺を出て通りに出ると足は勝手に動きを速める。
行きたくなんかないのに。

こんな話でこんな題ですがごじょりん元気ですので。

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