旅の思い出
○月×日
かっぽーん


温泉宿と言うのは不思議なもので、何故か脱衣所に身長測定器と体重計が置いてある事が多い。
本当に、何故だか分からないが。
「・・・・・・・・・。」
この旅が始まったばかりの頃は64kgと言い張っていた体重だが、何時の間にか60kgに近い処にまで落ちてしまっていた。 今現在のこの数字を下僕どもに見られたら
「これで64kgと言い張るのは老眼が進んでいる証拠です」
だのなんだの非常に腹の立つ事を言われるに違いないとそそくさと計量器を降りる。
・・・いや、きっと何かの偶然だ。風呂上がりだったから汗をかいた分減っていたのかも知れないし。
それに、この機械が壊れていないと言う証拠もない。
そう考え直して少し安心する。次は・・・。
「やっりー!背が伸びてる〜!」
「おめーなっ!髪のてっぺんは身長に入らねえンだよっ!」
「自分がもう成長期が終わってるからってひがむなよっ!」
「やかましいバカ共が!計り終わったらなとっとと退かんか!」
「あれ〜?三蔵も計るの?」
「三蔵様こそもう成長期なんてとっくの昔に終わっちゃってるのにね〜」
この年齢になって未だ背がぐんぐん伸び続けていたらそれこそ不自然だし大体俺の成長期が終わっているならてめえの成長期だってとっくに終わってんだろうが、 つーかてめえこそ触覚は身長のうちに入らねえんだよ。
それだけの事を0.1秒の間に思ったが面倒なのでムカつく河童にハリセンを振り下ろしてやろうとした時、悟空がとことこと隣にやって来た。
「あ、俺が計ってやるよっ!え〜っと・・・176cmとちょっと・・・」
「ちょっとなんてハンパな事言わず176cmで良いんだよ、こーゆーのは」
「・・・そんな筈ねえだろ」
そんな筈はない。俺の身長は176cmなどではない、断じて違う。そうだ、きっと猿は数字も満足に読めないのだ、どうしようもねえ猿だ全く。
「あっ、だよなあ。やっぱ髪のてっぺんのトコで計るんだろ?」
先程の「背が伸びてる」発言がサバを読んだ結果だと、自分で認めちまってるじゃねえか。
本当にどうしようもねえ猿だ。



○月×日
ばさり、と言う音と共に机の上に広げられた複数のミニアルバム。
写真屋で現像に出した時に貰うオマケのあれだ。
「うわ、すっげー量」
「旅の間の写真を整理したんで、皆で見ようと思って持って来たんですよ。 最近は大容量のメモリーカードがあるんで助かりますね」
あの旅の最中、どういう訳だか、何時からだか八戒はカメラを持ち歩くようになった。
「確かにな、これがフィルムだったらすげー量になりそう」
「ふーん、いいなあ。俺もデジカメ買おうかなあ」
「お前が撮るのなんか食い物だけだろうが」
「んな事ねーよ!」
「・・・お前、目ぇ瞑ってんの多いな」
「だって!しょーがねえだろっ!そんなずっと目ぇ開けた侭で待ってらんねえしっ!」
「ハイ、チーズ、の「ハイ」の処で目を閉じると良いんですよ」
「あっ、そうか!流石八戒、物知りだな〜」
ばらばらとアルバムと捲りながらバカ共が喧しく騒ぎ立てる。
「・・・何か三蔵っていっつもカメラ目線な」
「そうなんですよ。ホラ、ここ。こんな隅っこなのに」
「だけどこんなちっこくしか写ってねえ時でも目ぇ瞑ってねえのが・・・」
「それはもうイイんだっつうの」
「ええ、三蔵は撮られ慣れてますからね」
「四六時中人にカメラを向ける奴がいるからだろうが」
「あ、これは目ぇ閉じてる!」
はしゃいだ悟空の声に顔を上げる。
そんなバカな。この俺がシャッター時に目を閉じるなどと言う失態をやらかす筈がない。 これ、と悟空の言った一枚を慌てて覗き込む。
「・・・寝てる時に目ぇ開いてたらおかしいだろうが」
と言うか寝てる時に撮るんじゃねえよ。
「だって八戒、目ぇ開けた侭寝・・・」
「何か言いましたか、悟空」
「んーん、なーんにも!」




確か相当以前web拍手に載せてた分だと思います。
悟空って絶対毛先のツンツンした部分を身長に含めて公表してると思います。

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