食事の後で「煙草」と言い捨てて木立の中を歩き出す。
「火事には気を付けてくださいよ」
と八戒の声が背中に掛けられる。それ程遠くにまで行くつもりはなかった。 ただ、いつもの喧噪に少し疲れている気がしたので喧しい同行者達から離れたいと思ったのだ。 今日は襲撃も受ける事もなかったし、今も妖怪の気配は感じない。それなのに、何故。
敵襲なんぞない方が良いに決まっている、然し攻撃される事に慣れてしまうと一日一度は襲撃を受けないと 「そろそろ来ないとおかしい」と変に先走って気を張ってしまう為だろうかと、 樹の葉の間から零れ落ちる月の光を見るとはなしに見ながら考えつつ煙を吐き出していると、 自分以外の人間が地面に落ちた小枝を踏み付ける音が聞こえて頚をそちらに向ける。



噛み付くような口付けの後、互いに頚を曲げて何度も角度を変えて貪り合う。
俺の後を追って来たのは妖怪ではなく、否、半分は妖怪ではあるが敵と言う意味ではなく、エロ河童だった。 ある意味妖怪よりもタチが悪いと思いつつそれでも俺は伸ばされた腕に抱き込まれる。
幾度も、濡れたような音が互いの口唇の間を行き来する。 ぬるぬるとぬめる舌が絡み合い、歯列をなぞり、或いは舌を吸われ、酸素が足りなくなって頭がクラクラする。 逃げようと頚を後ろに反らせば、俺を逃がす代わりに悟浄は力の抜けた身体を背後の大木に押し付ける。
「ん・・・」
木の根を足裏で踏み付けながら大木に凭れ掛かる俺の肩や背中を法衣の上からまさぐりながら悟浄が耳の下や首筋に唇を這わせる。
野宿の時にもこうして悟浄と抱き合う事は珍しい事ではなくなっていた。 然し、まだ悟空も八戒も起きている時間だ、よもや口付け以上の事はされるまいと目を閉じて考えながら、心地良い愛撫に身を委ねる。
火照る、身体。
「あつい、な・・・」






「あつい」と言ったのは?
悟浄三蔵

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