競馬パラレルSS その15



* * * その141 * * *

「なー、三蔵はクリスマスってどうやって過ごす?」
「どうやっても何も24日は中山大障害だし25日は有馬記念だろうが」
「あー・・・」
「大障害の日はともかく、有馬は15〜17万人は来るだろう。前売りは19万枚完売だそうだが」
「15と17じゃ2万も誤差があるじゃん」
「(↑無視)府中ならともかく中山に17万も入ったらどうなると思う。 給湯コーナーだって長蛇の列必至だからペットボトル持参で、メシだって勿論滅茶苦茶並ぶ筈だから持参だ」
「ええっ!(何もそこまで・・・)」
「何だ、有馬は行かないつもりか。だったら前売りを寄越せ。オークションで売りさばいてやる」
「カンベンして下さい」



16万でした。




* * * その142 * * *

「・・・つうかあんたオークションなんか利用してるんだ」
「皆考える事は同じなんだろうな、JRAが無料で配布してるディープグッズは案外安値しか付かないぞ」
「いや、そんな事聞いてねえし」
「記念入場券なんぞが一枚1,000円からの金額になるなんて、ディープインパクトさまさまだな」
「・・・何、あんたも前売り入場券出品したクチなの」
「・・・西日本の方は雪が酷いらしいな。馬の輸送に影響がないと良いんだが」
「・・・・・・(話を逸らしやがった)」



ペア券¥2,000↑の値が付いたんですよ、この時。10枚位買って売りさばけば馬券外れてもプラス収支だと思いました。




* * * その143 * * *

「3連複で24万7990円・・・!こんな馬券をうちは待ってたんや」
ぎゅう、と薄い紙切れを大切そうにヘイゼルは両手で押し包む。
「3連単で99万7250円か。惜しかったな」
「ふ・・・贅沢は言わずにおきまひょ」
「それにしても良く獲れたな」
「そうやろか?ゴールデンキャストは実績馬やし、こんなローカルのメンツも手薄なレースやったら絶対やね。 それから的場はん。GIのある週にこんなローカル回りの悔しさ、挽回するにはどうしたらええか本人がよう知っとりますわ。 テイエムチュラはんは成績に波があるんで今回は人気落としとったけど、そろそろ狙い目と思っとったんよ」
「「チュラはんじゃねえだろ」」
「・・・うちの話聞いてそれしか言う事はないんかい」



的場と言うのはいぶし銀のあの方・・・ではなく、あの方の息子さんの方です。




* * * その144 * * *

「三蔵はん。たまには内馬場に行かへん?」
ここの処中山開催の日は曇りがちの悪天候だったが久々に時折日の差す、良い陽気の日だった。
「断る」
「そないすげなくせんといてえな。折角ガトにレジャーシートも持って来させたんよ」
言われ、ヘイゼルの背後に影の如く付き従う大男の姿をちらりと三蔵は見る。 ガトが片手に提げた●ーフィーショップで売っている馬柄のトートバッグが膨らんでいる。 成程あの中にレジャーシートが入っているのだろう。
然し大男がトートバッグを下げているシュールな姿に三蔵は一瞬で視線を逸らした。
「てめえらだけで行け」
「三蔵はんはパドックも見いひんやないですか。内馬場で見たって同じやないか」
「何処で馬を見ようが俺の勝手だ」
「・・・折角三蔵はんと一緒に食べよ思てわらび餅買うて来たのに・・・」
「それを先に言え」
「おーい。行っちゃうの?わらび餅で・・・?」(←悟浄さん)



春競馬開催。




* * * その145 * * *

「この辺りでええやろ。ガト」
「ああ」
黙々とレジャーシートを広げ始めるガト。勿論●ーフィー柄のアレである。
「さ、三蔵はん。座ってえな」
「・・・・・・ああ」
三蔵が腰を下ろすのを待ってから、ヘイゼルがガトの荷物の中から徐に四角い箱を取り出す。 因みに悟浄は自分だけ座れと勧められてないのに気付きながら勝手に座っている。 と言うかター●ィー柄のレジャーシートはあまり大きくないので大の男4人が座るのは面積的に不可能だが無理矢理シートの端っこに尻を割り込ませる。
「今日作りたてのを買うて来たんや。ガト、お茶頼むわ」
「分かった」
楊枝を突き立てるとふるふる震え、持ち上げればほろりときなこの零れるわらび餅。
もぐもぐ。
もぐもぐ。
「お口に合わんやろか?」
「・・・不味くはねえな」
「良かったわ〜。この国に来て良かった事の一つは食べモンが美味しい事やわあ」
「この国って・・・まさか千葉の事じゃねえよな」
「アンタは黙っとき」



ガトにお茶、と言うのは水筒持参な訳ではなく給湯コーナーまでお茶を取りに行かせてます。




* * * その146 * * *

「ウチは西の方の国から来たんよ」
「「西」」(←随分と漠然としてるな、とか思っている三蔵と悟浄)
「そう・・・ウチの国ではオッズメーカーゆうもんがありましてな」
「・・・・・・もしかしてブックメーカーの事か」
「ああ、そうやった。まだこの国の言葉に馴れてへんのですわ」
「・・・・・・そうか?」
「つうかブックメーカーって日本語じゃねえし」

*説明しよう!ブックメーカーと言うのは賭の元締めの事です。 ブックメーカーが人気と実績を元に大体のオッズを設定し、売れ行きを元に徐々にオッズを変動させます。 日本だと中央競馬の元締めはJRA一本ですが、海外ではブックメーカーは幾つあってもOKです。

「ウチの義父ゆう人がな、ブックメーカーで働いとるんや。それで、ウチはこの国の競馬を研究しに来とるんよ」
「それってお前の出身国で日本の馬券が買えるようにすると、そういう事か?」
「違法行為じゃねえか!」



海外では、例えば馬券の販売のないドバイのレースでもフランス辺りに行けば買えてしまいますが、 日本の競馬の馬券は国内で、元締めの販売したもの以外を買うと違法行為になります。




* * * その147 * * *

「いややわあ。ウチはそんな不法行為に手を貸したりはせえへんよ。三蔵はん、ウチの事なんだと思うとりますの」
どっからどう見ても外国人のてめえがエセ関西言葉を操る事が怪しくないのかと、 ●ニエル・カールさんが聞いたら怒りそうな事を三蔵と悟浄はこっそりと考える。
「ホンマ、ただ色んな国の競馬を勉強してるだけなんや」
「「・・・・・・(疑)」」
「ドバイへも行った事があるんや。そん時、この国の馬が勝ってな」
「・・・もしかしてサンデーサイレンス産駒の」
「そうや、三蔵はんは流石よう知っとりますわあ。 世界的に見ればこの国の生産馬の血統は傍流なんやけど、それで興味持って、この国の言葉を勉強してやって来たと言う訳や」
「・・・それで何でエセ関西弁・・・」



話題のSS産駒はハーツクライの事ではありません。




* * * その148 * * *

「ほんま、サンデーサイレンスの『血』はおもろいわあ。スプリントから長距離まで総ナメや」
一体誰にこの国の言葉を教わったらエセ関西語の上に「総ナメ」と言う単語まで覚えるのだか、 気にはなったが敢えて問わない悟浄と三蔵であった。
「最初はな、馬産地の北海道に行ったんや。ばんえい競馬って迫力ありましたわ」
ぽわんと遠くを見る表情になるヘイゼル。 馬を見に行くなら普通ばんえい競馬ではなく牧場見学だろう、と思ったが矢張り敢えて突っ込まない悟浄と三蔵。
「次は中央競馬を見よ思て東京に来たんよ。そんで羽田から来る途中の電車で競馬場見掛けてな、途中下車したんですわ」
「ああ・・・」
ヘイゼルの言う処の「電車」はモノレールの事であろうと、三蔵は納得した。 モノレールからは大井競馬場が見える。ヘイゼルの見たかったと言う中央競馬ではなく地方競馬であるが。
「そこでウチは三蔵はんに出会ったんや」
「出会ってねえだろ」



なまじな日本人よりフットワークの軽いヘイ様。




* * * その149 * * *

「折角ウチらがでおうた記念の日の話なのにつれないわあ」
「たまたま擦れ違ったのなんか出会ったうちに入らねえだろ」
「そないな事言うたかて、あの日の出会いがあったから中山で三蔵はんを見掛けた時すぐに分かったんや。あの時の人や、て」
へろ、と背景に花が飛びそうな笑顔で告げるヘイゼルに三蔵は脱力する。
「・・・出会い出会いと連呼するな。気色悪ぃ」
「運命の出会いの方がよろしかったでひょか?」
「・・・貴様(怒)」
「冗談や。ほんま三蔵はんは堅物やねえ」
「・・・堅物だったらガキの頃からパチンコ屋行ったり競馬場来たりしてねえと思うぞ・・・」



どんなにつれなくされてもめげないヘイ様。




* * * その150 * * *

「ヤマニンメルベイユのメルベイユってどーゆー意味だろ」
「謎だ」
新聞を開いて訊ねる悟浄に、三蔵は即答する。
「は?」
「メルヴェイユはフランス語で「謎」と言う意味だ」
「へー。やっぱアンタ物知りだな。に、してもさ」
「何だ」
「謎っつってもメルベイユだとおフランスな響きになるのに「ナゾ」っつうと一気にお笑いになるのは何でだろな」
「知るか」
今度の返事も間髪を入れぬものだった。

「・・・アカン、テンポが早過ぎて突っ込めんわ」
「・・・ヘイゼル」



この二人の掛け合いに素で割り込めるのは八戒さんくらいな気が。






競馬SS14

背景は函館競馬場の誘導馬ツルマルモチオー。

競馬SS16



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