not so beautiful world
「一番恐ろしいのは人の形をした生き物」と告げられ他人を殺傷する威力を充分に有した武器を与えられた。





自分に向けられた殺意を感じ取る。下山してから短期間でまるで皮膚のように馴染んだ其れ。
寺に居た時は「大の大人を蹴散らす程の豪傑」とまで言われてはいたがそれはあくまで一対一の正々堂々たる対峙の事であって、 多対一で相手が武器を持っていたり妖怪であったりした場合そんな過去の誉め言葉など露程も役に立ちはしないと僧正様は知っていたのだと、 夜盗共に包囲されながら思った。

こんな小坊主が持っている金子などたかが知れているのに(尤も今の自分は路銀としてそれなりの金を持たされてはいたが) 小金を狙い現れた夜盗。先陣を切った幾人かを叩きのめすと残りの奴等の目の色が変わる。 「口封じの為の殺意」から仲間を殺された事からかそれともガキに遅れを取った事に対する屈辱からか、 ラクには殺してやらないと、腸を引きずり出して安らかな死が訪れる最後の一瞬迄地べたを這いずり回って苦しめと 「苦痛を与える為の殺意」に変わる瞬間。
自分の尊厳と夜盗共の尊厳と。 比されるのも反吐が出る程価値が違うのだと一生知る事も無い下衆がなけなしのプライドを怒りに変換して襲い掛かって来る。



死ね。
死んでしまえ。
貴様のようなガキは殺されて悲しむ者など居るまい。
ガキのくせに顔色一つ変えず人を殺しやがってこのバケモノめ。


呪いの言葉を吐き出しながら襲い掛かって来る奴らの動きは訓練されていない大雑把な動きで。 連携など考えた事のないバラバラの動きながら左右の人物が同時に動くが所詮計算された動きでは無く怒りに任せたてんでんばらばらなアクション。 先に動いた奴に銃弾を発射し遅れて動いた奴の刃は僅かな身の動きで交わす。
振り下ろした刃の先が目標を失いバランスを崩して泳ぐのに先程浴びせ掛けられた呪詛を返しながら引き金を引く。 短く一言だけ。
「死ね」
と。



「バケモノ」と。 寺に居た頃吐き捨てる様に言われた蔑みの言葉を一見のこの夜盗共にも言われた事を何処か面白がっている自分がいる。
成程自分はバケモノなのだと。
常に優しい笑顔を浮かべていた師と違い笑顔を浮かべる事はおろか衆生の日々の営みに心動かされず生命を躊躇う事無く撃ち殺して行く自分は真っ当な人間ですら無いのだと。

バケモノだから初めて銃口を人に向けた時から引き金を引く事に躊躇いが無かったのだと、 鼓膜に突き刺さる弾丸が発射される際の音を恐ろしいと思った事が無いのだと、 返り血を浴びて尚臆する事が無いのだと。
殺戮の中に身を置いて酷く安心を覚える自分を正当化する言い訳を見付け嗤い出してしまいたい程安堵する自分を知っている。

化け物と言い乍ら酷く怯えた表情をする奴等に蔑みと憎悪を覚え引き金を引く。 既に戦意を無くした奴等の額に狙い過たず銃を突き付け脳漿を飛び散らす。
それは俺を「人で無い者」と言った代償。



13歳のガキが一人で生きて行けない世界を苛酷だと思う事無く、此の世界は歪んだ自分を歪んだ侭受け入れてくれるのだと喜んで身を委ねる。
それはとても美しい世界。

タイトルはマリリン・マンソンの「(not so)beautiful people」を元に。
体調悪くて自動筆記のように書き付けた後気を失う様に眠り目が覚めて自分で驚いた。 私の脳内の何処にこんな暗い文が潜んで・・・。

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