泳げない心 3
「メインディッシュは美味しくいただいた事だし、後はデザートだな」悟浄がそんなふざけた事を言った時、三蔵は「ホラ来た」と思っただけだった。
「メシの片付けが済んでないだろうが」
素っ気なく交わして三蔵が皿を下げながら背中を向けるのに悟浄は慌てて隣に立つ。 二人してシンクに並んで、早くめくるめく甘酸っぱい夜を迎えたい悟浄が食器を洗い、 下心が見え見えなんだよバーカ、と内心で罵る三蔵が食器を拭く。二人して片付けると悟浄の思惑通り呆気なく片付けは済んだ。
「三蔵・・・」
「風呂がまだだろうが」
期待に満ちた視線を向けられてもそうやってすげなく交わす事が出来るようになってしまった三蔵の反応を少しつまらないと思いながら悟浄は足音を立てて風呂場まで走って行き手早く風呂の支度をする。 機嫌良く鼻歌を歌いながら蛇口をきゅ、と捻る。
「先に入るか?」
一番風呂が好きな三蔵が珍しくそう訊ねるのに、これも誕生日のサービスと言うヤツだろうかと思いながら悟浄は 「一緒に入る?」と笑いながら返すがハリセンで容赦なくひっぱたかれるに終わった。
悟浄が風呂から上がるのと入れ違いに風呂に入った三蔵は、然し長風呂だった。
どうせ綺麗にしても風呂から上がったらまた汚れちゃうのにねー、などととんでもない事を思いながら悟浄は煙草を消費しながら気長に待つ。 夜はまだ長いし独り寝するには今の季節は寒過ぎる。
「お待たせ」
約一時間の後風呂から上がった三蔵に、悟浄は笑顔で告げる。
「?何が・・・」
ドライヤーで髪を乾かしている最中に洗面所のドアを開けられ、むっとしながらも三蔵が訊ねる。
「いーのいーの。三蔵が言ってくれない分自分で言っただけだから」
「アホか」
相変わらず素っ気ない三蔵がごしごしと髪の水分を拭き取るタオルを乱暴に剥ぎ取りドライヤーも奪い去り、 抗議の声を上げるのも気にせずに悟浄は三蔵の手を引く。
「言ったでしょ。待ってたんだから」
強く手を引かれ半ば無理矢理廊下に引きずり出される三蔵の毛先から、乾かしきっていない水滴がぱたりと落ちる。
待っていた、と言っただけあって悟浄は執拗だった。 悟浄の部屋へ連れ込まれ即座に抱き込まれて何度も口付けを交わしながらベッドに投げ出され、 呼吸を整える間もなく立て続けに数度貫かれ、同じ回数だけ濁った体液を吐き出し、 汗やら何やらで湿っている上ぐちゃぐちゃに乱れたシーツの上で寝入りそうになりながらもこんな回数じゃ悟浄は終わりにするつもりはないだろうと思いつつ 「今日だけだからなバーカ」と内心で罵り半ば諦めヤケを起こしかけている三蔵の耳朶を背後から悟浄は甘噛む。
「今度四十八手でも試してみようか」
「・・・アホ」
さらさらと耳に掛かる髪を指先で払いながら囁かれる言葉にバカバカしいとばかりに三蔵は即答する。
「どんなもんか知ってるんだ?」
「・・・・・・」
おかしそうに笑いながら告げられるのに、思わず三蔵は黙り込む。
「最高僧様のクセにやーらしー」
「ば・・・ッ!」
「そんないやらしい三蔵様にはお仕置きです」
「な・・・っ、テメェっ、あっ、バカ」
言いながら既に悟浄は身体を起こし、三蔵の片方の足首を掴んで脚を広げさせる。 腹を括った筈だったが行為を再度強請られるのに「信じらんねえこの体力バカ。いや、体力の問題じゃねえだろう、 然し俺の方がいつも先にダウンするって事は体力の問題なのか」とか何とか考えながらじたばたと三蔵が逃げようとするのに容赦なく、 既に馴らす必要もない程充分濡れているその場所に飽きもせず悟浄のモノがするりと入り込んで来る。 熱い楔に奥まで押し開かれ、中から悟浄が注ぎ込んだものが溢れて来る。 生暖かいものが皮膚を伝う感覚に三蔵が身を捩り逃れようとするのに、 悟浄は腰を押さえ込んで自分のモノで三蔵の中を掻き混ぜるように腰を蠢かす。 悟浄が動く度に粘着質な音が響き、その音に三蔵が何とか腰を浮かせて逃げようとすればする程悟浄は強く自らのモノを突き入れる。
「う、ん・・・っ」
「ホラ、あんたのココ、4回もあげたのにまだ俺のが欲しいってびくびく言って締め付けて来る。ホントやーらしいの」
「テメ・・・っ、あ、あ!」
突き上げられ上がる甘い声に悟浄が人の良くない笑顔で動きを止める。
「ホントはあんたも期待してたりして」
「何を・・・」
「四十八手」
「な、に言って・・・、ッ!」
瞬時に三蔵が頬を紅潮させると悟浄が掴んでいた足首から手を離し両脚を肩に抱え上げ、抗議の言葉は途中で悲鳴へと変わる。
「は・・・、あ、ヤ・・・ッ」
上から叩き付けるように悟浄のものを押し入れられる刺激に零れ始める三蔵の性器から流れ出るものが、 悟浄が揺さぶる度に三蔵の膚の上に落ちる。
「イヤじゃなくてこーゆー時は気持ちイイって言うんだって。あ、あ、すげーイイ・・・」
余裕ぶって笑う悟浄が動くのに伴い三蔵の上にぱたぱたと音を立てて悟浄の汗が降って来る、その感触に三蔵はふと上を向く。
自分の上で必死に腰を振る男の、特徴的な色の髪は毛先が汗で皮膚に張り付いている。
汗まみれの精液まみれで何が気持ち良いだこのヘンタイ。
何だかんだ言いながらも悟浄の髪の色が好きな三蔵はそれでもその侭じっと悟浄を見つめる。 三蔵の視線に気付いた悟浄がえへらと目元を緩めて笑って見せる。
「三蔵、口がお休みしてる。ホラ、言っちゃえよ。悟浄もっと、とかもうイッちゃう、とか」
「・・・・・・ヘンタイ。」
「・・・何でそーゆー事言うかなアンタ」