深夜番組
モラルが皮肉に打ちのめされて消えた 純情は君だけの為においてある
点けっ放しだったTVから聞こえてくる音で目が覚めた。
三蔵と悟空が仕事帰りとかで急に押し掛けて来たのが夜の入りの頃。
今日中に長安の寺院に帰るつもりだったらしいが何やら面倒ごとがあって遅くなったとか。
んな突然押し掛けられたって困る。文句の一つも言おうと思ったが。
「サルに飯を食わせてやってくれ」
「三蔵も何か食べませんか?」
お人好しの八戒の問い掛けに
「俺は良い」
答えた顔が少し青白かったので。
「来る時は前もって言っとけって」
本当にただの一言の文句だけにしておいてやった。
サルと三蔵にベッドを譲ってやって、俺様は居間のソファで寝る事になった訳だがTVを見ているうちに寝てしまったらしい。
時計を見ると夜中の1時過ぎ。
サルと飼い主はもう寝ている頃だろう。
幾らサルが小柄だとは言え成人女性程度のでかさはある。そしてそれなりに長身の三蔵と。
シングルベッドで寝るには絶対きつい筈なのに大人しく一つの布団で寝る事を了承したヤツ等がちょっと気色悪い。
分かってんのかねあいつ等。
大人が一つのベッドで寝るって言ったらもっと色っぽいシチュエーションでなきゃいかんだろうが。いや、片方は未成年だが。
マニュアル片手に明日も罪を犯そう 純情が君だけの為に消えていく
リモコンが手の届く所に無かったのでTVの歌番組を何とはなしに眺める。
手はハイライトに伸びる。リモコンと違い煙草はいつも手の届く所にある。
画面からは髪を薄茶に染めたヴォーカルの声が流れて来る。
ライトの当たり加減では金色に見えない事もないその色を眺めているうちに三蔵の事を思い出した。
つい数時間前の事だ。
「三蔵、お風呂出来ましたよ」
大食いのサルの為に慌てて食事をこさえて飼い主にはコーヒーを炒れてやりその間に風呂の支度をして笑顔で一番風呂を勧める。
八戒。お前お人好し過ぎるって。
三蔵は八戒の保護観察官であると同時に身元引き受け人であり、その他にも色々・・・まあ色々あって。
八戒が三蔵に思う所があるのは分かっているが。
当たり前の顔して一番風呂使いやがって。てめぇウチ来てから一度も「ありがとう」とか「済まない」とか言ってねぇだろ。
内心の腹立ちを抑えて(ホラ、俺って寛大だから)ビールを飲みながら見たくもないTVなんぞを見ていると三蔵が風呂から上がって来た。
驚いた事に三蔵はジーンズだけ履いた上半身裸と言う姿だった。バスタオルを肩に掛けてはいたが。
普段の「完全防備」と言わんばかりの法衣姿しか見た事が無かったので一瞬ぎょっとしたがサルが何も言わない所を見ると風呂上がりのいつもスタイルなのだろう。
悟空から視線を三蔵に再び戻した時、先程何故野郎の裸如きに驚いたのか分かった。
「てめっ、怪我・・・!」
凭れ掛かっていたソファから慌てて身を起こす。
「してねえ」
面倒くさげに三蔵が答えた。
してるじゃん、言おうとしたが確かに今日訪れた三蔵の法衣には破れや汚れなど無かった。
もう一度三蔵を見てみる。風呂上がりでうっすら赤く上気した肌に、そこだけ色の変わらない侭の幾つもの傷跡。
落ち着いて見ると確かに昨日今日出来たものではないようだ。
・・・それにしても。
「じろじろ見るんじゃねえよ」
ケッ、と聞こえてきそうな勢いで三蔵が吐き捨てる。
「何だよその傷」
「てめえには関係ねえ」
「心配してやってんだろが」
「頼んでねえ。サル、風呂空いたぞ」
「ふぁーい・・・」
腹一杯飯を食って眠くなったのだろう、ぼんやりと、それでもきちんと悟空が返事するのを聞いて話を一方的に打ち切った三蔵は居間から出て行ってしまった。
「何だよもー・・・」
酷え傷。八戒の腹の傷のように未だ肉の赤みと盛り上がりを残した生々しい痕では無くて。
でも一生残りそうな傷が幾つも。
居間を出て行く時に向けられた背中にもバスタオルの下からでかい刀傷が見えた。
「三蔵法師様はマゾ?」
なんつって。
デタラメに咲く向日葵の花を咲かせてみよう「Ride on rollin' life!!」
デタラメに咲く向日葵は決して太陽を見ない「Ride on rollin' lies!!」
傷があるから可哀相とか、傷が無いヤツは平穏な一生を送っているに違いないとかそういう事は思わないが。
それにしてもあれだけ傷だらけで顔はキレイな侭って言うのが凄い。
顔だけは必死に守ってんじゃねぇの・・・。
無意識に頬の傷に触れながら苦笑する。
言うつもりが無いのなら無理に聞き出したりはしない。けど。
気になってしまったのだ。
「教えてくれたって良いじゃんよ」
自分だってこの頬の傷の事を訊かれても誰彼構わず教えたりはしないのだが。
勝手だな。
「勝手でも良いじゃん」
なあ。
「さんぞー」
デタラメに咲く向日葵の種をどこに植えよう?「Ride on rollin' life!!」
デタラメな君 デタラメな僕が愛してみよう「Ride on rollin' lies!!」
take it"EZ"!!
返事の帰って来ないTV画面に向かって俺は小さく呟いた。