ももいろといき
迷惑の押し売りのような敵襲も、あちらさんが手強くなければ適度な運動として丁度良い。
最早その程度の感想しか抱けなくなる位には旅を続ける日々に馴染んでいた。 朝から晩まで同じメンツと顔を合わせていると言う不自然さにも、まあ何となく慣れて来ていた。
未だ馴染まないのは想いが通じ合ったばかりの三蔵との距離の計り方だ。
いきなり恋人面でデレデレするとか、お互いそーゆーキャラじゃねえし。 でも身体だけで心の伴っていない関係って訳でもねえし。 せめて日がなべったりくっついて離れないようにしてりゃ良いのかと言うと、 別にそれは俺が気を付けてそうしてなくたって一日一緒な訳だし(つうかいつもと変わんねー)、 自称恋人としてはどうすりゃあんたを特別に想ってると伝えられるのかと頭を悩ます処だ。



恋人同士らしい行いとして鍵のかかる部屋で二人きりになったらチャンスは逃さず親密と言うか濃密なコミュニケーションを取る。 これは欠かせない。
薄暗い室内で裸の身体を重ね合ってあられもない格好を晒し合う相手はここの処ただ一人の人間に限られていた。 それは俺だけの事じゃなく、恐らくヤツもそうだろう。 白い膚に浮かぶ桜色の痣は俺が数日前に残したものだけで、その事実に俺は気を良くして優しく優しく、前戯を施す。
恋人同士らしい行いその2、だ。
熱を持つ性器を指で扱き上げながら白い膚に唇で舌で触れて時折気紛れに軽く噛み付く。
気持ちイイんでしょ、 そう言って執拗に言葉を強請る俺に唇をきつく噛んだ侭遂に俺の望む言葉を与えない侭三蔵は俺の手の中に精を零す。
「ああ、もう、勿体ない」
「・・・・・が」
荒い息と共に吐かれた小さな声。多分「何が」、だ。
「そんな我慢してイくよりイイって言ってくれればもっと気持ちヨクしてあげたのに」
「・・・・・・か」
今度は唇の動きだけで言葉を読む。「バカ」。そりゃあんまりだ。
「それともこんなんじゃ足りないって事?」
夜目の利く俺には月明かりだけで充分掌を濡らす液体の濁った白さが見て取れる。 その淫らな液体を三蔵の足の間の秘められた場所に塗りたくりながら指を差し入れる。
「・・・・・・・ッ」
「縛るとか目隠しとか道具とか、試してみようか」
「は・・・・・・ッ」
俺の言葉に三蔵が反射的に何事かを言おうと口を開くが見計らったように深く差し込まれた指にピンク色の唇が言葉を紡ぐ事は適わない。
「一晩中だって眠れないような薬だって売ってるし」
敵襲を受けた瞬間にだって正気に戻れないようなエゲツナイ薬だってこの世にはある。 勿論そんなモンを造ったヤツはこんな物騒な旅の最中に使う事なんか想定しちゃいないだろうが。
俺の腕の下で三蔵が必死に身を捩ろうとするのを中に入れた指をいやらしく動かす事で封じる。
「う、あ」
言葉で訴えるのを諦めた三蔵がだらしなく唇を開いた侭幾度も頚を横に打ち振る。
ひたすらに俺に視線を据えた侭。
その、三蔵の視線の必死さに俺は漸く動きを止める。
「・・・・・・」
自分を翻弄する動きが止まったにも関わらず三蔵は開かれた脚を閉じようともせず、大きく胸を上下させたきりで何も言わない。 何も言わずに視線だけで何かを語ろうとしている。
「・・・・・・冗談だよ」
言いながら湿った指を三蔵の体内から引き抜く。
「何処の誰が造ったとも知れないオモチャにあんたの身体を堪能させんのもシャクだし」
『何処の誰が』
自分で言った言葉にぞっとする。それは俺だけではなかったようで不安そうに三蔵が表情を固くする。 こういった行為を毛嫌いしていた三蔵に、俺の言葉は冗談で済ませるには少し、毒が強過ぎた。
浮かれ過ぎて失敗した。俺だけに赦される行為だと言うのに怖がらせてしまうなんて。
「いやん悟浄のバカバカァ」なんて可愛い態度で俺の言葉を流す事も出来ないのだ、三蔵のヤツは。

「力抜いて」
俺のバカな台詞なんて、思い切り気持ち良くして忘れさせてやる。 続く行為を知らせる為に三蔵の脚を抱え上げながらそう告げて小さく口付ける。額に。頬に。 俺の唇が首筋にまで降りて来た時、焦れたように三蔵が頚を振るのに俺はふと顔を上げる。 顔を僅かに起こしている三蔵が小さく唇を開いている。キスを強請られているのだと気付かない振りをして再度頬に唇を寄せる。
三蔵の腕、が。
上がったかと思うと俺の頚に絡み付き抱き寄せる。
恋人同士らしい行いその3。
無言の侭口付けられる。唇を開いてはいても自分から舌を差し入れる事も出来ない、不器用なキスを。 貪る程の激しさで何度も噛み付くような口付けを交わす。
まだ肉体で交わり合う事の無かった頃、同行者達の眼を盗んでは交わしていた頃のようなキス。

何とびっくり2年以上前に書いて放置してました。タイトル考えるのがイヤさに。手直ししてやぶれかぶれタイトルにてアップです。

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