もうひとりの人
週末毎にしか躯を繋げないにも関わらず三蔵が俺とのセックスのコツを呑み込むのは早かった。
花びらをむしるように衣服を剥ぎ取り素肌を撫で回して脚を開いてやれば三蔵は俺の教え込んだ通りに反応し淫らな姿を晒す。
言ってしまえば三蔵は良い生徒だった。
帰る、と言ったその手がドアノブに触れる寸前で細い手首をひっ掴んで室内に引き戻す。
ダメだ、と言うのに骨張った両手に指を絡めて床の上に押し倒す。
「ね、明日の朝帰れば良いじゃん」
そう言ってキスを浴びせかけて反論を封じ込めながら性急にジーンズのボタンを外して僅かに降ろしたジッパーの隙間から強引に手を突っ込んで下肢を嬲る。
残りの手でシャツを捲り上げ肋骨をなぞりながら素肌に触れればひくと息を呑んで三蔵は頚を反らす。
そのしなやかなライン。
浮かび上がる色っぽい鎖骨にごくりと息を呑み込んで焦らすようにやわやわと弄ぶにつれ熱を孕んで来る三蔵の性器。
未だ脱がせる事のないジーンズの狭い入口から指を奥まで潜り込ませて残りの指で固い蕾の縁をなぞる。
その刺激に三蔵のものが俺の手の中で揺れ両脚に力が入る。
キモチ良さそうじゃん。
胸元までたくし上げたシャツの裾に鼻先を突っ込み音を立てて乳首をしゃぶれば与えられる刺激が愛撫だと知っている其処は途端に固く立ち上がって来る。
ツンと尖ったソレを悪戯に噛んでやると感じるのか三蔵は鼻にかかった甘い吐息を漏らす。
俺の指が、舌が与える快楽に容易く陥落する飼い慣らされたカラダ。
胸を唾液で濡らす間も脚の間に差し入れた指を蠢かす事は忘れずに奥まで指を突き入れてぐりぐりと内壁を弄ってやる。
「あ・・・、ン・・・ッ」
ごわごわした布地のジーンズを腰から少し下げた位置で引っ掛けた侭の三蔵が堪えきれないように身を捩って腰を浮かす。
狭くて固いソコを時間をかけて馴らして解してやれば快楽への扉が開く事を教え込んだのも、俺だ。
音を立ててジッパーを下げ開いた場所から三蔵のソレを取り出してやると勃ち上がりかけたものがふるふると震えていて溜まらなく淫らな光景が眼前に展開される。
「やーらしーの」
言って、自らの指でソレを捉えて口内に導く。
ぬるぬると舌先で擦り上げてやると口の中で熱を持ち体積を増す三蔵のモノをしゃぶりながら窮屈になった自分のジーンズの前もくつろげる。
「あーあ、アンタのこんなになっちゃってどーしよー?」
意地悪く三蔵のソレを口内に含んだ侭で問い掛ける。
「ば・・・か野郎ッ!ヤメ、」
こんなになってるのにまだ止めろだなんて何て強情っぱり。
明日は用事があるから今日は帰ると、それならそれでウチに来た時にすぐ言ってくれりゃあこっちだって我慢のしようもあったのに。
メシ食って部屋に空き缶が幾つも転がるまでに酒を飲んで、
いよいよっつう時にいきなり「帰る」なんて言われた日には俺だって引っ込みが付かないっつうの。
しかもそれが、「サッカーの試合がある悟空に弁当を作ってやらないといけないから」なんて理由だった日には。
「も・・・止せッ、悟浄!」
言いながら三蔵の脚の間に身を屈める俺の頭に震える指が絡められる。
プツプツと何本かの髪が引き抜かれて行くイヤな音と共に微かな痛み。
「・・・ってえなぁ」
文句を言う為に俺は漸く三蔵のモノから口を離した。
「ね、アンタ俺が欲しくない?」
そう言って張り詰めた下肢を三蔵の脚の間に擦り付ける。
「・・・・・・っ」
息を呑んで瞳を潤ませた三蔵が必死に頚を打ち振る。
理性はともかく躯の方は既に俺の愛撫に陥落している事が分かり髪を引っこ抜かれた事も忘れて俺は少し気を良くする。
「たまにしか会えないのにさ、いっつも悟空悟空って」
「なっ、それとこれは」
「違うの?どう違う?」
ジーンズに手を掛けても三蔵の抵抗はない。
ジーンズを下着ごと一息に引き擦り降ろし取り去って目の前に晒された秘所の入口を広げて中に指を埋め込む。
「ああ・・・っ!」
「ね・・・指なんかじゃなく俺が欲しくない?それとも俺なんかいらない?」
嬲るように問い掛けてずぶずぶと突き入れた指で熱いその中を掻き回す。
いいトシしてガキでもあるまいし三蔵にべったり甘えきっている悟空に、そんな悟空の甘えを赦してやっている三蔵。
俺の事はただの友達だと思っているに違いない悟空の前でこんな風に抱いてやったらどんな顔するだろうか、なんて事考えながら。
普段の取り澄ました表情が嘘のように乱れて喘ぐ三蔵の姿に驚くだろうか、蔑むだろうか。それとも、傷付くだろうか。
「・・・ひ・・・」
吐息混じりの悲鳴を漏らしながら唇を震わせ頬を紅潮させる三蔵の瞳は既に焦点が合ってない。
あまりに色っぽくて俺のモノが痛い程に疼く。
付け根まで差し入れた指で意地悪く三蔵の感じるトコロを撫でるように弄くってやる。
三蔵がどう答えようともこの身体を離してやるつもりなんてなかった。
「俺のコレであんたン中一杯にしたくない?」
「・・・あっ!」
指を引き抜いて、
目の前の媚態にがちがちに固くなっている自分のモノを三蔵の入口に掠める程度に触れさせると淫らな痩躯が刺激に耐えきれず跳ね上がる。
腰を引いて身体を離してからもう一度、今度は先端で入口を軽くこじ開ける。
「あ・・・、くっ」
そうしてもう一度腰を引くと物欲しそうに三蔵の蕾がぱくぱくと口を開く。
床に必死に爪を立てる三蔵の腕が震えている。もう一押し。
刺激を望んでいるその部分に触れる事なくいきなり白い胸を飾る赤い色に吸い付く。
そうする間にも俺の両手は三蔵の両脚をざわざわと撫で回す。
三蔵だって俺の事が欲しくない訳じゃないんだと言う事は分かっている。
そうでなければこんな行為を赦して貰える筈がない。
そうでなければこんな風に俺の舌に、指にカラダを預けきって快楽を引き出されるに任せる筈がない。
悟空は、三蔵のこんな表情を知る筈がない。
三蔵がこんな風に他人に翻弄されるに任せる姿を知る筈がない。
そう思うのに当たり前のように三蔵が「悟空が」と口にした時俺ははっきりと嫉妬した。悟空に。
目の前にいる俺よりも当然のように選んで貰えるヤツに。
カラダを弄くり始めても「ダメだ」なんて言って悟空の事を気にする三蔵を、
手練手管の全てを使って快楽を教え込んだカラダを攻める事で征服した。
「ねえ・・・やっぱり帰る?」
暫し愛撫の手を止めて訊ねる。
僅かに浮かせた三蔵の顎。真っ白いそこに印を残したいと思うけど流石に見えるトコにつけたらやばいだろ、
と代わりに口に含んだ部分を女のソレにするようにきつく吸い上げながらわざとそんな事を言う。
痩身にのしかかっている俺の腹に当たる三蔵のモノが既に答えを教えてくれていたけれど。
「こ・・・、のっ、焦らすなっ!」
先刻までダメだとか散々可愛くない事を言っていた口が矢張り可愛くない言葉で行為を強請る。
「えー、だって帰りたいんじゃなかったっけ?」
「てめえ・・・」
惚けてみせると剣呑な瞳で三蔵が俺を睨み上げるけれど熱に浮かされたそれに迫力なんかちっともありはしない。
「いいからさっさとしろっ!」
うわ。何で命令するかなこの場面で。
「りょーかい」
唇を尖らせ音を立てて額に口付けてから両脚を抱え上げ充分馴らした場所に肉を掻き分けながらゆっくり押し入った。
「あ、あ、ああーっ!」
普段よりトーンの高い色っぽい声。
俺が、俺の肉塊がこの声を引き出しているのだ。
たまらない。
一気に達してしまいそうになるのを堪えて腰を引いて、もう一度一息に奥に突き入れて。
「は・・・っ、あ・・・ご、じょう、悟浄っ」
散々焦らしたからか惜し気もなく絶え間なく零れる熱い喘ぎ。
腰を打ち付ける度に俺を離したくないとばかりにきつく喰らい付く三蔵の肉襞。
「そんな締め付けたらイっちゃうって」
「ハ・・・ッ、とっととイっちまえ・・・ッ!」
息も絶え絶えなクセに不敵に笑って見せるその強気な姿。
スゴク、煽られる。
焦らして、じっくり楽しんでやろうと思ってたのにその言葉に俺は叩き付けるように激しく腰を動かす。
「う・・・っ、ア、アッ!」
律動に合わせて零れる悲鳴を自分の唇で塞いで。
「・・・まだ電車あるけどどーする?」
床の上で、
下半身だけ何も纏わぬ格好で上半身は羽織ったシャツがはだけてぐしゃぐしゃと言う酷い有様の三蔵の横で同じ様に上は着ているのに下半身だけ半端に剥き出しの間抜けな格好の侭俺は床に突っ伏す。
視界の端に埃の塊が入りこんな事になると知ってたらちゃんと掃除したのに、と思うが掃除は後だ。
床を汚す白濁を拭うのも後回し。まだ三蔵の中に入っているみてえにヤバイくらいにカラダが熱い。
三蔵の弱い処を攻略して無理矢理カラダを拓いた、それは事実だが最後は三蔵から誘って貰えた事に興奮していて息が整わない。
「も・・・いい、今日は泊まる・・・」
言いながら怠そうに上半身を起こした三蔵にハイライトを渡してやれば一瞬顔を顰めた後物凄くイヤそうに煙草を取り出して銜える。
そんな顔するなら吸うなよ。
「その代わり明日は始発で帰るからな」
「ちえー・・・」
やっぱり三蔵は悟空には甘い。
分かり切ったその事を少しつまらなく思いはするが渋々俺は身を起こしてジーンズを穿き直す。風呂の支度をしてやらなくては。
「あー、そう言えばあんた悟空の試合見に行くの?」
「・・・気が向いたらな」
「そっか、んじゃ俺も明日一緒に三蔵ん家行こっかな。それから一緒に試合見に行こう」
「ああ?」
「デートだよ、デ・エ・ト」
「ば・・・っ」
何気ない俺の一言に三蔵は頬を朱に染めて言葉を途切れさせた。
その顔が凄く可愛い、と思いながら俺はひらりと背中を向けて風呂場へ向かう。
まだ、三蔵に教えてやる事が幾つもあると浮かれた気持ちで思いながら。