競馬パラレルSS その2



* * * その11 * * *

「♪ ホットシークレットのホットなシークレットはっ
とっちゃってるコトなのさ ♪
シークレットだけどホントは皆が知ってるのさ
だってホットシーは天皇賞出られないから ♪」
マークシートを塗り潰しながら悟浄が適当な音階で適当な歌を歌っている。
「・・・ソレあんまりじゃねえか?」



天皇賞に出走出来るのは牡馬・牝馬だけでセン馬は出走出来ないのです。




* * * その12 * * *

「インテリパワーって戦闘ものの掛け声みたいじゃねえ?」
「・・・そうか?」
インテリパワーと言うのは馬の名前だ。現在は笠松競馬場の所属となっている。
「ほら、何とかパワーメイクアーップ!って」
「知らねえよ」
「へーんしん!インテリパワー!っつー感じするじゃん」
「しねえよ。インテリパワーで変身するならマキバスナイパーはゴルゴか?ああ?」
阿呆のようなポーズを取る悟浄に『このバカが』と言う意味を込めて眼を細めてにじり寄る。
「あ、そっか。マキバスナイパービーム!!ってカンジ?」
「スナイパーがビームかよ!!」



札幌競馬場にいたポニーはゴルゴと言う名前でポニーながら馬車(子供用)曳いてました。流石ゴルゴ。




* * * その13 * * *

「新潟に行こう」
突然悟浄が言った。
「はあ?」
「朝の7時の新幹線だと格安で行けるのよ。9時には着くし日帰りオッケだろ?アイビスサマーダッシュ生で見たいだろ?」
だろ?だろ?と畳みかけるように言う、その手には既に新幹線チケット。
オイオイ・・・。
「じゃっ、当日新幹線ホームで集合な」


そう、言った当人がまだ姿を現さない東京駅、朝の6時55分。
「・・・悟浄来ないな。まさか寝坊してたりして」
停車中の車内で既に弁当を広げている悟空が窓の外を見ながら言う。
「・・・電話して来る」
ホームに出て携帯を取り出し電話すると意外な事にワンコールで出た。
「おい、今何処だ」
「あ、悪ぃ・・・今起きたとこ」
「な・・・っ」
どう足掻いた所で間に合う訳無いので置いていくしかないに決まっている。 勿論遠慮なく置いて行くが人を強引に誘い出しておいてそれはあんまりではないだろうか。 絶句していると背後から肩を叩かれた。
「・・・なんちゃって」
携帯から聞こえて来るのと同じ音声が振り返った先のにやけ面の赤い髪の男の口から零れて来る。
「・・・こ・・・っのクソ河童ーッ!!」



夏の新潟名物アイビスサマーダッシュは直線1,000mを快速自慢達が50秒台で走るスリリングなレースです。 目の前を70km/hの速度で馬が走り抜けてとても迫力があります。




* * * その14 * * *

東京競馬場改装により長期に渡り中山競馬場で代替開催が行われていた時の事だ。
「なーんかさ、毎週毎週毎週毎週中山っつーのも良い加減飽きたよな。マンネリっつうか。 府中の直線500mだからこそ追い比べが迫力あるんであって、小回りの中山じゃ、さ」
「折角のGIも盛り上がらない、か?」
「そーそー。そんな感じ・・・中山探索でもしねえ?」
「今更探索する場所があると思うか」
「うーんと、グルメツアーとか。中山っつったらコレ!みたいな食い物って言うとさ・・・」
「・・・紫アイス」
「ああ、ソレソレ」


「コレ紫っつうだけで味は普通なんだな」
「そうだな」
普通と言うか普通以下だ。ソフトクリーム独特のミルクの味さえ殆どしないと言うか薄味と言うか。
「他に中山ならコレ!っつうもんってさ・・・」
「モカソフト」
「・・・いや、もうアイスは良いよ・・・」
「モカソフトはな、実は真ん中は身が入ってねえんだ」
「えっ、そうなの?」


「持った瞬間妙に軽いと思ったら本っ当にこれ中入ってないんだな」
ぺろぺろと外側を舌で舐め崩すといきなり目の前に空洞が現れる。美味い事は美味いが騙されているような気がする。
「まあな」
「えーと、他に中山ならコレ!っつうもんってさ・・・」
「地ビールじゃねえか?」
「いや、冷たいもんは・・・三蔵はモカソフト喰わなかったからそんな冷えてないだろうけどさ」
「俺は喰った事あるからな」
「三蔵実はここの飲食店詳しい?」
「そんな事ねえよ。ピルスナーとブラウンエール。両方ロングサイズで」
「三蔵・・・どうして二つ頼んでんのかなー?」
「奢りだ。遠慮すんな」
「・・・・・・」

真冬のGI、フェブラリーステークスの日の出来事だった。



現在は競馬場限定レアメニューと言ったら吉牛ではないでしょうか。 競馬場内売店の牛丼は国産牛使ってるそうです。




* * * その15 * * *

「満月の日は万馬券がよく出るって知ってるか?」
「・・・・・・」
昨年の暮れに、来年用、つまり今年のカレンダーが発売されていた頃の事だ。 旧暦カレンダーが競馬ファンに人気なのだと新聞の記事で読んだ。
どんなギャンブル親父が買ってるのかと呆れたものだったが。
・・・成程こういうヤツが買ってたのか・・・。
返事しないでいると悟浄は携帯用の折り畳み式開催日程表(無料配布)をポケットから取り出した。
「今月の満月の日は大井開催。丁度良いな。満月見ながら三連単で100万馬券ゲットだぜ!」
「・・・三連複でさえ100万馬券当てた事無いヤツが三連単だからって急に100万獲れる訳ないだろ」
「あっ、クソ、100万馬券獲った事ないのは三蔵だって一緒なのになんでそういう事言うかな」
「・・・(怒)余計なお世話だ」




100万と言わず10万馬券獲ってみたいです。




* * * その16 * * *

「三蔵ってさ、今では新潟(競馬場)まで行くようになったけど、初めて会った頃は府中でさえ遠くてイヤだなんて言ってたよな(笑)」
「ああ、それはな・・・。昔、俺に競馬を教えてくれた近所の爺ぃに何回か府中に連れて行かれた事があってな」
「・・・むさしのドリーム?」
「むさしのドリームだ」
頷きこそしなかったが間髪入れず三蔵が答える。
「そいつは典型的な予想上手の馬券下手というヤツでな。 掲示板に載ってる馬全部持ってるのに1−2着の馬連だけ持ってなかったり、 予想だけして「なんちゃって」と言って買わなかったのが万馬券だったり」
「・・・そういうヒトっているよな」
「そんな訳で帰りの電車で延々一日の反省点を聞かされてな・・・それ以来府中に行くのがイヤになった」
「・・・あ〜それは確かにキツいかも・・・で、その爺さんは今どうしてるワケ?」
「誰が爺いだよ」
突然背後から声を掛けてきた黒髪の男に見覚えは無かった。
「てめえだよ、朱泱」
煙草の煙を長く吐き出しながら三蔵がその朱泱と言う男に答える。



朱泱さん登場(笑) むさしのドリームと言うのは武蔵野線です。中山と府中が一本で繋がってるのですが一時間以上かかります。




* * * その17 * * *

「俺はこの馬とこの馬だな」
朱泱と言う男が差したのは印の一つも打たれていない馬同士の激人気薄の組み合わせ。
「他は?」
「いや、これだけだ」
馬連一点買いか。
そう、思ったのだがいざ馬券を買いに行く段になっても朱泱はマークシートを手にしなかった。
「まだ来たばっかりだからこのレースはケンにしとくわ」
そう言って朱泱は新聞をめくり次のレースの検討を始めた。

その、朱泱の選んだ人気薄の組み合わせで10万馬券が出たのはその10分後の事だった・・・。



可哀相な朱泱さん。そしてモデルは私・・・。




* * * その18 * * *

「あー、オレこの馬軸な」
大声で朱泱が言うと、隣から三蔵がぼそりと囁いた。
「朱泱が軸にする馬を買え」
「え・・・っ。だっておっさんの狙ってる馬誰もダンゴ打ってねえし印だって殆どないじゃんよ」
三蔵の台詞に朱泱の手にした新聞を覗き込んで、赤ペンでぐりぐり印の付けてある馬を見て答える。
「いいからヤツの軸馬から流せ。それと朱泱が切った馬は絶対買え」
「・・・え?」
朱泱の真似をして買えと言ってみたり、切った馬が買いだと言ってみたり、三蔵の言う事は良く分からない。
「だから!ヤツは人気ないのに激走する馬を見付けるカンが並外れて鋭いんだ。そのクセ一番人気の馬は平気で切っちまう」
「なあに内緒話してんだ?」
ぽん、と肩を叩かれると三蔵は俺に寄せていた顔をふいと背けた。
「何でもねえよ。あんたは買い目決まったか?」
「ああ、俺はこいつが軸だ」
「・・・武豊の馬は買わないのか」
「ああ、俺ああいう馬はあんまり好きじゃないからな」
ふぅん、と気のない返事をする三蔵の横顔を盗み見る限り先程言ったように「朱泱の切った馬が買い」
と狙っているようながっついた気配は感じられない。



結局。朱泱の狙った馬は人気薄ながらも先頭でゴール板を走り抜け、2着は然し一番人気の馬だった。 馬単で買っていた人間はともかく馬連で買っていた人間には悪くない結果だろう。
「あーもー・・・狙いは良かったんだけどな」
「総流しで買っておけば良かったじゃねえか」
レース後新聞を見直して初めてその2着の馬が一番人気だと気が付いたらしい朱泱に(マジかよオッサン!)と俺は内心でツッコミを入れた。 一見「残念だったな」とでも言うような優しい台詞を吐く三蔵が、大笑いしたいのを無理に堪えているような顔をしているのを 「珍しいな」と思いながら眺めた。
次に三蔵が同じアドバイスをしてくれた時は素直に聞いとこうと、深く反省しながら。



ダンゴと言うのは「この馬が走りそう」と言う、競馬新聞についてる予想印の事。 可哀相な朱泱さん。そして私・・・。




* * * その19 * * *

「三蔵っ!レディブロンド(注1)がっ、レディブロンドがああっ!」
「連闘でスプリンター(注2)だろう。知ってる」
「レディブロンドがっ、」
「だから何だ」
「レディブロンドのタテガミが黒だって知ってたかっ!?」
「な・・・?」

注1・・・馬の名前。父シーキングザゴールド
注2・・・スプリンターズステークス芝1,200mGI@中山競馬場



レディブロンドの毛色を知った時の私の脳内会議。




* * * その20 * * *

「もう一回馬名しりとりやってみねえ?俺からな。テイエムオーシャン」
「・・・・・・」
「あ、わ、わりっ、も一回な。じゃあな、ファインモーション」
「死ね」




100題「鍵穴」後。





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壁紙は京都競馬場の誘導馬マヤノペトリュース。ミホノブルボン、ライスシャワーの同期でダービー3着。愛称は「ペト」。

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