ever lasting
「男同士でこんな関係っつうのもオカシイし。何よりあんた尊い三蔵法師様だし、こんな事バレたらヤバイでしょ」
そう言われてしまったら引く事しか出来なかった。
「そうだな」
同意するしか出来ない。悟浄は何もおかしい事を言っている訳ではない。
男同士で抱き合うなんておかしい。自然の摂理に反している。それはその通りだ。
望んで得た訳ではない三蔵の地位だが「最高僧」が男と付き合ってると知れれば確かに俺の地位も地に落ちるがそれ以上に 半妖であり「禁忌の子」である悟浄が世間から受ける誹りの方が大きい。 俺は世間的に抹殺されるだけで済むかも知れないが悟浄は確実に私刑に遭い密かにその生命を終わらせるような事態に陥るであろう事は想像に難くない。
一方的にどかどかと俺の所に押し掛けて来ては街中へ連れ出されるうちに始まった関係は、 だから悟浄から一方的に終わりを告げられても俺には他に言う言葉は無い。 「そうだな」と短く同意してやる事しか出来ない。 最悪の場合を想定して悟浄を退けておくべきは俺の方だったのにそんな事を考えようともせずぬくぬくと色事に溺れていたのは俺の非だ。

けたたましく乗り込んで来た悟空と憂い無く騒がしくじゃれ合う姿を見れば悟浄の中で先程の話はもう終わった事が分かった。 悟浄の中では俺との事はもう終わっているのだと分かった。
みっともなく縋って引き留めたりはしない。誰かに依存するなど、俺の事を何とも思っていないヤツに心を砕くなど死んでもゴメンだった。


終わったのだ。
だから、忘れようと思った。


ハリセンで撃退された赤河童が部屋を出て行った後悟空に西に行く事になったと告げた。
「西?」
「天竺だ」
「・・・ってドコ?」
きょとんと訊ねる悟空の無知を責める事は出来ない、 何しろだだっ広い桃源郷の西の果て天竺に行き着いて尚且つ戻って来た者など今迄に数える程しかいないのだ。 己が生まれた街を出る事も無い侭、桃源郷の首都である長安の街を話に聞くだけで見る事も無い侭一生を終えて行く者も多い中、 天竺が何処にあるかなど知らないのが普通だし、天竺と言う国の存在を知らない者も多い。 描いて記してやろうかとも一瞬思ったが旅の支度として近々地図を買う事になるだろうと思い至りその時に教えれば良いと思って止めた。
「近いうちに出発するから必要なモンを用意しておけ」
そう言って掌に金を落としてやると猿も西行きの同行者として附いて行くのだと合点したらしく満面の笑みを浮かべて勢い良く部屋を飛び出て行った。


猿も河童もいなくなり漸く静かになった部屋で煙草を取り出した。
八戒はどうだか分からないが悟浄は西へは同行しないかも知れない。 旅ともなれば四六時中、否一日中顔を付き合わせている事になるのだ。 別れた相手と否が応でも一日一緒なんてヤツも気詰まりだろう、そう思ったのだがもう終わった関係の事をあいつがどうこう思う筈が無かったと思い直す。
意識し過ぎている。
自意識過剰なてめえが無様だと思いながら煙草を銜えた。



数時間の後帰って来た悟空が得意そうに披露してみせたのは奇態な服だった。
「見てくれよ、コレッ!ずっと買いたいって思ってたんだっ!」
アホのようにその場でくるりと回って見せたのは、肩の処に妙ちきりんな飾りの付いた短いマント。 精一杯好意的に解釈すれば肩当てと思えない事も無いなにがしかの動物の牙の形にも似たおかしな飾りが肩からはみ出ていた。 白い五分袖のシャツの上から真っ赤な腹掛け(にしか見えない布)、そして更にその上から襷掛けになった無意味な革ベルト。 白いジーンズといつも履いているものより底の厚い歩き易そうな靴は赦す。 然し妙なデザインの足首を締め付けるように巻いてある飾りは一体何だ。


眩暈がした。
人の渡した金で何てモノを買い込んで来やがる。 こいつ一人で買い物に行かせるんじゃなかったと深く溜息を吐いてから顔を上げると人の気も知らず脳天気に悟空は笑った。
「旅に出るんならそれなりのモン買わなくちゃ」
何処までも脳天気なその台詞に思わず泣けてきそうになる。俺はそんな阿呆な事をこいつに吹き込んだ覚えは無い。
「遠足に行くんじゃねえんだぞ」
「分かってるよっ、そんなの」
いいや絶対分かっちゃいねえ。
このどうしようもないバカ猿と一緒だったら悟浄の事を思い出している閑なんてありゃしねえな、 そんな事をほんの少しだけ苦く思った。
ever luster三蔵視点バージョン。

この後旅に出る日に悟浄、八戒の服を見て悟空の服のヘンなのは「こいつらが犯人か!!!」 と思うもののもし八戒のセンスだったらと思うと「ヘンな服」と言い出せない三蔵様。

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