そして朝が
ぷはぁ、とシングルベッドに裸で上半身を起こした侭吸い慣れた煙草の煙を吐き出す。見下ろす視線の先には柔らかい金色の髪。その眩い金糸の持ち主は、今、 俺と同様に衣服を一切身に纏わぬ姿の侭シーツの上にその身を投げ出している。
まだ夢を見ているようだ、と思う。
どんな美人を抱いてもこんなタマシイが抜けたような気持ちにはならなかったのによりによって自分が今鼻の下を長くしているのが男を抱いた後だなんてちょっと自分でも信じられない。
場慣れしたオネエちゃんとばっかり付き合ってきたからだろうか。
身長なんかちょっとしか違わねえのにほっせぇ腰。見るのは初めてじゃなかったが(勿論こういった意味合い抜きで、だ。 何しろ一緒に旅してるんだし男同士だし、風呂とか着替えとかで今までだって見る機会はあった訳だ) 実際に腕を回してみると掌の下で骨が数えられそうな位皮膚が薄くてぎょっとする程に華奢で、 これじゃ女物ならともかくメンズじゃサイズ探すのも大変だろうな、なんて余計な事も思った。
俺にだって同じモンがついてんのに可愛らしいと思ってしまった、薄桃色の性器。
狭い入口も可愛いピンク色で。
全ての衣服を取り去ってその秘された場所に視線を当てると恥ずかしがって脚を閉じようとするものだから── 勿論開かせた脚の間には俺のカラダが入り込んでいたのでそんな事出来る筈もなかったのだが── 意地悪く手を掛けて更に大きく脚を開かせた。
そしてそのキツイ処を宥めて弄くってやりながら身体のあちこちにキスしたり舐めたりしてやると時折抑えきれないように小さく震えるあまりに馴れてない仕草に
「こーゆーコト、ハジメテ?」
と訊いたら小さく唇を噛み締めながら瞼を閉じて頷いたのだ。 こんな無粋な質問、答えないなら答えないで構わないと思っていたのだが自分がどうなっているのか次にどうされるかも分からず、 本当にその時の三蔵は訳が分かっていなかったのだろう、だが俺はその小さな仕草を見逃さなかった。 行為で既にその色白の肌はピンク色に上気していたからその色が行為の所為か恥ずかしがってる所為か分からなかったのだけが残念だったが。
別にそれまでだって乱暴にしていたつもりはなかったがその後は米粒に写経する職人の如く、イヤ違うな、 歳暮のデパートの包装紙を破らずに開封するかの如く丁寧に抱いた。
まあそりゃあそうだよなあ。 普段チェリーちゃんだの何だのからかってはいるが最高僧様がイケナイ事知ってるっつうのも良かあねえよなあ。
男と言うのは勝手なもんで、その汚れを知らない身体にイケナイ事を教え込んだ初めての相手が自分であった事を嬉しく思ってしまう。
相手が女であっても男であってもそれは同じ事らしい。 っつうか俺がハジメテっつう女と寝た事が無かったから殊更にそう思うのかも知れないが。
つうと三蔵の初体験は俺だけど俺の初体験も三蔵っつう事になるんじゃねえの?
うわ、参ったな。ある意味運命だったんじゃねえの?
むふう。
色男らしからぬ荒い息遣いになってしまい慌てて再度煙草を口に銜える。
ああ、そうそう。こういう時はアレだ。
「結婚して下さい」
とか言うもんじゃねえ?この桃源郷に於いて同性愛はおおっぴらにではないが、まあ何となく認められている。 結婚までは許可されてないがそういう形式はともかく大切なのは当事者同士の気持ちの問題だ。 さんざ浮き名を流して来た俺だが思ったより早く年貢の収め時が来たらしい。
明日の朝、目が覚めたら真っ先に言ってやろう。
こんな過酷な旅の最中は無理だろうが、旅が終わったら一緒に暮らそう、って。
そう決意すると気恥ずかしさのあまり布団の上でごろごろと転がり悶えたくなった。いや、実際そうしたのだが。
金糸に口付けてから眠りに落ちた時、 この幸せな気持ちが朝目が覚めた時何時の間にか俺の腕から抜け出した三蔵が寝間着まで着込んで隣のベッドで一人で眠っている姿を見る迄のものだと俺は知らずにいた。