swept over2
風呂場から聞こえて来る水音を聞きながら冷凍庫を開け、 何時だったか悟空が買って来て勝手に人ん家のそこに突っ込んでおいたアイスを取り出す。
羽織っただけのシャツのボタンを止める事すら耐え難い。
互いの体温を上げ合う行為の最中に、冷房を入れておかなかった事を後悔した、勿論。 そうでなくとも気温の高い時間にわざわざ余計に暑くなるような事をしていたのだから尚更だ。 然し中断し難く、僅かな時間も離れ難く、汗を流しながら行為を続けた。
待ち望んだ冷房のスイッチを入れたものの風呂を悟浄に譲ってしまった為未だ汗やら何やらで濡れている躯が不快だ。
怠い体を椅子に押し込め、取り立てて好きな訳でもないソーダ味のモノの冷たさが、 それでも心地良くて程良い固さに溶けるのを待たず繰り返し口元に運ぶ。



悟浄と言う奴は、感情の振れが大きい。理解し難い程に。まるでガキのように。
先刻までへらへら笑っていたかと思うと突然深刻な表情をし、 またその逆に少し前まで情けないツラをしていたのがほんの少しの切っ掛けでアホのようにへらへらと笑う。 弱音を吐いていたかと思うと数分後にはとびっきりの笑みを浮かべる。
くるくると変わる表情が面白いと言えば面白いし、付いていけないと言えば付いていけない。
しかもどうやら自分の感情の浮き沈みが激しい事に、当人は気付いていないらしい。 何でだか機嫌が悪い、何でだか機嫌が良くなった、そんな程度にしか思っていないのだろう。
そんな風に自分の事には酷く鈍いくせに、他人の事には敏感で「何か良い事あった?」なんて真顔で尋ねて来る。
だが聡いのはそこまでで、それ以上の事には思い至らない。
馬鹿なヤツだと思う。
あんなに繰り返し好きだと告げられ気分が悪い筈がない。
何故それが分からない。
俺の感情を揺り動かしたのが自分の台詞だと、何故気付かない。
俺もそうだと素直に告げる事の出来ない唇は、誰にでも言ってるんだろうと、思ってもいない台詞を吐き出し、 本当の言葉を告げる代わりに自らの唇を悟浄のそれに押し付ける事しか出来なかったが。
バカだバカだ、本当に悟浄のヤツは大馬鹿だ。
荒れ狂う肉棒に体内を蹂躙され、体を駆け巡る嵐のような感情に突き動かされ必死に縋り付いたのが「ただ機嫌が良かったから」 だなんて、そんな訳ねえだろうが。
強めに設定した冷房で急速に汗は引いているが未だ体は気怠く重い。 疲労の所為かぼんやりと思考の纏まらない頭でそれでも悟浄へのぶつけようのない腹立ちだけが頭の中に居座っている。
口に出してしまえば良かったのだ。
口に出せるなら良かったのだ。
お前が好きだと、些かの羞恥を感じる事もなく。
だが自分の性格上そんな事が口に出せる筈もない。
言えはしない。言える筈がない。
咽の奥でつかえた幾つもの短い言葉は吐き出される事のない侭胸の裡に留まり続ける。 溜め込み過ぎた言葉は既に苦しい程に膨れ上がっているのに。
アホ。
バカ。
図体ばかり無駄にでかいくせに頭の中はてんでカラッポだ。
しゃくしゃくと、冷たい塊を口に運ぶ合間に声に出してみる。
「・・・エロ河童」
戻る続く

novel−パラレル