|
競馬パラレルSS その10 * * * その91 * * * もしもしコール編 「プリンセスゴールドって阪神ジュベナイルフィリーズ出ないみたいだな」 「熱発後体調が戻らないらしいぞ」 『ネッパツって何?』 『発熱の事だ』 『ヘンなのー発熱なら発熱って言えば良いのに』 携帯の向こうから、自分に向けて話しているのではない言葉、はっきり言って自分以外の誰かとの会話が聞こえて来る。 「なあ・・・そこ誰かいるのか?」 「悟空だ」 「てめっ、なんでそこに居んだよ!」 「いーじゃん別に居たって。三蔵が実家から貰った柿が余ったからって・・・」 今度は三蔵ではなく悟空が電話口に出た。 「えっ!牡蠣?」 「そんな豪勢なモンあったらサルになんざ分けねえよ」 『うわーひでえのっ!』 もしかしたら生牡蠣を手土産にしたら三蔵の家に上げてもらえるのではないかと受話器越しの会話を耳にしながらこっそり考える悟浄であった。 これが後に忘年会ネタへと発展して行くのでした。 * * * その92 * * * 発売締切5分前 「どーしよー!まだ買い目が決まんねーよ!」 馬体重の増減と、馬柱の印と、先程モニタで見たパドック映像と返し馬の映像とがめまぐるしく脳内を行き来する。 国内の馬達の力関係はともかく、未知数の外国からの招待馬の実力をどう計れば良いのだろう。 或いは、出身国で強くとも日本の馬場が合わない可能性、それ以前に海外からの輸送による体調の変動も可能性に入れておかねばならない。 「そんなに悩むならドンから適当に流しとけば良いだろうが」 「いやでも、ここ一番の大舞台でこのメンツって何よ!? もしかしてドンが国内ダート王なのってドンが強いんじゃなくて国内ダート路線のメンツが弱過ぎるってだけのことで、 外国馬があっさり勝っちゃうんじゃねえの?」 「そういう事もあるかもな」 「だろ?だってドンって海外遠征だけでなく国際競争勝ってないし!」 「だが今年来た外国馬が強いとは限らねえぞ」 「大丈夫!そんな事もあろうかと軸はマルガイでイーグルカフェ!」 「こら待て!」 2004年JCD&JD同日開催の日のJCD前。 * * * その93 * * * 発売締切4分前 「イーグルカフェ単勝千円!コレでどうだっ!ほーらつかまえてごらんなさー・・・なあちょっとアンタ止めてよ」 ばっばっと勢い良くマークシートに赤ペンで印を入れたものの、矢張り不安材料だってある。 単勝に突っ込むよりは馬連の方が、いや、ワイドにしておけば、 いやワイドってのは幾ら何でも弱気過ぎるだろう、3連複か?だとすると相手はどうする。 一頭はアドマイヤドンで良いにしてももう一頭が絞れない。 「お前が決めたんだったら止める必要はないだろう。イーグルカフェは2年前このレース勝ってるしな」 「イヤでもその時って中山開催だったし。イーグルカフェももうトシだし」 「早くしねえと窓口閉まるぞ」 「何かさ、もーちょっと引き留めて?こんな無謀な馬券買うなって言って」 「・・・鬱陶しいぞてめえ。とっとと買いに行きやがれ!」(蹴り) これもJCD@イーグルカフェラストラン。お疲れ様でした! * * * その94 * * * 発売締切5分前 「うわあっ!全然予想絞れねええっ!ホラさ、ロブロイってGI連勝出来る程信用出来ないと思わねえ?」 「落ち着け」 「でもさ、GI勝ってもいねえ3歳馬ばっかりってどーなってんだっ!これならやっぱりロブロイでも勝ちそうじゃねえ?」 「さっきと言ってる事が逆だぞ」 「だってっ!何でこんな勝ちきれないイマイチ勢揃いなんだよジャパンカップだっつうのに!目黒記念じゃねえんだぞ!」 「口より手を動かせ。間に合わねえぞ」 「あー、三蔵はもう買っちゃったんだよなー。あ、ナニそれ。ロブロイ外してんのにマグナーテン?」 「どの馬を買おうと勝手だろうがっ!」 そしてJC。三蔵様なんて無謀な買い方を・・・!!(人の事は言えない) * * * その95 * * * モニタ画面が切り替わり、阪神のメインレースが映し出されるのを食い入るように三蔵が眺めていた。 俺は、レースと、そんな三蔵の姿とをちらちらと交互に眺めていたのだ。 レースが終わってからも呆然としたようにモニタを見上げている三蔵を慰めなくては、と思う。 「なあ、オースミグラスワンさあ、一回レース使ったのに体重増えて来たな」 「そうだな」 「しかもどう見ても成長分じゃなくて体緩くて重いよな?」 「まあな」 「馬っつうより牛に近い体型だよな?」 「・・・まあな」 「最後の直線、腹が重くてスピード出ないみたいに見えたよな?」 「・・・・・・まあな」 「まあレースセンスは良いみたいだし、痩せたらもっと良いレースが出来るようになるよ」 ぽん。 その日のオースミグラスワンの馬体重は538kg。 この頃は前途揚々だったのですが・・・。 * * * その96 * * * 「・・・グラスワンダー似っつうことはさー」 「・・・何だ」 「暑いの苦手かもな。夏になると夏バテしてさ、そんで冬は冬で太りやすい訳じゃん?」 「もうてめえとはグラスワンダー産駒のレースは一緒に見ない」 「えっ!?」 悟浄さんに悪気はないのです。 * * * その97 * * * 「来週は土曜に来るだろ?ステイヤーズステークスだし」 冬の中山名物、3,200mの長丁場ステイヤーズステークス。 ここに勝ったと言っても同じく長丁場である3,000mの春天につながるかと言うと、そうでもあるしそうでもなく。 春天に出走するような名馬は大抵ステイヤーズステークスなんぞに出走しないで数週間後に控えた有馬記念に出走するのだ。 稀に、ステイヤーズステークス→有馬記念→前哨戦→春天制覇、と言うとてつもないスタミナ勝負のローテを辿る一流馬もいるのだが。 「そうだな」 「去年はチャクラが勝ったけど今年はどうだろうな。秋から調子悪そうだし・・・・・・?」 そこまで言って悟浄は隣に立つ三蔵の顔を首を曲げて覗き込んだ。 「・・・何だ」 「イヤ、今チャクラつったら何故か三蔵の顔がチラついた」 「老眼か」 「ちげーよっ!」 しつこいようですがお馬さんの名前ですよー。 * * * その98 * * * 2004.12.12 朝日杯FS 「お?この馬グラス産駒じゃん」 父或いは母の勝ったレースをその産駒が勝つ。競馬ファンは結構そんなドラマのような筋書きに弱い。 「ま、朝日杯は固いしな。こんなに人気無いんじゃ無理だろう。応援馬券だけだな」 嘗ての朝日杯勝馬であるグラスワンダー産駒、シルクネクサスの姿を見ても案外三蔵は冷静だった。 レースが終わるまでは。 「・・・・・・グラス産駒はまだ来年も再来年もデビューするしな」 全16頭がゴール板前を駆け抜けた後暫し沈黙してから漸く口を開いた三蔵は自らの台詞とは裏腹にふ、と辛そうに口元を歪め顔を背けた。 シルクネクサス16着。 でもGIに出走出来るだけでも大したもんです! * * * その99 * * * 香港国際レースの後。 「・・・海外のレースだと、 外国馬に勝たせない為には自分の馬が負けても良いからって集団で日本馬囲んで超スローに落としたりしてすげえよなあ」 「マークされるの分かっていながら囲まれるような乗り方する方が悪いとも言えるがな」 「まあなー。 でも香港って別に所属馬だって香港で生まれた訳じゃねえし所属の騎手だって調教師だって香港人っつうワケじゃなくて外国人ばっかだろ? それでも香港の馬勝たせる為ならへーきでえげつない事すんのがなあ」 「香港だけじゃなく何処の国でもそんなもんだろ。日本くらいだろ、海外馬が参戦して来た時真っ向勝負すんのは」 「かもね。海外遠征するならオースミグラスワンみたいな馬じゃないと駄目かもな」 「・・・どういう意味だ」 「だってグラスワンならあの巨体で囲んだ他馬なんかはじき飛ばせそうじゃ・・・っ!ホメてんのに何で殴る!」 「何処が誉めてんだよっ!」 誉めてねえ〜!! * * * その100 * * * 2004.12.19 フェアリーS 「・・・痩せてる」 「あ?」 「今のレース勝ったフェリシア」 「この時期の牝馬だったら普通だろ」 「いや、細い、細いって!グラスワンダー産駒なのに細いって!」 「グラスワンダー産駒が皆が皆デ・・・太いワケじゃねえっ!」 女の子は華奢な位が好きです。 でも細い子は斤量こたえそうでおっきい子と同じ斤量だとずるいよなー、とか思ったり。 競馬SS9 グラスワンダー産駒ネタが固まってしまいました。背景は府中の誘導馬デューカルパール。 競馬SS11 novel−競馬パラレル |