midsummerday
何時の間に好きになっていたのかは分からない。
最初は苦手に思っていた位なのに気が付くとつまらない用事にかこつけては呼び出すようになっていた。
神経質そうなのに煙草の灰は今にも崩れ落ちそうになるまで灰皿に叩き落とさないとかビールの銘柄にこだわりは無いとか意外と不器用だとか、
伏し目がちにすると長い睫が日の光を浴びてきらきら光って綺麗だとか会ううちに知るようになったちょっとした事がいちいち忘れられなくなった。
休みの日に会うだけじゃ全然足りなくなって、
酒を流し込む為にく、と反り返らせた頚のラインが色っぽいと三蔵の同僚は気が付いているのかと心配になって、
休日に会う時はいつものスーツ姿じゃなくてボタンを幾つか外して寛げたシャツの襟元から覗くくっきり浮かんだ鎖骨の下に続く細い体躯はどんなだか自分の目で見てみたいと、触れてみたいと何時しか思うようになって。
骨張った身体にこの指を這わせてみたらどんな感触がするのだろうと気付かれないように舐めるようにその華奢な躯に視線を投げて。
隠し通すのは無理だとこの侭では何時か気付かれると想いを押し殺すのが苦しくなってそれでも会いたくて。
俺のベッドで朝を迎えた三蔵が帰ってから数時間の間は夢見心地でにまにましながら過ごしていたが丸一日経つ頃には三蔵にとっては体調の悪い所につけ込まれただけの悪夢のような出来事と思われているのではないだろうかと、
見慣れたナンバーからの返信の一つも無い携帯を何度も取り出しては乱暴に放り出すと言う事を繰り返していた。
シャツの上から見た以上に細い身体に浮かぶ汗。
先端を埋め込んだだけでそのキツさと締め付けに達してしまいそうになり思わず声が出た。
男を抱いたのなんて生まれて初めてだったからこんな所にこんなモノを挿れるのは矢張り無理なんじゃないかと汗を吹き出しながら思ったが少しずつ馴らして腰を進めると何とか全て三蔵の中に収まった。
俺のモノを包み込む三蔵の体内の熱さが心地良くて腰を動かし始めると三蔵は揺さぶられるのに合わせて掠れる声で悲鳴を上げた。
三蔵は苦痛を訴えながら菫色の瞳から滲むように涙を浮かべていたが顔を横に背け瞳だけをこちらに向けた泣き顔さえもが息を呑む程に色っぽくて搾り取られるようにキツくて熱いソコに涙を舌先で掬い取りながら機械のようにがくがくと突き入れた。
余裕を無くして快楽だけを追い求めて女にするのと同じように激しく出し入れを繰り返し三蔵の中に精液を吐き出し初めてセックスをするガキのように無我夢中で殆ど愛撫をする事も出来ず膝が胸に付く位に身を折らせてひたすらその身体を貪り続けた。
どれだけ深く突き入れてもイッてもイッても全然足りなくて達した後も抜かずぐしゅぐしゅとしつこく腰を揺さぶって最後に三蔵が俺と一緒にイッてくれて漸くそれを三蔵の中から引き抜いた。
足の間から流れ出す俺が注ぎ込んだものの感触に眉間に皺を刻みながらも身動き一つ満足に出来ず横たわった侭三蔵が自らの出自を語るのにシーツの上に投げ出された手に指を絡め今度は優しく抱いた。
きつくシーツを握り締めるばかりだった三蔵の指がおずおずと背中に回された。
三蔵の腕が強く俺を抱き寄せて胸を合わせながら体内と擦れ合う表皮とで同時に三蔵の暖かさを知った。
激しく腰を動かそうとしても背中に回った三蔵の腕が緩む事は無く嬲るようにゆっくりと掻き混ぜるようにするとそれでも三蔵は高い声を上げて俺のモノをきゅうきゅうと締め付けた。
三蔵の肉襞に包まれているだけでどんどんと硬度を増し延々と達してしまいそうになる自身に、
自分がどれ程三蔵を求めていたか、受け入れて貰えて満たされたかを知った。
始業前にチェックした携帯に矢張りメールも着信履歴も無く、
本当は三蔵にとってはあんな事は苦痛でしかなかったのではないかとその時になって漸く思い至った。
蒼白になった頬に涙を零しながら薄く開いた唇からひゅうひゅうと苦し気に呼気を零していた。
震えながらシーツを掴んでいた指先からも血の気が引いて時折痙攣していた様を思い出す。
「取り敢えず頂いとけ」な間に合わせのセックスではなく三蔵の全て、を知りたくて、
三蔵の全てを欲しくてほんの少しの時間も身体を離している事が出来なくて貪り続けたあの人を失う事になるのかと思ったら上手く呼吸が出来なくなって気が付いたら壁に寄り掛かっていた。
三蔵がいなくても俺は生きていけるだろうかと自問して、
知り合う前だって平気だったんだから人一人と別れた位で死にやしないだろうと自答する。
我ながら可愛げのない性格だ。その侭煙草を数本吸って頭を冷やしてから仕事に戻った。
昼休みになるのを待って鞄に突っ込んでおいた携帯を引っ張り出して開いてみればメール着信マークが点灯していたので慌てて開いてみるがそれは待ち侘びていたものではなく悪友からのものだった。
ロクに文面も頭に入らない侭メールを読んだ後携帯を握り締めて廊下を歩きながら恐る恐るアドレス帳を呼び出しコールする。
仲々三蔵は電話に出ない。もう切ってしまおうか、諦めかけた時発信音が途切れた。
「・・・もしもし?」
「あ、三蔵?俺だけど」
暫し沈黙。人がいないのを確かめて急いで喫煙スペースに移動する。自分が何を言うつもりだったのかは良く分からない。
が、何時他のヤツらに聞かれるか分からない会社からではなく家に帰ってからにすれば良かったと少し後悔する。
「・・・悪い、メールの返事遅くなって・・・。昨夜から寝込んでて」
携帯の向こうの三蔵の声が何時になくぼそぼそとして聞こえる。
「もしかして今日休みとか?」
「・・・まあな」
「寝込む程イヤだった?」
「・・・何がだ?」
「その・・・俺と寝た事が」
昼休みで周りに人がいないとは言え会社で口にするような事ではない。思わず声が小さくなる。
「ああ?ちょっと待て、お前何・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・お前はどうなんだ」
何事かを言い掛けた三蔵だが逆に問い返して来た。
「俺と、シてどうだった」
「そりゃすっげヨかったよ!」
恥ずかしいのかもごもごと小さい声で言う三蔵の語尾に重なる位の勢いで答えた。
しまったこれはかなりバカっぽい返答だしまるで身体だけが目当てだったように聞こえる。
「あ、えと・・・すっげ嬉しかった」
慌てて付け加える。
「・・・俺もだ」
告げられた言葉に、携帯なんかじゃ全然足りないと思った。
今ここで三蔵がどんな表情でその言葉を言っているのかが見られたら良いのに。
「ホント?」
「本当だ」
形振り構わず携帯を抱き締めて液晶にキスしたいと言う衝動を堪えたのはエレベータホールからがやがやと人の話し声が聞こえて来たからだ。
「・・・さんきゅ」