|
声
どさりとその侭ベッドの上に身を横たえられてしつこい程に口内を貪られる。 「ん、ううっ」 抵抗しようとするのだが悟浄が左手に持った侭の煙草が気になって動く事が出来ない。 「・・・煙草・・・」 仕方なく躯から力を抜いて抵抗を止めると漸く抑え付けられる力が緩んだのでそう告げる。 「ん?ああ」 気が付いたように悟浄が灰皿に手を伸ばして煙草を揉み消す。 煙草を手放して俺の視界をひらと横切って戻って来た悟浄の指には小さく火傷が出来ていたが悟浄は気にする事もなくその指で俺の頬を撫でた。 そして再度優しく口付けられる。 「ばか、離せ・・・っ」 こんな事で騙されてなんかやらない。 唇から逃れようと必死に首を振ると両手で頬を包まれた。ぴったりと隙間無く押し付けられる唇に呼吸が苦しくなってくる。 酸素が足りなくなってきた所為で力の入らなくなってきた腕を伸ばして河童の髪を鷲掴みにして引っ張る。 「イテっ」 やっと唇が離れた。良い加減しつっこいんだよお前は。 「三蔵。ちゃんと言うから聞けよ」 荒く息を吐いていると悟浄は懲りずに身を寄せ耳元で囁いた。 「あんたは俺と別れたいかも知れないけど俺はこんな事じゃ別れない。 一緒に長安に戻ろう。そんでまだきちんと言った事なかったけど。一緒に暮らそう」 告げられた言葉の意味を理解するのには数秒を要した。 「・・・・・・バ・・・ッ」 莫迦にするな。肝心の言葉を言わないのはどっちだ。その言葉を口にしていないと、本当はこいつも分かっていたのだと、 そう言う事だ。 確信犯のクセに俺の前で仕事とは言え朝帰りを繰り返しては口紅やらキスマークやらを俺に平然と見せ付けていた訳だ。 「・・・俺を莫迦にすんのがそんなに面白えのか?」 ふるふると怒りのあまり身体が震え出す。 「ふざけんなこのクソ河童があああっ!死ねッ!死にやがれッ!」 「ちょ・・・待って三蔵何で怒るのっ!」 繰り出した拳は掌で受け止められた。 「そんな言葉で俺が簡単にオチると思うなっ!いいから黙って死ねっ!」 必死に振り解こうとするが悟浄の力は強く、手が離される事は無い。 ベッドの上に横になっている体勢が不利で今度は脚を使っての反撃が出来ない。 掴んだ両腕をシーツの上に張り付けるように押し広げられて抵抗を封じられた格好になる。 「掃除も洗濯も、あんたそんな事してくれなくって良いんだってば!仕事だってあんたがイヤなら辞めるからっ」 そんな事言われても信じられない。 「嘘吐けっ」 その場凌ぎの言い逃れは嘘を吐かれるよりも始末が悪い。 此処まで安っぽいヤツだったのかこいつは。そしてそんな言葉で言いくるめられる程安い人間だと思われているのかと情けなく思う。 「本当です。っつうかゴメン、ほんとは休みもらったんじゃなくてもう辞めたッ!」 「・・・・・・何?」 自分を貶めているとばかり思っていた悟浄の口から零れた思いがけない言葉にぽかんと口を開ける。 今、何て・・・? 「本当だからな。たった一月かそこらで仕事辞めたなんて言ったらあんたにケーベツされると思ったから休み貰ったって言ったけど」 「・・・何で・・・」 「甲斐性なくてごめんなっ」 俺の腕を漸く離し両手を顔の前で合わせて頭を下げられた。 「いや、そうじゃなくて何でお前・・・」 「だって今の仕事じゃ全然三蔵と一緒にいられないじゃん」 ぷいと拗ねたように顔を背ける悟浄がガキのように頬を膨らませて言う。 信じらんねえ。 「お前、何でそんな事で・・・」 俺の言葉を仕事を辞めた事に対する咎めだと思って済まながっている姿も俺には理解出来ない。 「そんな事じゃねえよ。少しでもあんたと居る時間増やしたくて長安に引っ越したのにこれじゃ本末転倒じゃん」 「・・・・・・。」 嘘だ。と思った。俺に、そんな事をされるだけの価値は無い。 俺は、こいつの為だけに何かを棄てる事なんて出来ない。 これも俺を騙す為の手管なのかと思う。 だが、俺はこんな風に悟浄に対して思い遣りを見せた事があっただろうか。喪わない為に、何かした事があっただろうか。 どうしよう。 信じて良いのか。 「信じてよ」 俺の心中の言葉が聞こえたかのように顔を背けた俺の耳元で声が落とされる。 こいつの事を信じ切れない気持ちは、まだある。 「甲斐性ナシが・・・」 信じ切れないながらも然し目を閉じて、吐き出した息と共に小さく呟いて力を抜いた。 浴衣をはだけられると直ぐ様悟浄の手に体中を撫で回された。胸元をねっとりと舐め上げられるのと同時に下腹部に触れられる。 「ん・・・っ」 「こおゆうことすんのも久し振りだよな」 つつ、と指がゆっくりとそれを撫で上げる。 久し振りでも男としてどうしても感じてしまうその器官に触れられるとイヤでも反応してしまう。 そうしている間も口での愛撫が止む事は無く首筋をきつく吸い上げられる。 同じようにしてやろうと思って腕を絡めて悟浄の頭を抱き寄せて首筋に顔を埋めるが重力に逆らう事無く降って来るような赤い髪が邪魔で唇が首に上手く触れる事が出来ない。 「ははっ。くすぐってー」 むっとしたので髪が口に入るのも構わずに噛み付いた。 「うわ・・・っ?」 驚いてはみせるものの悟浄の笑いが止む事は無い。代わりに、お返しとばかりに下肢に強く指を絡められた。 「・・・・・・っ」 その刺激にひく、と息を呑む。 「三蔵、綺麗」 へらと目元を緩めて笑う顔が上から見下ろしている。 「・・・っ、見るな」 顔を背けて腕で覆うがすぐに腕は掴み取られて顔の上から退かされる。 「長安戻ったらさ、もっとこおゆうコトしような?」 「何を・・・」 顔を近付けて臆面も無く告げられるのに顔を顰める。 「折角誰に遠慮する必要も無くなったのに同じ時間に家にいたコトなんか殆ど無かったし」 それは、半分は俺の所為でもあるかも知れないが半分はてめえの所為だろうが。 ゆるゆると性器を擦り上げられて脚を閉じようとすると脚の間に身体を割り込ませて膝を閉じられないようにされた。 「脚、閉じちゃダメだってば」 言いながら意地悪く刺激を与えられびくびくと脚が震える。 「顔見せて」 そう言って小さく口付けた後悟浄が指を後口にずるりと滑り込ませる。 「い・・・、っ」 「久し振りだから辛いよな?」 「う、・・・」 分かってんなら無茶苦茶するな。 荒く息を吐いて悲鳴を上げそうになるのを堪えるが無意識のうちに逃げようと頚を一杯に反らして強く、目を閉じる。 一度奥まで入れられた指は引き抜かれ、浅い処だけを弄っている。 「寂しかったりした?」 「・・・んな訳・・・」 「俺は寂しかったな、三蔵とこんな事全然出来なくて」 ちゅ、と音を立てて胸元に口付けられる。 片手は相変わらず後肢をいやらしく弄くりまわし、空いている方の手は胸の飾りをきつく摘み上げる。 同時に何カ所をも触れられて躯の奥から沸き上がって来るざわざわした感覚にびくりと身体が撥ねる。 「う、あ・・・っ」 「三蔵、力抜いて・・・」 「は・・・あ」 ゆっくりと息を吐いてそろそろと悟浄の言葉に従うが力を抜いた側から後口を広げる指の動きが段々大きなものとなって来る。 追い立てられる刺激に身体が震え出す。 「本当は、三蔵が妬いてくれて嬉しかった」 シーツを固く掴んだ手を包み込むようにその上から悟浄が手のひらを乗せて握り込める。 「う・・・」 妬いてなんか、言おうとしたが自由な方の指を口に当てて黙って頚を打ち振る。 「声、殺しちゃダメ」 口元から指を引き剥がされる。注文の多いヤツだ。 「長安戻ったら、もっと二人で一緒にいるようにしような」 少し乱れた息と共に告げられ両脚を抱え上げられる。 「あ、あ!」 恥ずかしい事を言うなと、台詞は声にならなかった。 代わりに熱い固まりを呑み込みながら自分のものとは思えないような声を喉から零しながら、バカのように悟浄の言葉に従う。 手の続き。 私の処では三蔵が『「俺様ナンバーワン」ではない』と思っているというのが根底にあります。根暗。 いやでも原作の三蔵も根暗ですよね! 留守番に続く。 33題 |