カケラ。
満ち足りていた。
足りなかったパズルのピースがぱちりと音を立てて嵌ったかのようだった。
緩く出し入れしてやるともっと、もっとと言って自ら腰を動かして俺を深い処へ誘う。
白い喉を反らして両腕で俺の頚に掴まるかのようにしがみついて来る。
強く抱き付かれ過ぎて動き難いのだが腕を緩めろと言う事はせず腰だけを動かす。
俺自身を包み込む三蔵の肉壁が俺の動きに合わせて擦れて動く。
気持ち良いのか苦痛なのか三蔵はひたすら俺の名前を繰り返し呼ぶ。悟浄、悟浄と。
溺れる者が藁をも掴む敬虔さにも似た必死さで、一緒に溺れようと言わんばかりに一層しがみつく腕に力を込めて繰り返し呼ぶ。
東京駅で新幹線を降り外回りの山手線に乗り一駅先に「じゃあな」と言おうとしていたのに開いたドアの前で思わず三蔵の腕を掴んで引きずり降ろした。
三蔵は驚いたように一瞬きょとんと目を見開いたが次の瞬間先に立って駅の階段に向かい歩き出した。
夜中に月明かりの下で煙草を吸う横顔を見た時からずっとこうして触れたかった。早く二人きりになりたかった。
こんな風に夢中になって誰かを欲しいと思う感情は知らなかった。
どんなに好きだと言われても何処か醒めていた俺にオンナノコ達は敏感だった。
クリスマスだ誕生日だと一通りマニュアルのように盛り上げてみても本当は相手なんか誰でも良いと思っていたし向こうもそのつもりだろうと思っていた。
イベント事はお互い楽しむ為の礼儀で単なるルールでしかなかった。
絶対本気になんかならなかったし相手にも本気になんかなって欲しくなかった。
でも何故かそれは俺だけが一方的に思っている事で最後には俺が不誠実だと言ってオンナノコ達は人目憚らず或いはひっそりと涙を流し、
そして終わりになった。
それでもその事を特に寂しいと思う事は無かった。空白の「カノジョ」の席は数ヶ月と空く事なくすぐに埋まったし。
簡単だった。
「今度お茶でも?」
が
「今度食事でも?」
になりそれで誘い出せればベタなカップルの完成だ。
恋愛ゴッコが出来て週末を一人で過ごす寂しい自分から逃れられてお互い気持ちイイ思いもして、
それで充分じゃないかと別れ話を切り出すオンナノコ達をいつも見知らぬ生き物を見るような思いで見ていた。
三蔵は欠けた部分がある事を俺の非のように責め、足りないピースは必ず埋まるのだと信じてその欠如を自らで埋める事で完全を成そうとした、
自分の中の空洞をカノジョ達で埋めようとしない俺を詰った女の子達とは違うのだと思った。
欠けた侭で良いのだと、大きな欠損を抱えた侭その欠損を彼自身の強みにも弱みにもする事の出来る三蔵に触れたかった。
どうしてこんなに欠けていて寂しいのだろう。三蔵と言う人は。
「二人で一対」である事を必死に望んでいた、
例えば欠けた球形を完全な円にしようとするかの如くカタチにだけこだわっていたオンナノコ達も、
完全な球形を作って「よくできました」と言われたかったのだと、
「よくできました」と言われる事で自分を補完したかったのだと、今となってみると分かる。三蔵と一緒にいると分かる。
不完全だったのは俺だけじゃない、彼女達もそうだったのだ。
例えば彼女達は欠損のある状態の自分をその侭で放り出してはおけないのだ。
誰かの為のカケラであると、お前はパズルの対だから、だから不要な存在ではないのだとそう言って自分を認めて欲しかったのだ。
俺を愛しているように見せてその実彼女達が俺に与えようとしていたのはゴリ押しの自己愛だった、だから上手くいかなかった。
そしてそんなコ達を手玉に取るように取っ替え引っ替えしていた俺は、確かに欠陥品なのだろう。
欠けていても良いんだと今だったらあの子達にも言ってやれたのに。
熱くて熱くてどうしようもなく苦しかった。
同じ男なのに性器をカラダの中に突っ込まれて滅茶苦茶に突き上げられている三蔵の方こそ苦しい筈なのに貪っている筈の俺の方が苦しかった。
ぱたぱたと音を立てて三蔵の躯の上に汗が落ちるがうっすらと紅潮した白い膚の上にも汗が浮かんでいるからすぐに玉の汗は混じり合ってどちらのものか分からなくなる。
ワケの分からない、言葉になっていない言葉を吐き出しながら三蔵の鎖骨に歯を立てる。
薄い皮膚が破れて口内に血の味が広がるから舌を這わせて汗と一緒に舐め取って。
ああ、ああと悲鳴のような嬌声を上げながら三蔵が俺を締め付ける。
互いの汗が混じり合って一緒になって俺のカラダも三蔵に包み込まれて互いの区別が付かないくらいに一つになって気持ち良過ぎておかしくなってしまいそうだ。
頭の中、脳内までを三蔵に侵されてより深い快楽を求めてその両脚を抱え上げてがくがくと揺さぶると内奥が心地良く俺に絡み付くから堪える事なく精液をその中に流し込んで。
随分乱暴に抱いたと気が付いたのは全てを三蔵の中に吐き出した後だった。
俺の下で荒く息を吐ききつく目を閉じた侭の三蔵の姿に我に返る。
頬を撫でてごめんと言おうとした俺より先に三蔵が腕を伸ばし俺の頬を包み込んだ。
「・・・どうして泣いている」