競馬パラレルSS その4



* * * その31 * * *

「変態とファミレスに来たのは生まれて初めてだ」
「ぶっ・・・だから違うって言ってんだろー」
「フン。どうだかな」
鼻で笑う仕草も小さな銀色の匙でアイスを口元に運びながらだとサマにならない。
年末の有馬記念に、入場者数が12万行くか行かないかと言う些細な賭けに勝って三蔵と二人、 不自然なまでに店内の明るいファミレスにやって来た。
別に、本気でデニーズ食い放題に執着していた訳では無かった。 三蔵の持ち出した条件、ターフィーショップでウマぬいぐるみ(2Lサイズ) を買って剥き出しの侭抱えて家まで帰れと言う羞恥プレイのようなそれに負けてはならないと当日は内心びくびくしていたものだったが。
「あっ、プレイって自分で言っちまった・・・」



100題「年中無休」後。詳細は「必需品」にて。




* * * その32 * * *

競馬パラレル京都散策版

鍵善のくずきりを食べてから帰ると言う三蔵に付き合って祇園を歩く。(淀帰りなので京阪利用)
「鍵善ってのはそんなに有名な店な訳」
例えば、競馬場に出向くにしても日程の都合が付かなければ日帰りだが、時としては観光を兼ねて1泊、或いは2泊する事もある。 京都に出向くのは勿論初めてではないのだ。然しそんな店は聞いた事がない。
「ああ、江戸時代からある店でな。くずきりが美味い」
「ちょー老舗なんだ」
「ちょーは止せ」
「ちょーがダメだとチョウパワー(注)困っちゃう」
「気色悪い声出すな」



注:中山競馬場の誘導馬。おしりの毛がCHOの文字形に刈られていて超可愛いです。




* * * その33 * * *

「カンパーイ」
馬連6,340円を500円分買っていた悟浄が陽気にジョッキを高く掲げるが。
「何回目だよ」
冷たく言う三蔵が付き合ってジョッキを合わせる事は無い。
「気分の問題じゃんねえ。あー、そう言えば三蔵カンパイ見た事ある?少し前に大井で見たんだけど、 カンパイって滅多にないのに「カンパイ」って言われると皆分かるんだよね。それって面白いと思わねえ?」
成程、と三蔵は思った。
確かに三蔵も見た事はないのにその言葉を知っている。
「そんでアナウンスがね『カンパイでございます』だって。ゲート入りの時だって『ゲート入りでございます』って言わないのにな」
「・・・そりゃあゲート入りするのは馬だからだろ」
「あ、そっか。馬はうままわなくて良いのか」
「・・・うままう?」
「あっ、違った。敬うだった」
「酔ってんなお前」



「カンパイでございます」に妙にウケたのは私。




* * * その34 * * *

「ここんとこ天気が悪ぃな。来週も雨の予報じゃねえか」
眉間に皺を刻み三蔵が言う。
「三蔵は雨って嫌い?」
「嫌いって訳じゃねえが・・・」
横顔を盗み見ると三蔵は何処か遠くを見た侭言葉を切った。
「競馬のある日は晴れるに越した事はねえな。新聞は濡れるわ折角チェックした馬体重は流れるわで散々だ」
「そりゃそうだ」



競馬三蔵は雨は嫌いではありません競馬のない日限定ですが(笑) スポーツ紙は雨に濡れるとぐずぐずに溶けますから雨降るとスポーツ紙派の悟浄さんの方が大変な事に。




* * * その35 * * *

2004.3.22

「あっ、三蔵?オレオレ。今何処にいると思う?」
「・・・知るか」
「アリゾナ〜」
「・・・・・・・・・がたん。ガタゴト・・・(どうやら掃除をしているらしい物音)」
「おーい。三蔵ーちょっとさんちゃーん!!」
「切らなかっただけ有り難いと思え」
「うん・・・実は今高知けいば・・・済みません嘘です切らないで!」
「何の用だてめえは」
「ホントは大井。ハルウララ馬券三蔵の分も買うからな」
「いらねえよ」
「グッズ売り場も出てるけども〜どれも売切で凄えの」
「いらねえからな」
「あ、じゃあもうじき出走時間だから」

「いらねえっつってんだろうが!」



突っ込む処は色々ありますが何でアリゾナですか悟浄さん!ソレを言うならアラバマでしょ!
この日高知競馬のハルウララに武豊が騎乗しました。馬券は高知以外でも発売されたので買いに行った悟浄さん。





* * * その36 * * *

「なあ、沙田ってどんなとこだ?」
内馬場で販売しているタコ焼きと言うかどう見ても揚げタコ焼きのような気がする、 妙に油のぎっとりしている、然し皮はぱりっとしている不思議なタコ焼きを口に運びながら悟浄が訊ねる。
「そうだな・・・スタンド内にヤモリがいた」
「いやそうじゃなくて」
はふはふと、一応冷ましてから食べてみたがこんな処の食い物は勿論最初から作り置きに決まっている。 つうかぬるいんでスけど、思わず悟浄は顔をしかめる。
「メシは不味かった」
「・・・そう」
「短パンでビーサンで地方競馬にいる競馬オヤジみてえなのがゴロゴロいたな」
「・・・ふうん」
「グッズはロクなのが無かった」
「三蔵何しに沙田行ったんだ」
「競馬に決まってんだろ」



実話。因みにグッズ買ったらでっかく「馬」の文字の印刷された袋に入れてくれました。 でも需要のなかった所へグッズ大好きな日本人の為に無理矢理拵えたのではと思う位しょぼかった。 皮のキーホルダーとか日本だったら主催者が無料で配布する「競馬カタログ」のしょぼくなったような冊子(しかも高い)とか。 あと香港とは思えない程食べ物がしょぼくて不味かったです。




* * * その37 * * *

「さてクラシック第一戦です。ここで私は重大な予想を発表しましょう」
「ナニやってんだお前」
大袈裟に両腕を広げて話し始める悟浄に、三蔵は勿論冷たい視線を向けるのだが。
「気分の問題じゃん」
「で?予想がどうだって?まだ出走馬も枠も確定してねえぞ」
「それは!『関東馬は消し!』」
「何だそんな事か」
「えっ?ちょっと、もっと驚いてくれなきゃじゃん!無敗のダンスインザムード関東馬だぜ?」
「中山限定のな。初遠征だろうが」
「じゃあ三蔵はナニが来ると思う?」
「知るか」
「ちえー・・・関東馬が勝つか関西馬が勝つかで賭けしようと思ったのに」
「てめえとはもう賭はしねえ」
「ナニよ三蔵最近調子悪くねえ?」
「ああ?」
「体調の方じゃなくて馬券のな。負けっぱなしじゃん」
「負けっぱなしと言われる程は負けてねえよ!てめえとの賭けだってまだ二回きりだろうがっ!」
「・・・じゃあ乗る?」
にやと笑った悟浄のツラが気に喰わなかったがここまで来たら止めるとは言えなかった。
「関西馬だっ!」
「じゃあ俺は関東馬。・・・賭けるものはそうだなあ・・・」
ちらと辺りを見回した後。
「ターフィーと握手。証拠写真付きでな」
「・・・乗ってやろうじゃねえか」



済みません三蔵様と言うか三蔵様が言うと外れるっつうか。




* * * その38 * * *

「GIの日はターフィーいないんだよなあ」
残念そうに辺りを見回しながら悟浄が言う。
「多分来週はターフィー登場するからその時にね?」
皐月賞のその日、いつものGI焼きではなく限定販売のマッキー焼きを食いながら余裕たっぷりの表情で悟浄が言うのに殺意を覚え会長焼き (←悟浄の奢り)を握り潰しそうになる。
桜花賞の勝ち馬当て、では無く勝つ馬が関東馬か関西馬かと言う非常に大雑把な賭けだったのだ。 こんなもんに負けるなんて未だに自分が信じられない。F澤厩舎もユタカもSS産駒も何もかもが憎い。
罰ゲームはターフィーと握手+記念写真。屈辱だ。
それとも、続けて悟浄は言う。
「今日のメインレースに賭けて三蔵が勝ったら取り消しても良い」
「・・・・・・本当か」
今日のメインレース、それは勿論牡馬クラシック第一戦である皐月賞だ。
「ええと、皐月賞の勝馬の父親当てにしよ。ザグレブかサンデーサイレンスか」
「・・・・・・」
それは、恐らく多分ザの付く馬の産駒が勝つと自分は思うのだが・・・。
「どっちも外れたら」
「そりゃドローっしょ。春天で決着付けよう。それともNHKマイル?」
まるで選択肢が幾つもあるかのように誘いかけるその言葉こそが罠なのだと分かっているのだが。



マッキー焼きはクリーム、会長焼きは小倉餡。
新生ターフィーお披露目の頃は全然子供にたかられてなかったのですが現在は人気出て子供にたかられてるのでソレを押しのけてまで握手っつうのはかなり・・・。





* * * その39 * * *

「メイショウペリンゲのペリンゲってどういう意味だろうな」
「地名だ。本当はペッリンゲだが」
「・・・プリサイスマシーンってどういう意味だろうな」
「精密機械だ」
「自分で聞いておいてなんだけど即答されると引くな」
「喧嘩売ってんのかてめえ」



雑学博士三蔵。




* * * その40 * * *

「ずっと好きだった」
「スカブーか?」
絞り出すように小さく呟くと三蔵が即答した。
パドックで目の前に止まった馬はダイワメジャー。 皐月賞出走メンバー中最小の獲得賞金額400万の身でトライアルレース3着に食い込みGIへの出走を果たした運の強い馬。 その母は嘗てGI路線にも出走した事のあるスカーレットブーケ。
三蔵は、俺がそのスカブーもとい、スカーレットブーケのファンだったと言ったと思ったらしかった。
「俺があんたの事好きだって言ったらどうする?」
そう、言ったら驚くでもなくきょとんとした顔をされてしまった。
「あー、ゴメンゴメン冗談だって。そんな顔しないで」
上手く誤魔化せただろうか。俺の言葉はわざとらしくはなかっただろうか?
・・・まだ嫌悪の表情でも浮かべて貰った方が良かった。 露骨にしかめツラでもしてくれたらもっとガサツに「冗談だ」と言えたのに。
「俺スカーレットブーケ現役の頃って知らないんだけど」
「・・・・・そうか」
そう言うと暫し考えるような顔つきをした後三蔵はぽつんと答えた。
「ってあんた幾つの時から競馬やってんだよ!」
「さあな」



自分でも何時書いたのか丸っきり記憶にない書きかけを発見したのでSSにしてみた。






競馬SS3

壁紙は中山競馬場の誘導馬チョウパワー(のお尻)。

競馬SS5



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