Qualm Breaker
ああ、この眼だ、と思う。
いつもきっちり視線を合わせて来るのに時折、 顔は確かにこちらに向けているのに何か違うものを見ているかのような微妙に焦点のずれた処を見ている。 例えば俺に先祖の背後霊が憑いているのだと、俺のじーさんだかばーさんだかを見ているのだとでも言われたら納得してしまいそうな。
視線は違う処を向いているのに、それでもそんな時の三蔵は全てを見通しているかのような少し神がかった、 とでも言うか神秘的な空気を帯びている。
俺の家族の事なんて三蔵は知りもしないのだから、俺が「俺のウチは幸せ家族だ」と言ってしまえば、 興信所にでも行って調査しない限り三蔵にとっての俺の家族は俺の偽りのフィルタを通し、 平穏無事な家族であると言う偽りのデータで固定される。
俺と言うフィルタを通さなければ知り得ない情報ならば、聞く側は一応は俺の話が真実であると言う前提で話を聞かなければならない。 例えそれが偽りであったとしても、嘘もつき通せば何時か真実になる。
実の母は子供の頃に亡くなっていて、なんとビックリ親父にはオフクロの他に正妻がいて、 なんて本当の事を言う必要もないし、俺が本当の事を言わなければ本当の事を知っているのは俺一人、 俺が本当の事を言ってないと知っているのも俺一人、の筈なのだ。普通に考えれば。 まあどうせ吐く嘘だったら「親父はアラブの石油成金でオフクロはその10何番目かの愛人で」 な如何にも法螺っぽい嘘の方が余計な詮索されないだろうとは思うケド。



滅茶苦茶に抱いていると言う自覚はあった、初めて三蔵の膚に触れたその日。
けれどどうしても止められなくて幾度精液を放っても屹立してくるそれで繰り返し繰り返し、悲鳴のような嬌声を上げる三蔵を貫いた。 骨の上に皮膚が張り付いているだけ、とでも言うか、触れる事を、目の前に晒す事を夢見ていた三蔵の裸身は頼りない程痩せていて、 指を這わせてみれば案の定掌の下に硬い骨の当たる感触があった。それでも飽きず全身を撫で回し離れる事のないようきつく抱き締めて。 三蔵の腹も脚も汗とそれ以外のものでべしょべしょに濡れて、 それでも三蔵は壮絶に綺麗で何故だか泣きたくなったが泣く代わりに三蔵の性器を指で扱き上げて射精に導いて無理矢理一緒にイった。
漸く体を離してみれば我ながら何やってんだか、と言いたくなる程に全身が怠く、 三蔵の隣にごろりと寝そべると、切れ切れの息の中、三蔵には父も母もない事、否、いないのではなく知らないのだと明かした。
一瞬、掛ける言葉が見付からなくて煙草を探す為伸ばした指先が中空で止まった。
三蔵はそんな俺をちらりと瞳だけを動かして見た。
それから、少し眼を細めて何かを探っているのとも違う、然し俺自身を見てはいない眼をした。
隠すつもりはなかったが、俺が隠す気になれば幾らでも真実は隠し通せるのだと言う確固たる自信がぺしゃんこに潰れた。
俺が三蔵から離れる事が出来ないと思ったのはこの瞬間だった。
嘘で塗り固めた自我を完膚無きまでに叩き壊されたその時にこの人から目を離す事の出来ない自分を思い知った。
秘め事を暴かれるのが嬉しいなんて、俺は本当にどうかしている。
射抜かれるような視線に欲情する。
100題プラスチック爆弾から続いている話。
古いファイル発掘・・・何だろうコレ、もう少し膨らませられる何かがあるんだけど何を目指していたのか思い出せないのでこの侭で。

novel−パラレル