競馬パラレルSS

こちらは「文字書きさんに100のお題」で書いていた競馬パラレルの、 BBS出張版SSの再録です。 競馬パラレルの53は健全が前提ですがもし二人がどうにかなる事があるのかな、 と考えたのがこのSSのそもそもの切っ掛けなので極稀に5×3ぽい描写もあります。


* * * その1 * * *

「三蔵ってさ、男のくせにすげー綺麗だよな」
唐突に発された言葉に三蔵がイヤそうに眉を顰めた。
「何だその「男のくせに」ってのは。むかつくヤツだな」
「あ、悪ぃ。でもさー・・・三蔵マジ美人だって。何つーか。見てるとこうさ・・・。そういうのってアリだと思う?」
「・・・男馬に馬っ気出す馬もいるんだからアリなんじゃねえの」
もじもじと、例えて言うなら「床に落ちてた馬券を拾ってみたら万馬券だったんだけどどうしたら良いかなあ」 と相談を持ちかけるかのように落ち着かなげに言う悟浄に、三蔵は煙草の煙を吐き出しながら驚くでもなく淡々と告げた。
「えっ、マジ?」
「知るか」
「いや、マジでアリ?」
三蔵の肩をがしっと掴みこそしなかったものの今すぐそうしてしまいたいとばかりに悟浄が身を乗り出して来る。
「・・・去年社台に行った時。○ラ○ワ○ダーが隣の放牧地にいるアドマイヤ○ガ見て馬っ気出してたんだよな・・・。 アレはかなりショックだった」
「えーと・・・さんぞー?」



競馬パラレルの悟浄は三蔵の事を意識してもそれ以上に進みそうもないのでもしそれ以上になるとしたら切っ掛けは?と思って書いてみた。 社台=社台SSです。「去年」は2003年時。この頃は社台にいて、シャトルもされてなくて、見学も出来たのです。




* * * その2 * * *

「喜多方ラーメン美味いよさすが福島だなっ」
ずるずると麺を啜りながら悟空が感嘆する。
悟浄と悟空に無理矢理連れて来られた開催最終日の福島競馬場。
通常競馬場内の軽食と言うものはそれなりの味でしか無いのだが、此処、福島競馬場では競馬場とは思えない程何もかもが美味かった。 三春駒人形焼き、出来たての柚餅子、そして種類豊富な地ビール。
青々とした芝生の上に広げたレジャーシートに座り黒ビールを手にふと天を仰げば視界を遮る物の何も無い広い空。 バックストレッチに目を遣れば背後には緑の生い茂った名前も知らない山が迫りとてもでは無いが競馬場にいるとは思えない光景だ。
何だか妙にくつろいでしまい「万馬券の宝庫」福島競馬場にいると言うのに馬券を買う気が起きない。


が、ピクニックモードは慌ただしく新聞を捲る音で断ち切られた。
「あー、まさか古馬混合戦で3歳馬が来るとは思わなかった!」
「あ、でも若くてぴちぴちの3歳の方が斤量が軽かったんだよ」
「本当だ・・・じゃあ次は狙うならぴちぴちだな」
「ぴちぴちで斤量軽いヤツだな」
「・・・ぴちぴちは止せ」



福島の障害コースは内馬場を横切る形で坂があるのですが上り坂がターフビジョンの影で見えなかった為馬が空中から走り降りて来るように見えて驚きました。
中山ではその逆の「馬が消える」バンケットが名物。





* * * その3 * * *

「シンボリクリスエス札幌記念回避だって」
「じゃあファインモーションは札幌記念、か・・・っ?」
「いや、ファインはその前のクイーンSだって」
「ああ?最強牝馬って言ったら札幌記念・・・んんっ・・・だ、ろうが」
「そんな事俺に言われても」



競馬パラレルの53がデキてたら。変わらない二人。こんな二人は単発で終わりました。今見ると懐かしいネタ。




* * * その4 * * *

「三蔵ってばしがないサラリーマンの俺と違って自営業だよな」
並んで煙草をふかしている時不意に悟浄が口を開いた。
「一応な」
「じゃあさ、馬主になれるんじゃねえの?地方競馬だったらさ」
「馬鹿言え。預託料は結構高えんだぞ」
「高崎のタマルファイターのタマルって何だか知ってる?「田丸うどん」のタマルなの。馬主うどん屋なんだよ」
「・・・・・・」
「うどん屋でも馬主になれるんだから一頭位だったらイケるんじゃないの?」
ふと三蔵は考えた。自分の持ち馬が競馬場を駆け抜ける姿を。三蔵が遠い眼をしたのを同意と受け取って悟浄が言葉を続ける。
「預けるとしたら船橋が良いよな(近いから)」
「船橋だったら石崎に乗ってもらえるしな」
船橋・・・と考えてから三蔵が口にしたのは船橋競馬場のリーディングジョッキーの名前。
「ああ!?船橋だったら左海だろ!?」
「ざけんな。船橋と言ったら石崎に決まってんだろ!」
「さ・か・い」
「い・し・ざ・き、だっ!」



「馬主だったら」シリーズ第一弾。 J●Aの馬主になるには資産チェックが厳しいらしいのですが地方は小金があれば馬主になれます。 そしてこれを書いた頃はまだ高崎競馬場がありました。




* * * その5 * * *

「馬主になったら有名人に会えるよな!」
「そんな事もねえだろう」
地方競馬如きで有名人に会える訳ねえだろ、三蔵は内心突っ込む。
「北島三郎とか」
「・・・地方競馬には来ねえだろう」
確かに北島三郎は地方にも持ち馬が沢山いるが確か地方で活躍している馬はいない筈だ。 重賞で勝ち負けと言うレベルの馬が走るのでもない限り忙しい芸能人が競馬場に足を運ぶ事は無いだろう。
「Dr.コパとか」
「・・・地方競馬には持ち馬がいないんじゃねえか?」
「叶姉妹とかっ」
「てめえで金稼いで中央の馬主になりゃあ良いだろうがっ!」



中央と言うのはJRA主催の「中央競馬」の事。それ以外の各地方自治体で主催している競馬を「地方競馬」と言います。 交流レースはありますがシステムは違います。前述の船橋競馬場も地方競馬。
叶姉妹は馬主ではなく重賞のプレゼンターとして何故かJRAによく招待されてます。





* * * その6 * * *

「馬を持つとしたらさ、やっぱ『南関のSS』ことアジュディケーティング産駒が良いよな」
「アジュディケーティングは種付料200万もするんだぞ。500万位出さないと買えねえんじゃねえか?」
「ステイゴールドは150万だぞ」
「ステイの子がダート走る訳ねえだろ」
血統を考えると格安とも言える値段だが馬自身生涯に一度しかダートを走っていないし、そもそもその一戦は競争中止だ。 ダート適正があるとは思えない。地方競馬は殆どの処がダートコースしか無い為、ダート適正のある馬を見極めなければならない。
「じゃあデュラブ」
「デュラブは70万か・・・」
デュラブは南関東で4冠を達成したトーシンブリザードの父だ。
「アブクマポーロ・・・ってオーナーブリーダーになる訳じゃないんだから」
真剣に血統を考え初めていた自分達に気が付き、我に返って悟浄が苦笑する。
「そうだな。血統も大事だが最後は馬を見て決めるもんだ」
「そうそう。でさ、ユートピアって何産駒だったっけ?」
「フォーティナイナー。378万もするから駄目だっつってんだろうが」



アブクマポーロは受胎50万、父クリスタルグリッターズ。
ダビスタっぽく。実際はセリの時は血統が重視されますのであまりマイナな血統の配合にすると売れ残ってしまいます。





* * * その7 * * *

「何だコレは?」
「あっ、えへへ・・・馬の名前考えてた」
「お前まだ俺に馬買わせる事諦めてねえのか・・・」
呆れたように言いながら三蔵が紙切れを取り上げる。
「『ラヴリーゴジョウ』『ステキナサンゾウ』・・・?」
「ま、まだ考え始めたばっかりだから!もっと良いのそのうち思い付くって!」
「く・・・くくく・・・てめえがここまでセンスがねえとは・・・」
(こいつ俺を笑い死にさせる気か)
肩を揺らして笑い続ける三蔵の背中に、得意げに悟浄が語り掛ける。
「因みにメジロベッカムの馬主はベッカムじゃなくてメジロだぜ?」
「知ってる」



アカイスイセイの馬主もシャアじゃないですよ(笑)




* * * その8 * * *

「テイエムオーシャンって前走も59kgだったんだな」
「ああ、そう言えば・・・牝馬で59kgもどうかと思うがな」
牝馬が59kgの斤量を背負う時。それは普通障害戦であり、牝馬が最軽量の59kgを背負う時に牡馬は63kgの斤量と言うバランスであり、 牝馬同士のレースで最重量59kgを背負う馬がいる傍ら同じ牝馬でありながら斤量52kgの馬がいるというのは珍しい事態だった。
「これからはテイエムオーシャンの事はオーシャン59って呼ぶわ」
「お前去年オーシャンがプラス38kgで札幌記念出走した後オーシャン+38って呼んでただろ・・・」



2003年クイーンSの後に。オースミハルカちゃんラヴ。




* * * その9 * * *

「府中がさ、改装になったじゃん」
J○AのHPからプリントしてきたらしいイベント情報一覧を手に悟浄が弾んだ声で話し掛ける。
「ああ」
「でさ、今の時期色々イベントあるんだよ。行かねえ?乗馬センターの試乗会、今の時期整理券700枚配布だってよ。 絶対乗れるし、運が良ければ誘導馬に乗れるかも」
誘導馬に乗れる、の言葉に三蔵は暫し眉根を寄せて考え込んだ。
府中こと東京競馬場の外れには乗馬センターがあり、そこの厩舎では乗馬用の馬を繋養している。
その多くは元競走馬のサラブレッドであり、中の数頭は競馬開催日には誘導馬としてレースに出走する馬を率いて観衆の前に姿を現す。 その馬達を時々、競馬ファンの為に「試乗会」と称してほんの僅かな距離ばかりを(係員が付きっきりで手綱を引く曳き馬スタイルだが) 一般人に乗せてくれる事もあるのだが、大抵は子供だけを対象として開かれる。 或いは大人が乗っても良い時もあるのだが本当に僅かな回数でしか無いし、配布される整理券は微少なものであり、 大人が乗馬センターの馬に乗る機会など滅多に無いと言って良い。



『運が良ければ誘導馬に乗れる』と言ったのは自分だった。
運が良くない場合。と言うか大抵の試乗会の時提供される馬はそれであるのだが。
三蔵が乗っているのはポニーだった。
ポニーと言ってもアラブ種程度の大きさのあるものであってミニチュアポニーでは無い。
そして、自分は今サラブレッドに乗っている。元競走馬のれっきとした血統を持つ誘導馬だ。
無駄肉の無いすらりとした肢体、細く長い脚。
『ああ、俺って今白馬に乗った王子サマってヤツ?』
なんつって。



悟浄が乗ってるのはエイシンシャーマン。府中の試乗は鐙無し・鞍だけで乗って手綱は係員が持って曳きます。




* * * その10 * * *

「イエイイエーイ」
・・・・・阿呆だ。と思う。
ポニー(少なくとも自分はポニーだった)試乗が終わり、 降りた処には恐らくファンの為であろうがジョッキーの勝負服やゴーグルやステッキが置いてあった。 複数置いてある処を見るとファンが自由に手に取ってみたり、あるいは着てみても良いものなのだろう。
「着るか?(笑)」
冗談のつもりで尋ねてみると。
「あ、うん」
・・・悟浄はいそいそと勝負服を羽織り始めた。
白とピンクのストライプのアエロフォームの勝負服。 ジョッキーと言う職業の人間は基本的に小柄な人間が大井、もとい多い。日本では。 平均身長を大分上回る悟浄がそんな服を着るとかなりパツパツであるが本人はいたく満足したらしい。 ヘルメットを被り、カメラ付き携帯を差し出して来た。
「撮ってv」
「・・・ああ」
ステッキを手にポーズを決める悟浄を見て、二度とこいつとはここには来ないと誓った。



かなり天然。





壁紙の馬は京都競馬場の誘導馬マイネルモンスター。

競馬SS2



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