傷と疵とアナタ




悟浄は俺の体に残る傷痕が気に入らないらしく傷の無い箇所に印を落としたがる。
「もう消えないのかなコレ・・・」
一人で旅をしていた頃の傷だと言う事は大分前に教えたがそれでも何かの折りにこうして言ってくる。
「痛かった?」
「さあな」
どれも致命傷では無かった。ただその頃は八戒のような便利な特技を持った者と一緒だった訳では無かったので痕が残った、それだけだ。
「コレはどうやって付いた傷」
10年近く経ち周りとは明らかに違う色に変わった、肌が上気してもそこだけは白い侭の皮膚。 見慣れてしまって自分では余程の事がない限り傷がある事さえ忘れているのだが悟浄は未だに気になるようだ。
「憶えてねえよ」
恐らく負傷した瞬間は痛みを感じたのかも知れないが、或いは痛みを感じる暇も無かったかそれすらも記憶に無く。 引きつれる事も無く綺麗な一直線に残った傷は刀傷だろうと推測する程度だ。
来る日も来る日も経文を探し妖怪や夜盗と殺し合いをしていた。 摩耗しきった心で旅をする中昨日と今日の区別が分からなくなっていた。分からなくても構わなかった。日付など意味の無い日々。

薄い皮膚にするりと指を這わせられると少し気持ち悪い。
良い加減にしろ、言ってやろうと思い悟浄の方を向くと悟浄の指が触れている左腕の古傷が目に入った。

「・・・それは、憶えている」
9年前叶に手当てされた箇所だ。先日再会する迄忘れていた全身黒の衣服を身に纏った人物。 9年と言う具体的な数字もあの時怪我を負った事もその事が無ければ思い出す事も無かっただろう。
「ああ、あのヒト・・・」
暫く経ってそう呟いてから悟浄が身を起こし顔を覗き込んで来るので視線を合わせてやる。 悟浄の動きに合わせてベッドがぎしりと音を立てる。
「あのヒトは、9年前の三蔵に会っている」
「だから何だ」
「どんなだった?9年前の三蔵」
珍しく真剣な顔してるから何かと思ったらそんな事か。
「叶サン写真とか撮ってたりしないよな?」
「当たり前だ」
写真撮りあうような間柄だったと思うか。それ以前に叶に限らず旅の途中一度も写真など撮った事は無かった。
「9年前って言うと14歳か。っかー!初々しくて良いオトシゴロじゃねえの!」
・・・アホ。
罵声を浴びせるのも莫迦莫迦しく、枕元に手を伸ばし煙草を掴む。
「そう言えば俺三蔵の写真一枚も持ってないな」
撮ってねえんだから持ってる訳ねえだろ。つーかあっても手前には渡さん。
「今度一緒にプリクラ撮ろv」
「アホ」
今度こそ言葉にして罵る。
「良いじゃんプリクラ位」
「良くねえ」
「そんで銃に貼るの」
莫迦じゃねえのか。
「ハリセンにも貼ってー」
だから撮らねえって言ってるだろ。
「俺も錫杖に貼るし。三蔵とのツーショ」
「・・・最悪だ」
何が最悪ってこいつの場合何処まで本気で言ってるのか分からない所だ。
「そ?」
笑ってんじゃねえよこのクソ河童。


ああ。
もう。
こいつは本当に救いようもなく。
莫迦だ。






ラッヴラヴ。叶さんネタ何時か書きたいです。叶さんと言うのは「螺旋の暦」(みさぎ聖様著・エニックス刊)に登場する方。
100題の深夜番組も傷ネタですが「三蔵はお肌綺麗説」もありますが三蔵は一人旅時代に怪我沢山してるような気が。 そして怪我したら傷は残るもんだと。 「傷とアナタとハリセンと」と言うタイトルにしようと思ったんですがそれだとギャグだとばれてしまうのでこの題に。


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