手を繋ぐ
「何も背中向けて寝る事ないじゃん」
向けられた背中に後ろから腕を回して抱き締めようとする。
「うるせえ」
ぺしっ
面倒くさそうな返答と共に払いのけられる手。
「ねーってば」
「しつこい」
白いシーツの上に横たわる背中にちょっかいを出し続けているうちに振り払う手の力が弱くなって来た。
「ねー?」
「・・・・・・」
「さんぞー?」
「・・・・・・」


こ、これはいけるかも・・・。
今日こそはアレを。
そろそろと三蔵の肩に回そうとしていた腕を下ろし口も閉じる。


静止すること数分。
「ん・・・」
小さく三蔵が身じろぎをした。
眠ったかな?
そうっと身体を起こして顔を覗き込もうとした時三蔵がもぞもぞと動き出した。
「三蔵?」
「・・・風呂」
ああ、今日も駄目だったか・・・。
ぺたりと裸足の脚を床に下ろし三蔵がベッドから出て行った。ぱたりと浴室のドアが閉められる音に続き浴槽に湯を張る音。
「はあ・・・」
上半身を起こしハイライトに火を点ける。
俺の願いはそんなに大それたものでは無い。

えっちの後余韻を感じた侭朝まで一緒に眠りたい。

それだけだ。
だがささやかなこの願いがあろう事か三蔵相手には一度も叶えられた事が無い。
三蔵はヤった後必ず風呂に入る。必ずだ。しかもシャワーでは無い。ちゃんと手間暇掛けて浴槽に湯を張るのだ。
躰に残る名残を徹底的に洗い流さないとイヤだと言われているようで結構辛い。 一度だけでも良いから情後にその侭眠りに落ちて欲しいのだ。
厭がるのを無理矢理抱き締めて眠った事もあるが朝目が覚めたら抱え込んで寝た筈の腕の中はカラッポ!!
三蔵は隣のベッドで寝間着の単衣をきっちり着込んで寝ていた。 夜中に腕の中から抜け出して風呂に入りわざわざ隣のベッドで寝ていたのだ。あれにはかなり傷付いた。


・・・ああ?風呂場に追っかけてかねーのかって?
やった事はある。だがしかしラブホの風呂と違ってただの宿屋の風呂だ。 二人部屋とは言っても泊まった二人が一緒に風呂に入る事を想定していない風呂だ。 狭かったとも。二人一緒に湯船に浸かれねえのに「二人でお風呂v」と言うシチュエーションは全然楽しく無かった。 楽しかったのは頭を洗った事位だ。(←楽しかったんですね・・・)
髪を乾かしてやるのも好きだ。金色の髪がドライヤーの風に吹かれてふわふわ流れるのは見ていて飽きない。 ただし乾かし過ぎるとヒヨコの羽のようにほわほわになってしまうので注意が必要だ。 自分の髪質とは違う事を忘れていて初めての時はこれで翌朝怒られた。 髪がふわっとなった三蔵は常より幼く見えて可愛くて良いと俺は思うケド。 ああ、思い出した。そう言ったら殴られたんだ。
ドライヤーは程々にしてうつらうつらして来た三蔵に軽くキス。
然し部屋に戻った三蔵はあろう事か俺と別のベッドで寝ると主張する。
「手前みたいな大男と一緒に寝たら狭いだろうが」
と言うのが三蔵の主張だ。
一緒に寝る寝ないの一悶着の後無理矢理三蔵の寝ているベッドに潜り込む。


・・・と言うのがフルセットだが風呂場が狭い時は三蔵が風呂から上がるまで待つ。 待って強引に抱え込んで寝ないと三蔵は一人で別のベッドで眠ってしまうからだ。 然し三蔵は長風呂だしTVも無い部屋では退屈凌ぎになるものも無いし八戒達の部屋にちょっかい出しに行く時間でも無いし。
久し振りの柔らかいベッドの上。睡魔に屈しそうになる。

さんぞーまだかなまだかなさんぞー・・・眠・・・。

何時の間にか横になっている自分に気が付き飛び起きる。時計を見ればまだ先程から20分しか経っていない。 ぼけっと上半身を起こして待ってみたが浴室から聞こえて来る水音はまだ止まない。
ああ、もう寝ちまえっ。
布団を引っ被って再び横になると浴室の壁に鈍く反響する水音が柔らかく聞こえて来る心地良さに眠りに引き込まれた。




不意に指先に暖かいものが触れて来て意識が覚醒する。
「フテ寝してんじゃねえよ」
「・・・んあ?」
寝惚ける目に蛍光灯の光が痛かったが何とか瞼を持ち上げてみれば手に触れているのは三蔵の指だった。 風呂から上がったばかりなのだろう、単衣を着込んだ三蔵の手は常よりもほこほこと暖かい。
「腕出してたら冷えるだろうが」
三蔵の手が布団からはみ出ていた俺の腕を取り掛布団の下に押し込んで来た。
「優しいねえ」
布団の下から抜け出そうとする三蔵の指を素早く握り返す。
「離せ」
「やだ」
クスクス笑いながら掌を握る指に力を込める。力強く引っ張れば三蔵は体勢を崩しベッドの上に転がった。
「てめ・・・っ」
文句を言いかける口を自分の唇で塞ぐ。啄むように何度も口付ければ三蔵は呆れた顔をして力を抜いた。
「狭いだろうが。もう少し端へ寄れ」
布団をめくり上げもぞもぞと三蔵が潜り込んで来るので同じようにもぞもぞと体を動かしてスペースを作る。 適当な処に納まってから再度布団の下で指を絡め合う。
「あったかいな」
「風呂上がりだからな」
「風呂入ってなくてごめんな」
「全くだ」
戯れのような口付けを繰り返した後互いの胸元に顔を埋めるようにして眠りに落ちた。


鼻先に掠る乾ききっていない金髪からシャンプーの香り。
本当は風呂上がりの三蔵もイヤじゃない。

ラブラブ過ぎて書いてる方が恥ずかしい。

参考:「蝉の死骸」。悟浄さんはすげー幸せそうですよ!!

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