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未だ空に月が残っているような、早朝と言うには早過ぎる時間の高架下。 まるで密会のようだと思っているのはきっと自分だけだ、悟浄はそう思って密かに微笑う。 アンアンと甲高い声で鳴く子犬を見下ろし「しっ」と唇の前に指を立てる、 そんな三蔵は「静かにしなかったら殺すぞ」的物騒な気配を滲ませている訳でもなく。 本当に、聞き分けのない子供に言い聞かせるような静かさでしかないのに不思議な程容易く問題児達を手懐ける。 「あんた・・・本当に凄えなあ」 飼い主が、自分以外には懐かないのだと前置きした後、 実際その通りケージから出して散歩に連れ出そうとした悟浄にいきなり噛み付いた茶色の子犬はだが然し、 三蔵を見るなり腹を見せて服従を誓ったものだ。 相変わらずの三蔵の手腕に感嘆しつつ悟浄は懐かしく思い出す。 飼い主が留守にしている数日間に散歩に連れ出して餌を与える、そんな事を悟浄は時々請け負っている。 他人から与えられる餌を頑なに拒み続けた動物が餓死してしまう程の長期間ではなく、 ちょっとした旅行や帰省、或いは体調が悪くて散歩に連れて行けない時等に。 そこらのペットホテルに預けるよりは格安だと、リピートしてくれる「お客」も多かった。 空き時間のちょっとしたバイトだ、だがたまに問題はある。 この、悟浄の脚に絶え間なくがぶがぶ噛み付こうとする気の強い茶色の子犬とか。 「はー、なんでそんなに俺の脚が好きかねえコイツは」 「おい、そこの」 「俺の長い脚が羨ましいのか?」 「そこのお前」 「憧れが嫉妬に変わったとか?」 「そこの脳味噌沸いた赤毛」 「うーん、サスペンス・・・・・・って誰がだ!」 がば、と顔を上げた悟浄は先程の失礼な台詞は空耳であったに違いないと思った。 素早く辺りに視線を走らせた後、近くでファッション誌の撮影でもしているのかと、そう悟浄は思った。 声のした方には、毛並の良い大型犬を従えたド派手な金髪の青年しかいなかったからだ。 青年の連れている犬も、よく手入れされているらしく長い毛がつやつやと輝いていてそこらの普通の飼い犬のようには見えなかった。 「・・・えっと?」 「犬にナメられてんじゃねえよ」 まるでモデルのような整った容姿の男から発せられたぞんざいな言葉に、先程の失礼な台詞は間違いなく眼前のこの男からのものであった事を悟浄は確信した。 そうしている間にも、悟浄の足元には茶色の子犬が噛み付くタイミングを狙ってうろちょろしているのだが。 「・・・アンタ誰?」 カリスマドッグトレーナー三蔵(笑)。 お題ページ |