「夕方のグラウンド」で登場人物が「泣き出す」、「手袋」という単語を使ったお話を考えて下さい。






「コイツは預かってるだけで、俺の犬じゃねえし」
たまたま悟浄が預かっていた犬の躾がなってないと、三蔵が指摘した時悟浄はそう答えた。
「だからお前はソイツにナメられるんだ。自分の犬じゃないから適当に世話しときゃ良い、そう思ってんのが犬にバレてんだよ。 動物ってのはこっちが思ってる以上に敏感だし利口なもんだ」

そう言って三蔵は悟浄がバイトで散歩を請け負っていた噛み癖のある犬を強引に躾直し、 その躾が終わる頃に悟浄は漸く三蔵が知る人ぞ知るカリスマドッグトレーナーである事を知ったのだった。


悟浄にとって犬はあくまでバイトで預かるものであった。
だから散歩コースもその日の気分次第で変えていたし、 散歩の時間も飼い主の希望に合わせたものであったり自分の起床時間にあわせたりとまちまちで、 その所為であろう、結構地元の人間には知られた存在であった三蔵と、 「飼い主にしか懐かない」と飼い主である本人は言っていたがそれどころじゃねえだろう、 と突っ込まずにいられないような可愛いだけが取り柄の躾のなってない茶色の子犬を散歩させていた日まで出会った事がなかったのは。



「あんた、結構有名なんだな」
知らなかったぜ、と某CMのおとうさんに似た雑種犬のリードを三蔵から受け取りながら悟浄が呟いた。
元はと言えばこの犬だって、飼い主が家にいない時間帯はひっきりなしに昼夜問わず鳴き続ける、 しかも飼い主の言う事はちゃんと聞くので飼い主本人だけが問題を把握していなかった近所では結構有名な迷惑犬だった。
それがどうだろう。
たかだか数日間の三蔵の躾のお陰でこの犬はもう「あのバカ犬が」と蔑まれる事は無いだろう。
夕方の河川敷。
草野球のチームがそろそろグラウンドから撤収を始めるような微妙に腹の減る時間帯。
悟浄にとっては未だ冷え込みが耐えられないと言う程の時間でもないのに手袋を嵌め、 もこもこのマフラーをしっかり巻いた三蔵が寒そうに震えているのが気になった。
「俺、あんたに払うような金ねえよ」
「あ・・・?」
「だから、あんたに犬の躾なんか頼んだらすげえ金額になるんだろ?」
あー、困った困った、そう言いながら悟浄はちっとも困っているようには見えなかった。
それはそうだろう、預かっていた犬にがぶがぶ脚に噛みつかれながらも全く気にしていないようであった悟浄に、 三蔵から一方的に犬を躾け直すのだと言い出し、今の今まで金額の事は一度も言い出していないのだ、 商売云々で三蔵があの時声を掛けて来たのではない事は分かっている。
「俺は別に金が欲しくて言った訳じゃ」
「はは、分かってるって。でもさ、いつもこんな事してもらってんだから礼の一つもさせてよ」
そう言った自分の声に、下心は混じっていなかった筈だ、悟浄はそう思うのだが三蔵の連れている大型犬がまるで牽制するかのように大きな声でワンと吠えた。 悟浄の手に渡った雑種犬が大人しくなったのと交代するかのように。
本当に、動物と言うのは吃驚する程利口なもんだと悟浄は密かに感心した。






ドッグトレーナー三蔵の続き。 「泣く」お題は苦手なのですが犬に鳴いて貰いました・・・あ、字が違う?



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