競馬パラレルSS その11



* * * その101 * * *

2004.12.26 有馬記念パドック

「前走と前前走の反動とかあるんじゃねえの」
「かもな」
かっぽかっぽかっぽかっぽ
「イマイチ信用しずらいイマイチ馬だしさ」
「かもな」
『とまーれー』
「一番人気が来ちまったらつまんねえじゃん」
『武さん頑張ってー』
「・・・去年もそんな事言ってクリスエス外してたよなお前。もしかして嫌いだろうF澤厩舎」
『ペリエー頼むぞー!』
「っそ、そんなワケねえよ。何を根拠にそんな事言うてはりますの」
「その不自然などっかの誰かみてえな言葉は何だ」



2004年有馬記念勝馬はゼンノロブロイでした・・・!イマイチだったんですよ以前は!




* * * その102 * * *

「アドマイヤドン連覇かなあ」
「行かねえぞ」
「でもタイムパラドックスもノッてるところだし」
「週末天気悪いだろうが」
「タイムパラドックスの鞍上ってユタカだしさ」
「アンカツだって負けてそれっきりな訳ねえだろうが」
反応してしまった事につまらなそうに舌打ちをしながら。
「やっぱりドンドンかなあ。メイショウボーラーだって今年から古馬の仲間入りだから斤量のオマケはないし」
「ドンドンってのは何だ」
「タイムパラドックスも実は7歳だし」
「実はって皆知ってるだろうが」
「若い方が有利かなあ。でもメイショウボーラーってまだGI勝ってないし。ドンドンで決まりかあ」
「・・・そのアホみたいなドンドンっつうのは止めろっ!」



2005.フェブラリーSネタ。
言いませんか私は言いますよドンドン。 元ネタはドンが活躍し始めた頃NHPで発売になったアドマイヤドンドン(背中向けて太鼓叩いててドンドンって書いてあったのです) Tシャツ。





* * * その103 * * *

「・・・ま、アレだ。若くて勢いあっても無冠のメイショウボーラーが、 トシ取ったとはいえあれだけの実績のあるドンに勝てるかっつう点だな」
「無冠っつう程無冠じゃねえだろ。GIは勝ってないが重賞は何勝もしてる筈・・・」
「無冠っつう程じゃない無冠って何よ。じゃあ「ちょっと無冠ちっく」とか「何だか無冠」とか「無冠中の無冠」とかあんのか?」
何だコイツ喧嘩売ってんのか、絡むように言われるのにそう思いはしたが三蔵は片目を眇めて悟浄を見遣るだけに留めた。
「・・・無冠中の無冠・・・、か」
ぷはあ。
三蔵が気持ちよさそうに煙を吐き出す。
「お?何よ?何か心当たりありそう?」
「てめえで考えろ」
悟浄の問いに、意地悪く口の端を上げて笑いながら三蔵は告げるのだった。



これもフェブラリーSネタ。
答えはコイントス。あのクロフネと同期で毎日杯では「幾らクロフネが凄いと雖も!」 とコイントスの単勝を握っていたのも今となっては良い思い出。





* * * その104 * * *

「いい競馬日和ですなあ、三蔵はん」
「・・・誰だてめえ」
突如話し掛けて来たのはサングラスにマスクで顔半分が隠れている男だった。
「いややわあ三蔵はん。久し振りでうちの事忘れてしまいましたやろか?」
黒いサングラスを外した下からは濡れた青い色の瞳が現れる。
「忘れるもなにも元より、オレは、全然てめえとは親しくも何ともねえ」
「つれないわあ」
素っ気なく言う三蔵の言葉に、いつもならさして気にも留めたように見えないヘイゼルの瞳に本物の涙がにじむ。
「・・・この辺りは大分飛んでるらしいぞ、花粉」
「三蔵はん達は花粉、平気みたいやね」
真っ赤になった瞳にハンカチを当ててから再度サングラスをかける姿を見ながら、
「黒のサングラスじゃなくメガネにすれば怪しくないのに」
と悟浄は思ったとかなんとか。



春競馬前哨戦のシーズンは辛いらしいですね。




* * * その105 * * *

「今日は三蔵はんが来ている気がするんや。否、絶対来ている筈や」
マスクとサングラスと帽子と、花粉予防スプレーと。
「・・・今日は花粉が多い・・・」
優雅な手つきで花粉対策の身支度を整えるヘイゼルの傍らでガトがぼそりと呟いた。
「うちに命令するつもりか」
「いや・・・」
「アンタは黙って鼻炎スプレーと甜茶のど飴とアイボンとトマトのちからとヨーグルトでも買うて来とったらええんや」
「・・・(黙。)」



注文多過ぎですヘイゼルさん。




* * * その106 * * *

「さ、三蔵はん・・・はあ。はあ」
「・・・・・・。」
耳元で聞こえた変質者のような荒い息遣いにビクリと肩を竦めてから三蔵は声の元を振り返った。
「見付かって良かったですわ・・・ぐす。」
相も変わらず黒いサングラスと大きな白いマスクでその顔の殆どを覆い尽くしているが、 その特異な服装と特徴のある話し方から声の主がヘイゼルであろう事は何となく分かった。
そのマスクとサングラスを外さない限り、 服装と髪型を同じくした誰かがヘイゼルを装っているとしても分かりはしないだろうが傍らに付き従う大男のガトは素顔であるのでこれは本物のヘイゼルであろうと三蔵は判断する。
「折角の岡部はんの引退セレモニー、三蔵はんはこないな処で見とったんやね」
「何処で見てようが俺の勝手だ」
人もまばらになったスタンド下の食堂で漸く席の空いたベンチに腰掛けて三蔵と悟浄はレース後のビールで咽を潤していた。 天井から吊り下がるモニタに体の正面を向けるようにして。
「そうやけど」
言い差し、ヘイゼルがサングラスを外しハンカチで目頭を押さえるのを見て。
こいつは岡部ファンだったのかと三蔵と悟浄は思ったのだが、 ガトだけはそれが花粉症による涙を拭っているだけだと知っていたのであった。



2005.3.20.岡部騎手引退セレモニー@中山。
「ええお式でしたわ」とか言い出すとまるで結婚式のよう。





* * * その107 * * *

「処でこれから食事でも一緒に如何です?さっきのメインレース、馬単獲ったんですわ」
ひらりとヘイゼルが純白の手袋を嵌めた指で挟んで見せたもの、それは当たり馬券。
「やっ、焼肉焼肉!」(←悟浄さん)
「蟹」(←三蔵)
「スキヤキッ!」(←これも悟浄さん)
「蟹だっつってんだろ」
「じゃあ多数決で蟹スキに決定ですな」
「どっこが多数決・・・ッ!」
「それより早く換金しねえと払い戻し時間過ぎるぞ」(←冷静)



上の続き。




* * * その108 * * *

処で三蔵と言うヤツは鍋奉行だった。

「ホラ。ここ煮えてんぞ」
「・・・・・・。(←ガト)」
「てめえが取らねえと次が入れられねえだろうが」
と、言いながら無理矢理よそいつける。まだガトの器は食べ物がてんこ盛りである。 大男の割に意外な程にガトはもりもり喰ったり飲んだりしなかった。
普段は競馬場のジャンクフードを平然と喰う三蔵が、意外な張り切りを見せて鍋を仕切る。
「早く喰え(イライラ)」
「三蔵はんはマメですなあ」
「いや、マメなんじゃなくてありゃあ鍋奉行だろうが」



そして勿論面倒見が良い訳でもない。




* * * その109 * * *

「軸はドレにするかなー。バラ一族はここ一番で信用すると裏切られそうだし」
「一番人気でも買っておけ」
「んー、でも枠次第だよなあ。内枠でごちゃついたのさばけないで末足不発ってコトも想定しておかないと。武○だし」
デビュー戦から、否、正確にはデビュー前から凄い馬がいると話題になっていたその馬は、 強いとの噂を聞き付けた他陣営が同じレースに出たくないと避けていた為、これまで小頭数でのレースしか経験した事がなかった。
「良い枠引いても後方一気の為に控える筈だ。○豊だし。ダンゴ状態になりそうだったらディープインパクトは切っても良いかもな」
「展開次第かあ。○川さん、俺に展開を読む力をっ!」
そう言って悟浄が両手を組み合わせて天を仰ぐと、三蔵は他人のフリをして遠離るのだった。



2005.皐月賞
天才ジョッキーファンの方済みません・・・! 展開関係ないしどんな位置取りからもレース出来ると今となっては分かりましたがレース前は展開次第なんじゃと疑ってました。





* * * その110 * * *

「三蔵、明日のレース一緒に見ねえ?」
「・・・京都に行くんじゃねえのか」
明日の天皇賞・春には悟浄の好きだった馬、エアグルーヴの長女アドマイヤグルーヴが出走するのだ。
「いや、流石にこの時期は・・・大体今回の出走って冗談だと思ってたし。 登録だってしてるだけで本当に出ると思ってなかったから新幹線押さえてなかった。 今からだと自由席しかないけど行きも帰りも座れる訳ないし」
「だろうな。陣営も一体何だって牝馬で3,200mの長丁場に挑戦する気になったんだか」
「だよなあ」
母、エアグルーヴは牝馬ながら天皇賞・秋を勝った女帝と言われる名馬だ。 その母を超える為、母でさえ挑まなかったレースを選んだのであろう事は分かる。 分かるのだが秋天は2,000mだが春天は3,200mもある。 牝馬にこの長距離をこなすスタミナがあるのだろうか。
「だからさー。一人じゃ見ていたくねえんだって」
「冗談じゃねえよ。この人混みの中誰が出掛けるか」
「だから俺が三蔵のトコ行くって。午後1時位に着くから」
「勝手に決めんな」
「祝い酒かヤケ酒になるか分かんねえけど酒持ってくから冷蔵庫空けといて」



2005.天皇賞






競馬SS10

背景は函館の誘導馬フューチャアイドル。

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