Merry
約束を重ねて行く。毎年一つずつ。
好きでもないケーキ。大して美味くもなさそうな脂でぎっとりしたチキン。それから美味い酒。
ごそごそと袋から取り出しては一つずつテーブルの上に並べる。八戒のように豪勢な料理が作れる訳でもないので他には特別な事はしない。
メシを炊いてスープを作って、
彩りの良い野菜を大量に茹でて最近気に入っている粗挽きナッツ入りのドレッシングをかければ温野菜のサラダの出来上がり。
魚を焼いてこれもまた色味の良いパプリカを切ってサラダ用の玉葱を切ってレモン汁と醤油を掛ける。
メシの支度を済ませてテレビを何となく見ていると三蔵が帰って来る。
案の定、俺の買って来たケーキに三蔵はイヤそうに眉を顰める。
甘いモンは嫌いじゃないクセにあんこ系しか好きじゃない三蔵は、
この寒空に店の前でケーキを売り捌いている気の毒なバイトを見ても心動かされる事は無かったらしく、
つうかそもそもクリスマスは自分とは関係のない行事だと思っているのだろう、手ぶらで帰って来た。
「ケーキは俺が用意しとくから」
なんて言っておいた訳じゃなかったから万が一三蔵が何かの気まぐれを起こしてケーキを買って帰って来たら、
明日には残りもののケーキの箱を下げて八戒の処を訊ねなくてはいけない処だった。
勿論、食うのは八戒じゃなく喰えるもんなら何でも良いあのお猿ちゃんだ。
フルートグラスなんて洒落たモンはないので普通のワイングラスに冷えたシャンパンを注ぐ。
ぷくぷくとグラスの底から真っ直ぐに立ち上って行く威勢の良い泡の行方など気に留めもしない三蔵が無言でグラスに手を伸ばして煽ろうとするのを
「まーまー、待て待て」と制止する。
「何だ」
待てと言われて素直にグラスを宙に浮かせた侭、然し三蔵が不機嫌そうに訊ねる。
「来年も一緒に過ごせると良いな」
言って、乾杯とばかりにグラスを差し出せばグラスを合わせてカチリと良い音をさせる事なく三蔵は素っ気なくグラスを口元に運ぶ。
「ただのスパークリングワインじゃなくてシャンパンなんだから味わって飲めよ」
「うるせえ」
ぶっきらぼうに言う三蔵は、先程俺の言った台詞は完全に無視するつもりらしい。
だけど構わない。
来年も一緒に居たいと繰り返す俺の台詞に三蔵は一度も答えた事が無い。
それが単に面倒くさいからなのか、一年先の事を約束する自信が無いからなのかは分からない。
毎年訊ねた事は無いし、自分と同じ答えを強請った事も無い。
それでもちゃんとこうして一緒に過ごしているのだ。
だから俺は今年も一人で約束を重ねる。
来年もまた一緒に、と。