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競馬パラレルSS その7 * * * その61 * * * 「・・・そう言えば沙田競馬場に行った時。雲呑麺を喰おうと思ったんだが日本語の発音で雲呑麺と言ったら通じなくてな」 「へえ。雲呑って中国語じゃなかったの」 「いや、発音はともかくイントネーションがな・・・ワンタンと言わないと通じないんだ」 「ワンタン」 「そうだワンタンだ」 「ワンタン。ワンタン」 雲呑雲呑と連呼する二人を周りの人間が不思議そうに振り返っているが、二人の視線はパドック映像に釘付けで気が付かないのであった。 広東語で「麺」は「ミン」なので「ワンタンミン」で。 * * * その62 * * * 「さあ、約束通りターフィーと握手して貰うかんな」 子供達にたかられている頭のでかい馬の着ぐるみ、ターフィーを発見して悟浄が得意気に宣言する。 「・・・・・・待て。確かお前100万馬券獲るまでは俺の写真撮らない筈だったろうが」 「・・・・・・!!(そう言えばそんな事も言ったな)」 「・・・・・・」(←この条件だと「握手して証拠写真」の写真部分だけ不可で「握手」 は出来ると言う事に気が付いてないなと知りながら黙殺) 「・・・・・・クソ、じゃあ100万馬券獲ったら三蔵には大井の入り口に立ってる馬たせを持ち帰ってもらう! そんで三蔵の部屋で証拠写真だからな!」 「そりゃ犯罪だろうが!」 秋競馬が始まり、伸び伸びになっていた春競馬の終わりにした約束を果たす時がやって参りました (覚えていたんですね)。馬たせは大井競馬場のマスコットキャラクター30歳。 * * * その63 * * * 「そんで馬たせを椅子に座らせてビールでかんぱーいとかしてる寒いカンジのポーズ取ってもらうんだ」 「やらねえ、っつってんだろう!」 「うぐおっ!・・・げほ。ちょっと今のマジに入ったぞ!」 膝蹴りに身を折りながら悟浄が文句を言う。 「ピンピンしてんじゃねえか」 「大体なあ、ターフィーも駄目馬たせも駄目ってあんたね・・・!」 競馬新聞をハリセンのように折り畳んだもので殴られた事なら数回ある。 然し新聞でぶっ叩かれるのと蹴りを入れらえるのとでは勿論後者の方が断然痛い。 人に蹴りを入れておきながら平然と減らず口を叩く三蔵に、悟浄は思わず声を荒らげる。要するにムカッ腹が立ったのだ。 「うるせえこの河童!」 「あー、邪魔だ邪魔だ」 「にいちゃん達喧嘩は余所でやれよ」 「・・・スミマセン」 悟浄が長身を小さくして周りの競馬オヤジにぺこぺこ謝ってる間に三蔵は無言でフイと人混みの中に紛れてしまった。 喧嘩が起きても誰も止めない、馬券を買うのに邪魔にさえならなければ。 止めはしなくても馬券を買うのに邪魔である場合のみ周りからブーイングが起きる。 そんな不思議ワールド。 そこは中山競馬場。 馬たせと部屋でカンパーイって確か大井競馬場のカタログにあった写真・・・。 * * * その64 * * * その時三蔵は凄い事を考えていた。 「3連単3連単・・・」 「なあ聞いてるー?」 「ああ、良いんじゃないか」 「本当!?」 「あ!?」 ↓ ↓ ↓ 3連単先行発売の地札幌へ悟浄さんと二人でお出かけ。 初・泊まりがけ旅行。(いつものローカル遠征は日帰りなのです) 3連単CM。CMではさんまとユンソナ。 * * * その65 * * * 「三蔵っ!」 先をすたすた歩く三蔵を発見して悟浄は急いで走り寄った。 「・・・・・・」 「待てって!」 「・・・・・・」 「ちょ・・・無視すんなっての!」 「無理強いは止めなはれ」 伸ばした手を三蔵の肩に伸ばしかけた悟浄の手を掴んだのは純白の手袋を嵌めた腕。 「・・・・・・?」 耳慣れないイントネーションで紡ぎ出される言葉に不思議そうに三蔵が振り返る。 「お久し振りどす。三蔵はん」 にこりと笑う妙な形の帽子を被った男の髪は銀色。宗教関係者のような服装をしている。三蔵の実家は寺であると聞いていたので、 この、どうみても仏教系ではないものの宗教関係者っぽい人物は三蔵の知り合いなのだろうかと一瞬悟浄は思う。 「・・・・・・えっと、三蔵の知り合い?」 「知らん」 「いやですわ。うちの事忘れはったんですか?」 「忘れたも何も最初から知らん」 押し問答を続ける金髪と銀髪の二人を見ながら悟浄は何時『日本語お上手ですね』と言おうかと口を挟むタイミングを計っていた。 競馬パラレル新章突入(嘘)。 * * * その66 * * * 金髪に赤毛に銀髪と言うど派手な組み合わせの3人が立ち話をしていても特に人目を引く事がない、それが競馬場の凄い所だ。 皆一瞬はちらりと3人を横目で伺うが直ぐさま手にした新聞紙面の馬柱の方へと視線を戻す。 「三蔵はんはうちの事忘れてしもうたんどすな・・・」 しょんぼりと項垂れた後銀髪の男はヘイゼルと名乗った。 「あ、えっと。日本語お上手ですね」 悟浄の言葉を聞き流してヘイゼルは言葉を続けた。 「あれは忘れもしない第一回JBCの日の事でしたわ・・・」 あの日の大井は馬券買うのも10分待ち、軽食を買うのも5分待ちと言う混みようやった・・・。 「ビール2杯」 「あいよっ」 「ビール1杯お願いします」 「すみませんねえ。たった今売り切れちゃったんですよ」 「そんな・・・っ!」 売り切れと言う会話が聞こえてた筈なのに振り返りもせずに紙コップを二つ抱えて歩き去ったのが・・・ 「三蔵はんやった」 「「覚えてる訳ねえだろっ!」」 JBC=ジャパンブリーダーズカップです。ビールは駅かコンビニで買ってから入場すると良いですよ。 * * * その67 * * * 「さんぞー!」 ヘラヘラと笑いながら悟浄が差し出したのはペプシのペットボトル。・・・の中に何やら不気味な程青い液体が入っている。 「青インク・・・?」 何でこんなもんを、訝しげに眉を寄せると悟浄は勝ち誇ったように声を大きくした。 「知らない?青ペプシ」 「・・・ああ?」 「すげー探したんだぜコレ。ほら、この青いの」 「・・・ブルーハワイ」 「ちがくて!この青いのがコーラ」 「・・・嘘吐け」 「ほんとだって。面白いから見せようと思ってさ」 「コレ飲んだら舌が真っ青になりそうだな」 「言うと思った」 「どうなんだよ」 「知らない」 「知らないって・・・」 「折角だから一人で飲むより半分こしようと思って」 つまり、それは。俺にもこの青インクにしか見えない液体を飲めと言う事で。 競馬パラレル悟浄さんは新商品チェッカー。数量限定発売の青ペプシ、私は入手出来ませんでした。 * * * その68 * * * 「ほら、コレな。色が7つあるだけじゃなくて味も全部違うんだぜ」 そう言って悟浄は三蔵の掌にざらと小瓶の中身を零した。 「あ、それ烏龍な。どお?」 「・・・・・・午後ティー(無糖)の味がする」 「うそお」 「本当だ。甘い。若しくは中国系の処で買うペットボトルの茶の味だ」 「何で中国系って限定すんの」 「向こうのペットボトルの茶は甘い。香港行った時はジャスミン茶が甘くて驚いた」 「・・・・・・ふうん。あ、口直しに今度コレな」 「何だこりゃ。八つ橋の味だ、つうかニッキくせえ」 「・・・どの色?」 「コレだ」 「あー、そりゃシナモンだな。んじゃ今度コレ」 「ジンジャーか・・・つうかひやしあめだろコレ」 カラフルルを買った日。カラフルガムの事です。今も売ってるのかな。 * * * その69 * * * 「3連休の真ん中じゃねえか」 「何か予定あった?旅行とか」 「・・・何もねえよ!悪かったなっ!」 「いや別に悪くないって。だからさ・・・」 「セントライトで権利取った馬なんざ本番じゃ連にも絡まねえだろうが」 3歳牡馬クラシック戦最後の一つ、菊花賞。それに出走する為には充分な賞金を持っているか、 賞金の足りない馬はトライアルレースで上位3着までに入線しなくてはならない。 関東で行われる伝統的な菊花賞の為のトライアルレースを「セントライト記念」と言った。 「そうかも知れないけどコスモバルク見たいじゃん」 地方競馬であるホッカイドウ競馬出身のコスモバルク、 春のクラシック戦を賑わせた実力で言えば文句なしに菊花賞に出走出来る筈のその一頭も、 地方競馬所属馬であるが故にトライアルレースで権利取りをしなくてはいけない。 「本番に繋がらねえレースなんか見たってしようがねえだろ」 但し、問題はセントライト記念で菊花賞出走権を手にした馬は本番である菊花賞で滅多な事では上位に食い込まない。 「じゃあ19日空けとけよ〜」 「・・・人の話を聞け」 セントライトと菊花賞の説明がくどいんですがコレ書かないと競馬知らない方には意味不明だと思ったので。 * * * その70 * * * 「これから言う馬の名前当ててみて?ヒント。現役です。ホッカイドウ競馬所属です」 「・・・コスモバルク?」 「ブブー。次のヒントです。超良血で妹は今年の桜花賞馬です」 「・・・フラダンス?」 「惜しいーっ!次のヒント。セン馬です!」 「ああ?ちょっと待て・・・」 「降参?」 「・・・ク・・・ッ、良いから早く言え!」 「答えはエアギャングスター!」 「・・・!?まだ現役なのか!?セン馬!?ホッカイドウ所属!?」 「な。吃驚しただろ」 吃驚しました!!! 競馬SS6 写真は京都競馬場の誘導馬ロワールキャプテン@ナリタトップロード引退式。 競馬SS8 novel−競馬パラレル |