Saqalat
○月×日
「三蔵ってすっげ腰細いよな・・・」
「悪かったな」
法衣を脱がしながらするりとその細い腰を撫で上げるのに、不満そうに三蔵は悟浄を睨み上げる。
「いや、悪くねえって。何処に内臓収まってんのかたまに不思議になるだけ(笑)」
「バカぬかせ!豆チビ猿でさえ五臓六腑があの身体ン中に収まってんだぞ!? 猿より背も高い体積もでかい俺の内臓が収まりきらない訳ねえ事は一目で分かるじゃねえかッ!」
「うわーん!三蔵が俺の事豆チビ猿って言ったーッ!」
ばたばたばた・・・。
「悟空てめえどっから聞いてやがったッ!」






2月14日
その日辿り着いた街で宿を取った後ふらりと出て行った三蔵が戻って来た時には何時か見たような枝が手に握られていた。
「あれ。それ」
「よくこんな時期に実が成ってましたね」
「法力で育成を早めればどうって事はない。それよりこの地方じゃ珍しいとかで入手するのに苦労した」
日暮れ前に出て行った三蔵が戻って来た今はすっかり日も暮れて、 メシを待ちきれない悟空がベッドの上で腹を見せて死にそうになっていた。成程入手に骨を折ったと言うのは本当なのだろう。
「あのさ。それ。やっぱりアレ?」
「ああ?」
「アレだよアレ。猫の宅急便」
八戒が手早く炒れたコーヒーに手を伸ばした後すぐさまその手を引っ込めて三蔵が袂からごそごそと何やらを取り出しながら告げる。
「・・・もうじきバレンタインだからな」
「ぶっっ!!」
煙草の煙を思い切り吸い込んでしまいハゲシク噎せる。 涙目になった俺の目の前には綺麗にラッピングされた小箱が4つ。
「な・・・っ、さんぞ、その中身って」
「そんな事も知らんのか」
鼻で笑いながら三蔵は居並ぶ小箱達を一回り大きい包装紙で一つに纏める。
「バレンタインというのはな、世話になった相手にチョコを贈る日だ」
そう言いながらも三蔵の手は休む事なく梱包を。
「さ、後は橙猫を呼ぶだけだ」
綺麗にくるみ上がったチョコの梱包をうやうやしい程の手付きで持ち上げてから三蔵はほおずきの枝に手を伸ばした。


・・・ああ、やっぱりその中には俺の分はナイ訳ね・・・。



猫の宅急便については100題「オレンジ色の猫」参照。
2005/2/14初出



○月×日
「あー、ハラ一杯」
「てめえは食い過ぎだっての!」
「だってすっげー美味かったんだもん!」
「良かったですね。さて宿へ戻りましょうか。三蔵、カード貸して下さい」
「ああ」


*****


「美味そうな匂いがするっ」
「うろちょろすんじゃねえっ!」
「・・・ああ、このお店はガイドブック
(←持ってんのか!)に載ってましたねえ。 和菓子の美味しい老舗だそうですよ」
「・・・(ぴくっ)」(←三蔵)
「おやつに買って行きましょうか」
「なー、三蔵、いいだろ」
「・・・フン、まあ良いだろう」
「ええと、この店のお薦めは揚最中と南蛮焼です。南蛮焼は黒糖のふっくらもちもちした皮に餡が挟まっているそうです。 それから、餡は黒餡とウグイスの二種類ありますけど・・・どれにしますか」
「全部喰う!」
「だーかーらー、お猿ちゃんはさっきハラ一杯っつってたろうがっ!」
「甘いモンは別腹だもん。なー、さんぞー?」
「そうだな」
「お前等女子高生かっつうの!!」



2005/4/28初出



○月×日
「や〜っとコンプリートしたぜ」
「やったー」
「やりましたねえ」
宿の机の上に小さなプラモデルのようなものをずらっと並べて感慨深く3人はしみじみと眺める。
「・・・何だソレは」
「こないだの街の店屋ではもう売り切れだったし」
「こんな旅の最中ですからねえ、発売になってるって知るの遅かったからスタートダッシュで大人買いも出来ませんでしたし」
「同じのばっか残ってる店とかあったよなー」
「・・・おい」
「記念写真撮っておかないといけませんね」
「・・・おい(無視すんな)」



●ンダムフィギュア付きコーラと言うモノが発売されてた頃のネタ。 一行がガ●ダムにハマって〜と言うのは100題「ビデオショップ」参照。
2005/9/30初出



9月×日
「もうじき八戒の誕生日なんだけどさ、やっぱ何かお祝いとかした方がよくね?」
「美味いもん食べに行こーぜ!」
「どっかのサルじゃあるまいしメシなんかでアイツが喜ぶかっつうの」
「んーと、じゃあ酒!」
「てめえらが払う訳じゃねえだろうが」
「てめーの金でもねーだろーが」
「そっか・・・んじゃあ肩叩き券とか?」
「お子様だねえ」
「何だよ!じゃあ悟浄だったらナニがいいって思うんだよ!」
「あー、それはアレだ。オッシャレーな服・・・は、まあ、今貰っても困るだろうから換えの服とか」
「ヤツの肩の布だったら時々宿でカーテンとかテーブルクロスとかかっさらって自給自足してるぞ」
「・・・それ自給自足って言わない」
「えーと、三蔵はナニだったら八戒が喜ぶと思う?」
何で誕生日だと喜ばせられなきゃいかんのだ、とか思いながら渋々腕を組んで三蔵は考える。
「ヤツが貰って一番役に立ちそうなものだったら義眼のスペアだろ」
「「・・・・・・。」」
「いや、どうせ実用的なモンだったら義眼よりこう、もっとさー・・・」
「てめえらが何が良いっつうから言ってやったんだろうが」
「いや、だから貰って嬉しいモンだろーがよ、誕生日っつったら」
「だから義眼の何が不満だ」
「分かんねえヤツだな!例えばてめえが誕生日にプレゼントだっつって予備の弾丸とか貰って嬉しいのかよ!」
「良いじゃねえか!買い出しに行く手間が省けんだろーが!」
「あのー・・・、三蔵、弾切れですか?」
「うわっ!八戒!!」



2005年秋初出

BBS&web拍手お礼文より再録。タイトルはサカラートと読みます(=scarlet)。

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