thinking of is you
気が付いた時は全身が疲労で酷く怠かった。
いや、違う。認めてしまおう。出血が酷くて力が入らなかった。大木に凭れぜいぜいと荒い息を零す。
だからと言ってこんな処で呑気に座り込んでいたりしたらあの薄情な仲間共に置き去りにされてしまう、 必死に身を横たえ腕の力だけで前へ前へと這いずって行こうとするがもどかしい程俺の身体は距離を稼げない。
「・・・何だてめえ。何してやがる」
唐突に降って来る台詞にビクリと顔を上げればそこには白い法衣も金色の髪も何処か眩く見える最高僧様のツラがあった。 ああ、違う。こんな風に人間が眩しく見えるのは俺の視界がヤケに昏くなっているからで、 つまり俺の気力が持つのもあと少しと言う事だ。
「エヘ。ちょっとね」
そう言って俺は震える指で前方の土を掻き毟る。力の入らなくなってきた腕。 必死の俺の努力も空しくイモ虫がのたくる程度の速度でしか動かないカラダ。
「・・・八戒を呼んで来る」
動くなとも待ってろとも言わずくるりと冷たく背を向ける痩身。 嘘だ。そんな事言って俺の事を置いて行くつもりに決まってる。
「待・・・!」
慌てて白い背中に声を張り上げる。
立ち止まる事なく頚だけをこちらに向けて綺麗に微笑む姿。
「待ってろ」
一言言い置いてそれきり振り返りもせずに遠くなる痩躯。 だけど俺は三蔵の滅多に見せない笑顔に安心して無理に動く事を諦めてその場に突っ伏した侭、密かに笑みを浮かべる。







「・・・・・・」
目が覚めてみれば俺は自分の体温でぬくまったベッドの上にいて、勿論身動きも侭ならないような酷い手傷も負っていなかった。
夢ん中でまで敵さんと戦っていつも見慣れたツラを見ると何だか酷く損した気分だ。しかもヤケにリアルな夢だったし。
あー、損した損した、と眠気が残って気怠いカラダを起き上がらせる事なく寝穢く眠気にしがみつく。
それにしても、だ。
何で夢に出て来るのが三蔵のヤツだったんだろう。
あんな場面で俺を助けてくれそうなのは八戒ぐらいしかいないだろう、この旅のメンツの中では。 悟空のヤツは「ダッセー」とか抜かすに決まってるし三蔵に至っては一瞥の後見なかった振りをして無言で背を向けるに決まっている。 そーゆーヤツらだ。ああ、オレ様可哀相。なんでこんなヤツラと一緒に旅なんかしてんのかなー。
処が、だ。にっこり笑って「待ってろ」とまで言ったのだ、あの夢の中の三蔵は。
俺は、三蔵に何か期待しているんだろうか。
優しい言葉とか。笑顔と共に与えられる労いだとか。
「・・・ありえねー・・・」
コレはもう笑ってしまうしかない。
いつも不機嫌そうなあの傲岸不遜のオレサマ坊主がにっこり笑って見せた日にはきっと俺はショック死してしまうに違いない。
ある意味俺を救ってくれたヤツには違いないが、赤い色の呪縛から俺を解き放ってくれた事は確かだが、 だからと言って俺は三蔵に救いを求めている訳ではない。
「ありえねーありえねー」
所詮夢なんてタダの夢だから。
繰り返し口にして煙草に手を伸ばす。
不可思議な夢をさっさと忘れてしまう為に。

every thought i thinking of is you.

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