PARADOX
旅が終わったらこうやって一緒に眠る事も出来なくなると、こいつは気が付いているのだろうか?毎日顔を付き合わす事も無くなると、分かっているのだろうか?
それとも俺の事なんか日々の雑事に忙殺されている間にどうでも良くなってしまうのだろうか?
身体を離したのを合図とばかりにまだ息が整ってもいないクセに三蔵は煙草に手を伸ばす。
「だぁめ」
そう言って煙草を取り上げれば不満そうに三蔵は俺を睨み上げて来る。
「まだ一回しかヤってねえだろ」
「・・・もう良いだろうが」
「足りねえもん」
小さな口付けを落とす。首筋に、胸元に。
「昨日、もやっただろうが・・・っ」
「昨日は昨日でしょ」
するりと下腹部に手を這わせると逃げるように三蔵が背中を向ける。
「アンタ、すっげー綺麗だし、カワイイ声で啼くし、そうすると俺の、がアンタの事欲しくってどーしょーもなくなっちまうの」
綺麗だと、実際口に出している回数の10倍はいつも心の中で思っているけどそんな事を言うと絶対不機嫌になるからこんな時しか言えない。 片手で宥めるように三蔵の前髪を梳きながら、残りの手が濡れた秘密の場所に辿り着く。 ここの処毎日抱いている所為で簡単に解れるようになった小さな入口。 こんなトコロを「入口」と認識している辺り、俺も相当ダメっぽい。 無類の女好きというポーズを保ってきたし、実際オンナノコは小さくて柔らかくて、それでいて暖かくてすげぇ好きなんだけど。 だけど本当は誰でも良かった。可愛いタイプよりは美人タイプの方が良いし、貧相よりはグラマーな方が良い。 身持ちの堅そうなコよりは誘ったら調子を合わせてくれるノリの良いコが良い。
だけど毎日同じ相手を抱いて、ソイツじゃなきゃイヤだなんて感情、俺は知らなかったんだ。
そう、コレは肉体的な問題ではなく感情の問題なのだ。 確かに遊び馴れてない三蔵のアソコはキツクて気持ち良いけど、重要なのはそこじゃなくて。 フェラがヘタとか、積極的に誘ったクセに大概マグロだった女とは余程気が向かない限り二度は寝なかった。 お互い楽しくて気持ち良いセックスが好きだった。
過剰な刺激に楽しくノッてくるでもなく身体を強張らせるばかりだとか、 自然と濡れる場所じゃないから毎回俺が時間をかけてゆっくり解してやらないといけないだとか、 そーゆー面倒な手順が楽しくてしょうがないのだ。 男でも女でも、声を掛けられてもちっとも嬉しそうなんかじゃなく、ヘタしたら撃ち殺されちまいそうにお堅い、 相手が誰でも良い訳ではない三蔵が、俺だけにその高潔な身体を開いてくれる事が嬉しくてしょうがないのだ。
コトの終わった後、三蔵が裸で俺の隣に横たわっているだけで、勝手に俺のモノは固く勃ち上がって来る。 三蔵を貫く為の熱い楔が。
「ふ・・・っ」
全てを呑み込んだ三蔵の息が整うのを待って腰を動かし始める。
「あ・・・・・・」
「気持ちイイ・・・」
俺を呑み込んだ部分が、離さないとばかりにキツク俺を締め付ける。
ぐい、と腰を引けばぎゅうと締まって皆まで抜け出る事を許さない。
それはまるで三蔵が俺が離れる事を許さない、と言っているかのようで。
衝動に任せて俺はがくがくと激しく腰を突き上げる。
「あ・・・ご、悟浄・・・・・・」
どうして良いか分からないかのようにただ揺さぶられるばかりの三蔵が、俺の名を呼ぶ。
「あ・・・も、ダメ、イク・・・ッ!」
「あっ、あっ、あああああっ!」
傍らで眠る三蔵の髪はシャワーでまだ濡れていて、石鹸の良い香りがする。
俯せて煙草を吸いながら三蔵の寝顔を眺めた侭まだ俺は起きている。
セックスの後の気怠い微睡みに身を委ねたくなんかない。眠りたくない。
眠らずにあんたの息が止まるまで抱き殺してしまいたい。
こんなにも離れたくないのに。
終わりの日が近付いて来る。