evert
誰でも良かった。暖かい寝床で眠れさえすれば。
柔らかい腕の持ち主達は勿論俺に寝床を提供すんのには人肌が恋しかっただとか単に若い男に興味があったとかそれなりに理由があって、
だから、勿論俺はその見返りに女達の要求を満たしてやってきた。
それなりに気持ち良かったし後腐れのない関係は楽チンで心地良いものだった。
カラダを提供する代わりに差し出される柔らかい腕、柔らかい寝床。セックスなんてただの対価に過ぎなかった。
ずっとずっと気になって、それでも手が出せないで何ヶ月もメシだの茶だの理由を付けて誘い出して、
なんて面倒な手順を踏んだのは後にも先にもたった一人きりだった。
人を好きになると言うのはこういう事かと初めて知った。
「おいっ!?」
床に倒れゆく三蔵の腕をひっ掴み何とかその躯を捉える。両腕で抱え込んでみても三蔵は瞼を開ける事はなかった。
指で触れてみた頬が冷たい。
抱え上げてベッドまで運び法衣を脱がせて寝間着に着替えさせてやっても小さく呻くばかりで三蔵は眼を覚まさない。
青白い頬を見下ろしながら自虐の念に陥る。
この人の事を大切だと思っていた筈なのに。
尊い三蔵法師様だとか最高僧だとか、そんな事に関係なくこの人の事が特別で。
いつも、何時でも守ってやりたいと思っていた筈なのに。
俺がしたのはサイテーの事だった。
媚薬を飲ませたのだ。酒に混ぜて、それとは知らせずに。
粗悪品だったのか体質に合わなかったのか、今にも倒れそうな足取りで洗面所へ駆け込み苦しげに嘔吐する姿を見て後悔した。
急激な体調の悪化は恐らく、間違いなく俺の仕込んだクスリの所為だった。
俺は一体三蔵に何を求めていたんだろう。気持ちを通じ合わせて抱き合うのにクスリなんか本当は必要じゃなかったんだ。
二人して裸でベッドに潜り込んでいてもいつ何時無粋な妖怪達に邪魔をされるか分からない過酷な旅だと言う事を忘れる程に乱れて滅茶苦茶淫らな姿を晒して欲しいだなんて、
なんて身勝手な醜い欲求。
俺だけを見て俺だけを欲しがって、俺が欲しいと、そう言って貰いたかった、
それは確かだが身も世もなく快楽に溺れるクスリなんかより三蔵自身が大切だと、浅く早い息を吐く姿を見て漸く気が付いた。
「ゴメンな・・・」
狭いベッドに潜り込み腕を回して抱きすくめた躯までもが冷えているに気付き、金糸に顔を埋めながら一人思う。
いつも散々三蔵にバカだバカだと言われその度にムカついて怒鳴り返してはいたが三蔵は正しかったのだと。
俺は本当に、バカだ。