sleepless night
この侭夜が明けなければ良いのにと思う。
ベッドの上で深い眠りについている三蔵の寝顔を眺めながら。


人の気配に敏感な三蔵が、寝ているとはいえ俺の不躾な視線にも目を覚まさないのはそれなりの理由があるからで。 大の大人が一つのベッドで一緒に布団にくるまっている、つまりそう言うコトだ。
長旅で疲れてる所へアルコールを摂取して、更にベッドの上でも疲れるような事をして、 そんな訳でそうっとカーテンを開けたにも関わらず三蔵が目を覚ます気配はない。 夜目は割と利くもののもっと良く寝顔を見たくて開けたカーテンだが、空を見上げてみれば満月には少し欠ける、大きな月が浮かんでいた。
良い夜だ。
こんな日に月を見上げる余裕もない状態にさせてしまった事を済まなく思う。
ほんの少しだけ。



青い月の光に照らされた冴え冴えとした白い膚。
いつもはまばゆい黄金色の髪は湖面に映る月明かりのような色に染まっている。
まるで体温のある人形のようだ。
ただ綺麗ってだけじゃなく、なんつうか凄く神秘的で俺なんかが触れてはいけないもののように思える。
朝になるとうって変わって険しい表情を浮かべ、スミレのように美しい紫色の瞳は辺りをきつく睨みつけ、 柔らかな唇はへの字に結ばれ、口を開けば「死ね」だの「クソ河童」だの罵声ばかりを浴びせかけるのに、 眠る三蔵は「虫も殺さぬ聖人」のように見える、意外な事に。
さっきまではだらしなく開いた薔薇色の唇の端から唾液を零し俺の与える快楽に溺れていたと言うのに。
俺の前で脚を開きあられもない姿を晒し、俺が楔を突き入れる度に全身を震わせていたと言うのに。
俺の背中に腕を廻して呼吸も出来ない程きつく抱きついていたと言うのに。
こうして眠っている三蔵は穢れを知らない人間であるかのように見える。
さんざっぱら犯して汚しまくって貪った俺がそんな風に思うのもおかしいが。

・・・否、起きている時の三蔵は全ての人間にとっての救いであり象徴であり、聖人である、それは事実だ。そんな事を言うと本人は嫌がるだろうが。
決して俺だけのものにはならない特別な存在。
時として俺や八戒はコイツのそんな聖性に縋る。
縋らずにはいられない時もある。
だから、三蔵を求める弱い人間達の気持ちも分かるのだ。
それでも時折三蔵を独占したくて居ても立ってもいられなくなる。
夜の間だけ三蔵は俺のものになる。
悟空と八戒とさえ共有する事なく、誰とも共有される事の無い俺だけが知っているただの人間としての三蔵を、俺のものに出来る時間。
夜明けまでのほんの僅かな時間だけが俺に赦された時間だ。
夜明けなんて来なければ良いのに。
息を潜めてそんな事を考える、月明かりの中目を閉じる事なく。



俺の願いも虚しくまた陽が昇る。

「寝てる時は可愛いのに起きると凶暴」と言う面白くないギャグネタのつもりで書き掛けて2年近く放置→ボツ救済。
時系列で並べてますが本当はどの辺りに入れても良い、「多分この辺りだろう」程度のこだわりです。

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