優しく
「あ、ああッ」
自分のモノとは思えない切羽詰まった声が零れる。
一度腰を引いた悟浄がその侭その熱を引き抜くつもりなど無くて、
腰を引いた勢いの侭再度自分の中を穿つつもりなのだと分かっていて尚俺は逃げ出す事をしない。
何で、女でもないのに男としてのその部分を体内に呑み込んでいるのか。
女でもあるまいし悟浄の固く熱いそれが自分の体内に呑み込まれて行くのか。分からないながらも体温は上がり続ける。
苦しい程高まった体温は、だが決して不快ではない。
頚を反らした時に目に入った時計の文字盤を時刻と捕らえる迄に数秒のタイムラグがある。
それ程までに自分の思考は鈍くなっていて、と、客観的に捕らえはするがそれも無理の無い事だろう。
何時の間にか日付が変わっていた。そんな筈は無いのにと思いながらぼんやりと今迄の行為を思い返そうとする。
「ッ、ああああああっ!」
予想した通り勢いを付けて身体の奥底まで突き入れられたそれに止む事の無い悲鳴が上がる。
二人してベッドに転がり込んだのは何時頃だったかと思い出そうとするが思考が纏まらない。
「ん、あ・・・」
息をつこうと口を開けば勝手に荒い息と共に声が零れる。
「三蔵、苦しい?」
今更何を言ってやがると思ったものの言葉にはしないで瞼を閉じてただ頚を振る。
苦痛、だけではなくて。
ゆっくりと悟浄が動きを再開すると繋がっている脚の間からはぐちゃぐちゃといやらしい音が聞こえて来る。
その、音を聞きたくなくて声を立て必死に頚を打ち振る。
長い髪を揺らして上体を動かす悟浄は限界が近いらしく何かを堪える表情をしている。
ぐ、と再び悟浄が俺の中を抉る。
決して苦痛だけではなくて。
「アア・・・ッ」
びくりと身体が跳ね上がる、と同時に躯の中に熱いものが堰を切ったように注ぎ込まれた。
「う、う、アア」
愚か者のように意味ある言葉を発する事無く快楽に身を委ねる。
毀れたCDプレーヤーのように何度も。飽く事無く週末毎に繰り返される行為。
毀れた機械から零れる音ならば厭うている筈の繰り返しを、然し俺は嫌ってはいない。
それどころかもっと、もっと、何度も。
幾度繰り返されても飽きる事が無いのを不思議に思う。
小さく笑えば悟浄が「どうした?」と言ってくしゃりと髪を撫でる。
一番好きなのはこの掌だ。
何度も、何度でも。この手に優しく触れられるのは心地が良いと思う。
初めて寝た時もそうだった。乱暴に、だが俺を傷付けたくはないのだと惑いを含みながら強く腕を掴まれた。
その手の優しさに息が止まりそうになった。
どうして、こんな俺になんかそんなに優しく触れて来るのかと思ったら苦しくて死にそうになった。
どうせ死んでしまうのだったら幾らでも悟浄の好きなようにさせてやろうと、そう思ったのだ、あの時。
結局その後俺は死ぬ事もなく(当たり前と言えば当たり前だ)こうして今以て悟浄との関係を続けている。
だが今でも悟浄に触れられる度に何故だか胸が苦しくなる。
この気持ちをどう言葉にしたら良いのか分からない。
分からないので言葉にはせずただ微笑んだ。