sugar time




「イヤだ」
首筋に唇を埋めると三蔵が緩く頚を打ち振るが気にも留めずちゅ、と音を立てて尚も口付ける。
「よせ・・・やめろ、っ、悟浄」
肌の上をくすぐるように揺れている俺の髪をきつく指に絡めて引いて三蔵が繰り返す。 イヤだと重ねて言われ無理強い出来る程には生憎と俺は手前勝手ではなかった。つうかマジ痛エよ。
「ナニ。どしたの」
昂まりかけた熱を無理矢理抑え込み未だ寝間着を脱がせきってもいない三蔵の躯の横に両肘を付いて体を離しながら訊ねる。
「眠い」
「・・・・・・・・・・・・」
『俺は眠くない』と答えかけたのを意思の力で押し留め三蔵の次の言葉を待つ間沈黙が訪れる。
俺はシたいんだけど。
力づくでコトに持ち込む事は出来る。人間と妖怪(半妖だけど)の力の差を以てすればそれは簡単な事だ。 けどそんな事したら明日以降警戒されてしまうし。 ううむ、と尚も言葉に出さない侭考え込んでいると言いたい事を言って気が済んだとばかりに三蔵はごろりと背中を向ける形で横になろうとした。
「待て・・・っ?」
三蔵の肩を掴もうとした手は高い音を立てて鋭く振り払われた。
「てめえは眠くなくても俺は眠いんだよ」
その容赦のなさに一瞬ムッとしたがぎりぎりと睨み上げて来る三蔵の目の下にはここ数日の疲れと睡眠不足から成るくっきりとした隈。
「ハイ・・・」
こればっかりは仕方ねえかなと聞き分けの良い俺は渋々と身体を離す。
普段から偉そうにジープの座席にふんぞり返って、 てめえの荷物さえ滅多に自分で持つ事もしない三蔵だがその傲岸不遜の態度とは裏腹に俺達4人の中で一番体力が無いのは人間である三蔵だ。
体力に余裕のある時であれば野宿の時でも応じてくれる三蔵が駄目っつってるんだから本当に駄目なのだろう。
気持ちが俺に向かってない時に「そんなもん始めちまえばどうにでもなる」と軽く考えて行為に及んだ事も何度かはあるが、 そんな時は三蔵は苦行のように眉間に皺を寄せているだけで全然、ちっとも、これっぽっちも気持ちヨクなんかなさそうで、 触ってやればどうしても反応してしまうトコロだけは反応してくれるものの三蔵自身はまるっきりうわの空で、 暖かくて柔らかい肉襞の中に突っ込んでる俺の方は一応カラダは満足するが正直かなり後味が悪かった。


三蔵に聞こえない程度に小さく溜息を吐きながらベッドを降りる。 こんな時間に宿を出るのも面倒だったので備え付けの冷蔵庫のビールを取り出した。 何時から入ってたんだか確かめるのもコワイようなそれは放置されていた歳月に相応しくキンキンに冷えている。
毛布をわざとらしくきつくカラダに巻き付け直す三蔵の姿を見ながらプルタブを引く。
健康な成人男子が曲がりなりにもオツキアイしてる相手と二人きりの部屋で酒なんか飲んでるのにそんな風に寝ちゃって良いのかね、と思う。
襲っちまうぞ畜生。
と、思うのは心の中だけで実際には駄目だと言われりゃあ大人しく引き下がる訳だ。要するに骨抜きだ。この俺とした事が何てザマだ。
苦々しく思いながらもう一本缶を取り出す。
冷たい液体を一気に咽に流し込みながらいっそクスリでも飲ませてしまおうかとも思う。そう、例えば酒にでも混ぜて。
そうしたら「抱いてくれ」とでも言って俺に縋ったりするのだろうか。 自ら衣服を剥いで昂ぶった己を見せ付けて。焦らしたら俺の目の前で自分のモノに指を這わせたりするのだろうか。 可愛い声で啼いて「もっと、もっと」とか言って俺を煽るのだろうか。

・・・いいかも知れない。

思わず手の中の中身の残っているアルミ缶を握り潰してしまいそうになり慌てて残りを捨てるのと大差ない勢いで煽る。
そうと決まれば善は急げ。次の街に着いたらちょろっと別行動して楽しくなるクスリを手に入れなくては。
そう思うとこのオアズケまでもが何かのプレイのように思えて来るから不思議だ。
待っててねさんちゃんv
声には出さず呟いて俺は部屋の灯りを落とした。






続く

閉架書庫 kitori様によるネタのダブリを楽しむ企画「歓迎光臨」に参加させて頂いた時の作品その1。 私の選んだテーマは「無理矢理v」「媚薬、焦らし」です。背景はラナンキュラスなんですが見る影もない。



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