通勤電車
カーブでも無いのに電車が揺れた拍子に前に立っていたオネエさんのヒールで足を酷く蹴り付けられた。
踏まれたんじゃ無かっただけマシ。ハイヒールで踏まれた日には泣くに泣けない。
でもこう言う時はなんか言って?
マジ痛いって。
それと言うのも運転手が下手にブレーキかけたりするからだ。このヘタクソがっ。

超満員のいつもの痛勤、通勤電車。
ああだりィ。早く帰りてぇ。って帰る所だけど。
また人が乗り込んで来た。
おっさん、あんたアタッシュケースの角は自分で味わえ。
痛えだろ。
煙草吸いてぇ。でも駅に着くまで我慢な。
然しなんだあの健康増進法ってヤツは。私鉄は駅構内全面禁煙になって灰皿が撤去されてしまった。 JRまでもが禁煙になったらどうしようかと恐々としている日々だ。
仕事終わって帰りの電車を待っている間のホームでの一服、あれが旨いんだってのに喫煙者をゴキブリ扱いしやがって。 吸わないヤツらより税金多く納めてんだからちょっと位多目に見てくれても良いじゃねえか。

また電車が揺れた。
手近な吊革に手を伸ばす。
数多の人間の手の脂を何年もかけて塗り込まれたその感触。
潔癖性気味の三蔵の影響で俺も最近は滅多に吊革に掴まらなくなった。
やっぱ、三蔵には無理っしょ。
この、四方を見知らぬ他人に埋め尽くされた満員電車は。
それに誰が触ったか分からないバイ菌まみれの吊革なんて絶対三蔵には触らせたくない。
なんて、過保護な事を思う程度には三蔵に惚れている。
その三蔵とは日曜に会える事になってるが、まだ火曜だし。

日曜。あと110時間の辛抱だ。
と思ってみるが。
110時間。
自分で暗算して出したその数字が間違っていない事を脳裏で素早く繰り返し計算し直し、気が遠くなる。

一つ手前の駅で降りてしまおう。
コンビニ寄って手土産代わりのビール買って。
開くドアと同時に吐き出される多数の人々の群の一人になる。

メール入れて速攻で押し掛けよう。
俺は携帯を取り出した。




パステルエナメルの続き。

「通勤電車」の題をどうしても「満員電車」と頭で無意識に読み替えている。恐ろしい。 本当は見ず知らずの他人と一緒に鉄の篭に詰め込まれ運搬される飼い慣らされた家畜な僕等的アンニュイな感じになる筈だったのに何か可愛いよ?

携帯電話に続く。

三蔵バージョンはこちら→地下鉄

100題