熱〜悟浄バージョン
「あつい、な・・・」
そう言葉にしたのは、然し俺ではなかった。
暫し、離れる唇。肩で一つ息をついてからゆっくりと目を開く。
俺の目の前で悟浄が徐にバンダナを外し、次いでジャケットから腕を引き抜いて、脱いだばかりのそれを地面に落とし。それから。
「ナニしてやがる貴様っ!」
カチャカチャと金属音を立てて片手でベルトを外そうとする。
「いや、だってあちーんだもん・・・」
頬を紅潮させだらだらと汗を流しながらも一瞬悟浄が手を止める。
「脱ぐ程暑くはあるまい」
「脱いでねえって。ちょっと涼むだけ・・・」
そう言って、ベルトのバックルを外しジッパーに手を掛ける。
「だから、脱ぐなっつってんだろうがっ!!」
スパーン!!
「きゅう・・・」
ハリセンの一撃で悟浄が地面に沈み込む。
「・・・ったく・・・」
たかがハリセンを喰らっただけなのに嫌味ったらしくその場から動こうとしない悟浄の頭を靴裏で少しだけつついてみる。
「・・・・・・おい、わざとらしいんだよ」
触覚を踏み付けてみても尚も悟浄は起き上がらない。
「・・・・・・おい、クソ河童」
相変わらず地面を抱き締めたきりの悟浄のでかい図体を放っておいて八戒達のいる方へ踵を返しかけてもヤツは起き上がらない。
「・・・・・・おい?」
しゃがみ込んでそっと額に手を当ててみた。嫌な感じに熱い。
熱があんのか・・・?
仕方なしに自分よりも図体のでかい、自分よりも目方の重い相手の身体を抱え上げて野営地へ戻る。 どう考えてもこいつは俺より10kgかそこらは重い筈で、10kgと言えば砂糖、或いは塩10袋分だ。 あの陰湿眼鏡に遣いに出されて無茶な荷物を持たされているだけだと自分を騙しつつ奥歯を噛み締めてよろよろと脚を進める。





「それにしても良く気付きましたね、三蔵」
濡れタオルを横たわる悟浄の額に置きながら八戒が感心したように言う。
「突然脱ぎ始めりゃあ誰だっておかしいと思うだろうが」
「いえ、悟浄が酒の席で突然脱ぎ始める事なんて・・・」
言い差し、八戒が堪え兼ねたように肩を震わせて笑い始める。恐らく、途切れた台詞の後に続く筈だった言葉は「珍しくない」、だ。
・・・そうか、河童が突如ストリップを始めるのは普通なのか。つまり、ただ酔っているだけなのだろうか。 心配して損をした。
「あ、いえ・・・、悟浄の具合の悪いのに気付いて下さって有難うございます」
「酔ってるだけじゃねえのか・・・?」
「ええ、ホラ、触ってみて下さい。触覚が乾いてますし」
「・・・・・・」
何なんだ、そりゃ。
いやあ、三蔵は本当に頼りになりますね、八戒が言う傍らで悟空がしゃがみ込んで悟浄の触覚を指先でつつくのが見えた。




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