「早朝の廊下」で登場人物が「踊る」、「コーヒー」という単語を使ったお話を考えて下さい。






犬の躾の礼をさせてくれと言った悟浄に、三蔵はそれならば、と答えた。
「何かあった時にコイツの世話を頼む」
傍らの大型犬の頭を撫でながら。


三蔵の体調があまり良くないのではないかと思っていた悟浄には、三蔵のその申し出は意外でも心外でも何でもないものだった。
体調の悪い時には他人を頼りたくなると言う当然の事が、だがそれが三蔵となると何となく悟浄には意外な気がした。 そして三蔵が他人の力を当てにしたいと思う時に自分が即戦力になれるであろう事を嬉しく思った。
これで案外慎み深い所のある悟浄は思う所をぺらぺら口にする事もなく、自分に出来る範囲であれば何時でも力になると、そんな殊勝な事を言ってみせた。
「この後予定はあるか?」
「え?いや特に無いけど」
「近くだからうちまで来い。場所を知らないと困るだろう」
思惑通り三蔵は悟浄の台詞に絆されたようだった。
何かあったら連絡するからと三蔵は言ったが、「その時」はそんなに遠くはないだろうと先に立って歩く背中を眺めながら悟浄は踏んでいた。 頼りに出来る対象が出来た事で張り詰めていた気が緩むのは、珍しい事ではない。



大型犬を飼っているくらいだからそうだろうと予想していた通り、三蔵の住まいは一軒家だった。
早朝の散歩から戻ってみると、数日前訪問したその家の玄関で三蔵が待っていた。
「起きて大丈夫なのか?」
「まあな」
咳き込みながら悟浄の手からリードを受け取り玄関前の犬小屋に犬を繋いだ後、意外な事に三蔵は悟浄を家の中に招き入れた。



「あれ、犬だけじゃなくウサギも飼ってるんだ。あんた本当に動物好きなんだな」
冷えた廊下を通り過ぎ、案内された部屋の隅にあるケージ内でもふもふと踊る白い生き物を発見した悟浄がそう言うのに三蔵は即答した。
「好きじゃねえ」
「え?」
「ウサギは好きじゃねえ」
「え、何で。可愛いだろ」
「その可愛さで媚びてんのが好きじゃねえ」
「でもこのウサギだって別にアンタに媚びる為に可愛く生まれてきた訳じゃないと思うぜ?」
三蔵の頑なさに若干驚き、ケージ越しにその「媚び可愛い」生き物を構うのを止めて悟浄は椅子に腰を下ろした。
「・・・知り合いに無理矢理押し付けられただけだ」
テーブルの上にコーヒーカップを並べ、憮然とした表情で三蔵が続ける。
「しかも『ウサギは寂しいと死んじまうから』って二匹もだ」
「あー・・・、それガセネタだぜ?信じて二匹引き受けちまったんだ・・・」
自分よりも動物に詳しそうな三蔵がそんな噂を本気で信じていた事とその三蔵の愕然とした表情に、悟浄はコーヒーを吹き出しそうになるのを堪えるのが精一杯だった。






ドッグトレーナー三蔵の続き。
「恋愛お題ったー」なので現時点では恋愛はなくても自分の中ではちゃんと恋愛お題になってるんですがどうでしょう。



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