敗者のルール
時折、三蔵が自分から乗っかって来る事がある。滅多にない事だけど。
ぼんやりベッドの上で煙草をふかす俺の足を跨ぐようにして三蔵がその身をベッドに乗り上げて来るのだ。
「どうしたいの?」
そんな時はわざと意地悪く言って三蔵が動くのに任せる。
娼婦のように俺の足の間に顔を埋めて娼婦とは程遠い拙い動きで俺のモノを舐め上げる。 その拙さが却って新鮮で、瞬く間に俺のモノは硬く張り詰める。
「そう・・・、そう、上手」
俺と視線を合わせる事もない侭必死に俺の欲望を煽る三蔵に俺はそう言ってやる。
ヘタだ、と言うよりは上手だと言ってやった方が上達が早いのは、 悟空に計算だの読み書きだのを教えてやってる八戒を見ていれば分かった。
八戒は小猿ちゃんに勉強を教え、俺は飼い主さんに実技を教え込む。仲々良い役割分担だ。
「飲んで。俺の」
アンタが始めた事なんだから。
そう言うと、一瞬躊躇するように身体を強張らせるから金糸に指を絡め、少し力を込めて三蔵の頭を望む場所に導いてやる。 逃げられないように俺がしたから、 カタチだけでもそうしてやると三蔵は再び顔を伏せていつも俺がしてやってるのを真似して指で擦り上げながら先端を強く吸う。
慣れてないからなのかそれとも単に下手くそだからなのか、いつも三蔵は全てを飲み干す事が出来ず、 と言うかその殆どを口の端から零してしまい、それでも苦しそうに噎せては幾度も咳き込む。 そうなる事が分かっていながら三蔵が俺のモノを口内に導き入れてくれた事が嬉しくて、 唇の端から零れるモノを指の腹で拭ってやり苦い味のする口の中を自分の舌で清めてやる。
大切にされている、と思う。


三蔵が自分から仕掛けて来るのは例えば虐げられたガキを見た後。 例えば癇癪を起こした母親に怒鳴りつけられて泣き出すガキを見た後。
うるせえな、と言わんばかりに興味なさそうに背中を向ける三蔵の後を追う事も出来ず何度も振り返り、 ハナミズ垂らしたガキがそれでも母親に詰られるのを見た後。
俺は一体、そんな時どんなツラを晒しているのだろう?
図体ばかりは人並み以上にでかくなった俺が、怒鳴りつけられ泣き出すガキ同様にびくりと肩を跳ね上げてその場に立ち竦む様は、 一体三蔵にはどんな風に映っているのだろう?
可愛くねえガキだったとか、ありゃあ母親の方が悪いよなあ、とか、 その場を離れても俺達の間で親子の姿が話題に上る事はなかったが。
その気になれば幾らでも達者な口が利けるクセに三蔵は余計な事は一切言わない。 落ち込んでいる俺を慰めるような優しい台詞の一つも吐きはしない。
ああ、でも、と俺は思うのだ。
何も言いはしないクセにこうして三蔵が自分から擦り寄って来てくれる。
傷付いたガキを見る事が以前程苦痛でないのは、きっと三蔵のお陰なのだと。

時系列的にはどうしても此処、と言うこだわりはないのですが敢えて入れるならこの辺りかなあ。

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