HUSH and COOL
床の上に寝転がった侭視線を巡らせた先に広がっていた馬鹿馬鹿しいまでに突き抜けた青い空に死んでしまいたくなった。


養父は雲一つない真っ青に晴れた日が好きだった。
かき氷のシロップには絵の具を溶かし込んだ色にも似たブルーハワイを必ず選んだ。
ガキの頃からこまっしゃくれた口をきいた俺は「何でいつもブルーハワイなんですか」なんて訊ねたものだった。 言外に「大人がそんな子供っぽい色を選ぶのはおかしい」と匂わせて。
然し養父は生意気な俺の態度に決まって笑顔で答えたものだ。
「ハワイと言う言葉が良いじゃないですか。一度行ってみたいんですよねえ、ハワイ」
そして最後に必ず言った。
「大きくなったら一緒に行きましょうね」


どうしてあの時「大きくなったらなんて言わず今すぐ行こう」と言えなかったのだろう。 あんなに何度も彼が行ってみたいと言っていた場所だったのに。
小さな子供の頃から何となく自分が養父の本当の子供ではない事に気が付いていた。 だから血も繋がらない他人のガキの為にそこまでする必要は無いと、血も繋がらない俺が我が儘を言う訳にはいかないと思っていた。
だが、それが彼の望みであったなら、俺の我が儘の所為にしてでも彼の願いを叶えるべきだったのだ。 子供一人に留守を任せて一人で旅に出るなど出来る筈もないあの人の為に「今すぐ一緒に行こう」と。




固い床板の上で悟浄が俺の脚を抱えて何かの法則に則ったかのように規則正しく腰を動かすのに合わせて俺の口からも規則的に掠れた声が零れる。 まるで何かの機械のようだ。スイッチを押すと普段出ないような高い音階の音が出ます、壊れている訳ではありません。 スイッチは押し続けていないといけません。
頭の片隅でそんな醒めた事を考えながら喉は勝手に毀れた玩具の立てる最期の悲鳴にも似た細い声を上げる。 悟浄が短く呻いて熱い流れを勢い良く俺の中に吐き出すと俺の性器からも悟浄が吐き出したのと同じモノが吹き出して悟浄の腹を、 胸をべったりと濡らす。 次いで大きく息を吐いて悟浄が身体の中から抜け出ようとするのに腕を差し伸べて悟浄の上体を力を込めて掻き抱く。
「わ・・・っ、何?」
「俺から離れるな」
慌てたように言うのに耳元で囁いてやる。悟浄の唇に噛み付くように口付ける。 ゆっくりと舌を絡めると未だ俺の中に収まった侭だった悟浄自身が固さを取り戻して行くのが分かった。
「さんぞ・・・こんなトコじゃなく続きはベッドにしよ?」
「俺はここで平気だ」
「いやその、背中イタイでしょ?今は平気かも知んないケド後で痛くなるって」
逞しいその胸を俺の精液で白く汚した侭の悟浄がそう言うのに痛いのが良いのだ、 そう思ったが口にしたら変な誤解をされそうだったので渋々絡み付けていた腕を緩める。
「・・・っ」
唇を噛んで既に張り詰めかけている悟浄がずるりと抜け出る感覚に耐える。 ゆっくりと身を起こして立ち上がると悟浄が背後に回り込んだ。
「あ、ほら。背中赤くなってる」
「痛くはねえよ」
それは本当だった。感覚が昂ぶっているからか不思議としきりと悟浄が心配するような痛みは感じていなかった。 床に脱ぎ捨てた服もその侭に裸で寝室に向かい二人して歩いて行く。今更だが羞恥心も何もあったものではない。
先にベッドに倒れ込みシーツに顔を擦り付け息を吸い込むと煙草混じりの悟浄の匂いがした。
他に誰もいないのにドアを閉めてから少し遅れて悟浄がベッドに腰を降ろすと重みでマットレスが傾いた。
「来いよ」
顔をシーツに半ば埋めた侭で悟浄に向かい腕を伸ばす自分の口元が笑みを形作っていると、自分でも知っていた。
例えば服と言うものの役割は防寒であったり羞恥の現れであったり或いは防護を果たすものである。 殺意を以て刃物を突き立てられでもすれば別だろうが日常のちょっとした怪我などは意外な事にこの一枚の布を身に纏っている事に依って防げる場合も多い。 その鎧を取り払って完全に無防備な姿を晒す事に躊躇いは、無い。
カラダだけでなく、もっと奥底の弱い部分を見せる事も悟浄が相手だったら怖くは無い。



伸ばした腕の先、手のひらをシーツに押し付けるように体重を乗せられ痛みに一瞬顔を蹙める。 その手荒い扱いにいきなり続きから始めるのかと思ったが悟浄はやり直しとばかりにキスをして舌を絡めて丁寧に俺の身体に指を這わせる。
「ん・・・」
外気に晒され少し冷え始めた身体に自分のものより温度の高い指が触れると徐々に体温が上がって来る。 熱くなった膚に這い回る指は焦らすようにじっくりと固くなった乳首を指先でくどい程に押し潰す。
「あっ、あ・・・っ」
忙しなく息を吐いて身を捩り俺が望んでいるのはその先の行為なのだと強請る。 手を伸ばして触れた悟浄のものは固く熱く充分に濡れていた。
「早く・・・っ」

もっともっと、弱い自分に踏み入って欲しい。
もっと滅茶苦茶に踏み躙って欲しい。
だから俺は腕を伸ばして抱き寄せる。この優しい肉体を。
blueの続き。

タイトルはGUNIW TOOLSより。

novel−パラレル